2012 Fiscal Year Research-status Report
イギリス・チルドレンセンターの多分野連携によるコミュニティソーシャルワークの展開
Project/Area Number |
23653152
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
神山 裕美 山梨県立大学, 人間福祉学部, 准教授 (80339473)
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Keywords | コミュニティソーシャルワーク / 多分野連携 / チルドレンセンター / 地域を基盤にしたソーシャルワーク / 生態学的視点 / イギリス / オクスフォード / 国際情報交換 |
Research Abstract |
①現地調査を実施した:1点目は、チルドレンセンターマネージャー、常勤職員2名、地方自治体シニアソーシャルワーカーとソーシャルワーカー、保健師と、チルドレンセンター利用中の父母17名にインタビューを行った。2点目はチルドレンセンターの4日間のオープンプログラムと、ケースカンファレンスの参与観察を行った。3点目は、地方自治体の外郭団体(OSCB)主催の子ども安全保護を目的とした多分野協働・連携促進を目的とした研修教育プログラムの参与観察を行った。全ての調査は、対象者に説明し同意を得たうえで行い、データ分析は個人が特定できないようプライバシーに配慮した。4点目は、チルドレンセンターのマネージャーからのヒアリングと、当該機関の政府監査機関への事業報告書より、地域特性・社会資源・人口動態・社会資源等を把握した。②深刻な事例と対応方法を収集した:オクスフォード州や地方自治体子ども安全保護委員会や、中央政府のwebサイトや報告書、現地研究者の論文等より事例収集を行い、分析のポイントをまとめ、中央・地方政府の対応方法のガイドラインの翻訳等を行い必要な情報を集めた。③現地研究者からの指導助言による調査結果を考察した:調査結果に基づきスーパーバイザーのT・スミス氏より月一回程度のスーパービジョンを受け、情報の過不足を補い修正するとともに、生態学的視点に基づく調査結果の考察を深めた。また他の専門分野研究者からも助言を受け情報の過不足や修正を行った。④コミュニティソーシャルワークの概念整理をした:日英の地域基盤ソーシャルワーク実践の共通点は多いが、使われる用語や理論枠組みに差があった。そのため、再度日本の地域基盤ソーシャルワークやコミュニティソーシャルワーク等の研究成果を見直し、生態学的視点で日英の実践を比較検討できるように理論的基盤を整えた。⑤上記をふまえ、現地調査報告草案を作成した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的1点目の「チルドレンセンター実態調査」は、現地スーパーバイザーと現地専門分野研究者から指導・助言・紹介をいただき、適切な調査先と機関で研究計画に沿った調査を実施することができた。さらに、調査先のマネージャーやスタッフ、利用者等から多大な理解や協力を得ることができ調査を円滑に進めることができた。 研究目的2点目の「チルドレンセンターやチャイルドプロテクションの政策的背景や評価調査等と支援事例の研究」、及び「チルドレンセンタ-のサービスシステムと多分野連携の職員教育や実践」についても、計画通りの成果を得ることができた。これは現地文献調査の他、スーパーバイザーや現地研究者の指導・助言と議論、それらの人々から紹介されるセミナーやそこでの議論により深められた。特にスーパーバイザーより紹介された生態学的視点を分析枠組みとしたことで、ソーシャルワーク理論との関連も明確になってきた。また、日本の里親制度を研究するイギリス人大学院生をスーパーバイザーより紹介され、調査の一部に同行していただき、言語と情報収集、日英比較研究の各面で研究遂行に役立った。 研究目的3点目の「コミュニティソーシャルワークの子ども家庭分野での適用と理論形成」については、研究進行により子ども家庭分野に限定をせずに「地域基盤」で「ジェネリック」という理論枠組みによる分析のほうが適切ではないかと考えている。そのため当初の方向性とはやや異なってきているが、英国動向とも比較しても適切であると考えている。 以上のように本研究は順調に進展している。日本では初めての土地で実践現場の調査に入るのは難しいが、英国も同様である。言語面が流暢ではない中、何度も同じ説明を繰り返し多くの人に同意を得ながら進めた。しかしそれらを通して現地関係者との信頼関係が深まり良好な協力を得られたことが、H24年度研究成果の基盤であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度となるため、調査報告の最終まとめと発表に向けた準備を行う。当該研究の現地での変化や発展を把握するとともに、不足する情報や多面的な論点を深める。さらに、当初の研究計画で仮説として考えていた分析枠組みの検証を行う。 まず1点目は、イングランドと日本の子どもと家族支援政策や実践との比較検討を通して、イングランドの特色や強みと、日本にも導入でき参考になる部分と、日本ゆえの強みや特質についても明らかにしたい。 次に2点目は、地域で子どもと家庭を支援するソーシャルワークの生態学的視点やストレングス視点をふまえた上で、地域基盤のソーシャルワークの理論や方法との関連付けを行う。 そして3点目は、日本の子どもと家族支援について、福祉・教育・保育・司法・保健・医療等、多分野協働のニーズや取組等についての実態を把握したい。イギリスの多分野協働促進の研修プログラムと地方自治体の関与については、昨年度までの研究で把握できたが、比較検討をするにあたり日本の実態もまた把握したい。 そして、本研究の成果は、学会発表や研究紀要等の執筆を通して発表し、幅広い識者の目に触れることで多くの意見をいただき、今後の議論や実践の深める一助としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)