2011 Fiscal Year Research-status Report
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23653076
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
森田 明 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (70292795)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 農業 / 農家 / 農村 / 農業者年金 / 国民年金 / 厚生年金 |
Research Abstract |
23年度は,主としてデータの整理と,公的年金と農業生産活動の関連に関しての調査を行った。国民年金と農業者年金の制度的な変遷や,日本の経済成長に伴っ厚生年金の制度が農村においても中心的な公的年金制度となっていくことが分かった。ただ,日本の農村においてどのていど厚生年金が生活に役立ったのかは,まだデータ的には不明である。1990年の社会保険庁の資料によれば,農村部と都市部の国民年金の検認率を比較すると,農村部の検認率が際立って高いことがわかる。これは,農業者が当然加入する農業者年金制度の存在が大きかったことがわかる。これらの加入者が高齢になったときには,満額での支給ということで生活にも十分役立っていることが伺える。ただ,それは専業農家であったかつての農家の在り方であり,兼業農家については,今後いっそうの考察を深める必要がある。また,2001年以降,農業者年金が完全な積立方式に変わったことに伴い,農業者年金からの脱退が認められたことから,農村部でも加入の在り方が変わっていく可能性はある。 農業者年金の最近の傾向としては,北海道と九州の加入率が高い。これは,これらの地域では農業が盛んであること,また,兼業機会が少なく農業の所得依存率が高いことがその理由として考えられる。 農家の場合,一般的には直系家族制の下で,多様な稼得機会によって所得活動を行っている。そのため,世代による稼得機会を考えたとき,3代直系家族では,息子世代は他産業に,親世代は農業にという形で家計としての所得が形成されることになる。年金の場合,職業選択の結果,それに対応した年金が給付されるので,農家が受け取る年金は,この職業選択が重要な役割を果たすことになる。労働環境に関する考察も含めて,シミュレーションを行う予定であったが,今年度は間に合わず,来年度にその傾向に関して分析を行うことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災によって研究環境が整わず,大学講義の終わる8月までの間は,本研究に取りかかることができなかった。その後は,予定通りデータや文献などの収集を行ってきており,農家の年金のかつての状況については,明確になった。また,地域ごとのデータについても収集を行ったところである。しかしながら,今年度行う予定であった地域による年金の在り方の違いの統計的な分析・シミュレーションについては,行うことができなかった。また,労働条件による農家の兼業の状況についても時間経過の中で把捉することができていない。これらは次年度に繰り越して実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の遅れを取り戻し,当初の予定の最終目標に到達するため,以下の(1)~(4)を実施する。(1)4月~8月:23年度に整理したデータに基づき,地域の統計的な傾向を明確にし,かつ,多変量解析・シミュレーションなどによってその傾向の分類を行ってその行動の特徴について考察を行う。(2)8月~10月:農業者年金,国民年金,厚生年金による農家へのトランスファーを計算し,より農家経済を詳細に検討しモデルの構築を行う。検証方法は,トランスファーを年代毎,地域ごとに算出し,地域の高齢化などを考慮して,農業・農村の維持に関して検討を行う。(3)10月~12月:職業選択(雇用状況)と農業者の年金の関係について,その就業状況等から検証を行う。たとえば,農家経済調査等を用いて,農家の生活の中での年金の位置についての評価を行い,階層別の年金の位置もしくは貢献についての考察を行う。(4)1月~3月:最後に,年金の農家の維持・存続に果たした役割について,経済学モデルを構築する。モデルによる年金の評価を計量的に行う。また,年金政策としての農業者年金予算の効率に関しても一定の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)設備備品費:本研究では,過去の農業・農村についての分析が中心である。23年度にも収集を行ったが,その他に必要となるものが出てくることが考えられる。(2)消耗品費:図書が購入できない場合は,コピーによって資料収集を行う。また,法令などの収集も行う。資料代には,直接自分でコピーを行う費用の他,他の図書館に依頼してコピーを送付してもらう際の費用も含まれている。(3)旅費等:資料については昨年度入手の他にも,各都道府県の図書館,厚生労働省や国会図書館や各地域所蔵図書で閲覧する必要があるかもしれない。また,農業者年金基金などの年金関係者からのヒアリングも想定している。また,23年度と同様,収集したデータの打ち込みなど資料整理として,アルバイト謝金を想定している。時期としては8月と12~1月の3ヶ月間程度,1日2時間週2日程度での仕事を想定している。
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