2012 Fiscal Year Research-status Report
障害者の優れた能力の検証とその組込を可能にする社会構築パラダイムに関する研究
Project/Area Number |
23653154
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
田内 雅規 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (00075425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河田 正興 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (70461241)
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Keywords | 障害者 / 能力 / 環境因子 / 受障時期 / 発達 / 成育 / スキル |
Research Abstract |
本年度は、視覚障害者を対象として聴き取りを試み、それに伴い調査票やインタビュー方式の更なるバージョンアップを行った。 対象者については視覚障害を主にする計画としたが、その中でも先天障害と中途障害では発達時の様相や獲得するスキルの種類や程度が異なっている場合が多く、それについては比較的に検討を行った。また視覚障害中、全盲とロービジョン者においてもかなり異なる特性を有することが明らかになったため、本年度は全盲者のみに限定して調査を行った。先天障害者においては成育過程の初期においては、自分の障害に対して特に著しい悩み葛藤を持たないが、成育の中・後期においては自分の存在が周囲、特に両親・家族に与える影響について思い悩む等、障害そのものよりも援助を提供してくれる関係者に対する引け目、申し訳なさというものがクローズアップされた。しかし、成育後期になると、障害と社会の関係において不利を被ることに対して問題意識を持つ過程が認められた。それらを乗り越えるのは強い意志であるが、それが形成される要因分析が今後の課題である。一方中途の視覚障害者においては障害受容のプロセスは受障年齢や周囲の理解などが絡み複雑な様相を示していた。そのため、例を積み上げてゆかなければ一定の‘解’は得られないと考えられたが、家族や同じ障害のある仲間からの良質の支援が前進への強い意志の形成に関与することが推測された。 何れにしても、‘強い意志の形成’は良質な援助が得られた場合には形成されやすく、視覚障害者が有している集中力の高さが高度のスキル形成に結びつく可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、視覚障害者の全盲者を対象に調査を行った。対象者は、①現在高等教育機関において研究や教育に携わっている、②事業や社会活動を行っている、③芸術・スポーツ活動などを行っている、④その他優れた残存能力を発揮している者であった。聴き取りの内容は、家族支援、家族以外の支援、本人の希望とそれに対する支援の状況、挫折や成功体験、挫折体験からの立ち直りのもたらしたもの、生き甲斐、趣味、他への援助等の項目であった。今年の検討から、困難な状況からの回復が当事者に強さをもたらすこと、また支援の受容ばかりでなく、提供が著しく自立を高めることが認められた。認知的及び行動的支援の授受の重要性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
国内における調査の継続及び能力-環境関連の分析に有効な調査項目の検討を行って有効な調査票の完成度を上げることを目指す。また、国外(米国、豪州を計画)においても調査を検討する。現在用いている国内版調査法をさらにシェイプアップするとともに、それを英文化したものを用いて調査を実施する。またインターネットにより質問票を送付して回答を得る方法を開発する。 また、今後は単なる経歴や意識調査のみでなく心理的ストレスなどのストレス指標についても計測も合わせて計測することを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費(次年度)は主に聞き取り対象者の調査に要する旅費や謝金に使用される予定である。また成果が集積した場合においては、学会、論文等発表に必要な経費としても使用される。
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