2012 Fiscal Year Research-status Report
近代効用理論における公理的基礎の再構築-統一的な公理体系の構築に向けて-
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23653051
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中村 豊 筑波大学, システム情報系, 教授 (80180412)
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Keywords | 効用理論 / 期待効用 / 主観的期待効用 / 非線形期待効用 / 半順序構造 / 単項関係 / 線形不等式系 / 2次不等式系 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、代替案の集合 A 上の線形不等式系の解の存在条件について研究を行った。前半では、去年から執筆中の論文 Additive measurement on countable sets の改訂を行った。また、後半から、A が非可算集合の場合に重点を置いて、単項関係および推移的二項関係の線形表現が存在するための必要十分条件について研究を始めた。このためには、連続性や稠密性の条件をアルキメデス的キャンセレーション条件に付加する必要がある。ここで、どのように連続性や稠密性を定義すればいいかが重要なステップになるので、現在のところ、代替案の集合 A に単調性の条件を入れることにより、連続性や稠密性のいくつかの定義のバリエーションを検討した。その結果、単調性だけではなく、もっと強い条件を課すことが必要ではないかと考えるにいたった。そのために、まず、弱順序が成り立つ場合の結果を導いた。その結果を踏まえ、半順序の場合への拡張を考え始めたところである。また、同時並行的に、これまで得られた一般的な結果を推移的二項関係(弱順序、半順序)に適用することにより、様々な効用モデルを導出することができ、これらの統一的な公理体系を明示的に示せるかどうかについても検討した。 最後に次年度の中心的な課題となるA 上の二次不等式系の解の存在条件について、A が有限集合の場合の研究を開始した。具体的には、文献検索することにより、数理計画における二次計画法などの分野における S Lemmaと呼ばれる一連の研究が参考になることと、それらとは全く異なるアプローチである数理心理学における条件付き確率の存在条件に関する研究が類似の結果をもたらすことが判明し、それらの関係を深く研究することが一つの突破口になる可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は大学での役職業務等のために時間が割かれ、当初の計画とは異なり十分なエフォートが本研究に割り当てることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、代替案の集合 A 上の二次不等式系の解の存在条件について、A が可算集合および非可算集合の場合の研究を集中的に行う。また、平成23年度と平成24年度の成果である線形不等式系の場合の結果をまとめていく。具体的には以下のとおりである。 (1)A が可算集合の場合に、A 上の二次不等式系の解の存在条件について研究する。有限の場合の条件が解明されていれば、適当なアルキメデス的な性質を付加することにより必要十分条件が得られる可能性がある。 (2)A が非可算集合の場合にも A 上の二次不等式系の解の存在条件を研究する。これは(1)の結果が明らかになれば、線形系と同様にうまく連続性や稠密性を定義してやれば必要十分条件を見つけることができると考える。 (3)前年度までと同じく、広く文献のサーベイと既存の公理系の整理を行う。 (4)計画年度全般にわたる研究成果をいくつかの英文論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
統一的公理体系を目指すことから、サーベイ的な文献整理は欠かせないため、物品費として研究資料の収集に30万円を予定している。また、研究資料の内容整理のまとめのための研究補助として大学院生への報酬を10万円、大阪大学・京都大学への研究交流のための旅費を10万円の計上を計画している。
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