2013 Fiscal Year Annual Research Report
英国自然神学の解体と科学的経済学の確立:ダーウィニズムの社会科学的インパクト
Project/Area Number |
23653058
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
有江 大介 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (40175980)
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Keywords | ダーウィニズム / 自然神学 / ヴィクトリア時代 / 神学 / キリスト教経済学 / 社会科学方法論 / 経済思想史 / ジョセフ・バトラー |
Research Abstract |
本研究は、わが国の社会科学史研究の分野で極めて不十分であった神学と科学、とりわけ自然神学と社会科学的思惟の確立とが密接に連関していた点の解明を目的とした。具体的には、19世紀中葉以降の英国において、ダーウィニズムが自然神学に最終的な打撃を与えたことの社会科学的思惟への影響と、経済現象の「科学」的記述へと経済科学が変容した過程について、その相互関係とともに明らかにする事を目指した。 平成23年度以降補助金の給付期間中、東日本大震災によって研究計画に大きな影響を受けながらも、主として19世紀中葉、ヴィクトリア時代英国の宗教と科学との相互関係に研究を集中した。この課題を、研究分担者として関わった先行する科学研究費「基盤研究(c)」「J.S.ミルにおける自由と正義と宗教」を引き継ぎ、「ヴィクトリア時代思想セミナー」という連続研究集会という形で遂行し、多くの関連分野研究者からの知識提供と討論を行った。 以上の成果は、平成24年度末に研究代表者・有江大介の編著『ヴィクトリア時代の思潮とJ.S.ミル:文芸・宗教・倫理・経済』(三和書籍、2013年)としての刊行に至った。併せて、当該期知識人にとって重要課題であった神の存在に対する不可知論に焦点を絞った“Leslie Stephen’s Agnosticism”と題する報告を第12回国際功利主義学会ニューヨーク大会(2012年8月8日-11日)に行った。 最終の平成25年度には、改めて、現代に繋がるイギリス経験論における超越的知識の意義について、現代の神の認識の問題と関連させながら18世紀のジョゼフ・バトラーの蓋然性論の検討を行った。これは、本科研費による「思想史おけるJ.バトラー」という研究集会(平成26年2月8日)に結実し、現在、成果の出版に向けて準備中である。 全体としてわが国の当該分野の研究の欠落を埋めるパイロット的な試みとしての意義を持ったと自負する。
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Research Products
(4 results)