2013 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化とIT革命がもたらす異文化体験の変容:アジア系医療従事者の事例
Project/Area Number |
23653172
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
宮本 節子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (60305688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 亜紀子 桜美林大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10369457)
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Keywords | ICT / 文化接触 / 青年期 / インドネシア / 看護師 / 介護福祉士 |
Research Abstract |
本研究の最終的目的は、近年のICTの急速な発展が経済連携協定(EPA)で来日したインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の日本体験をどのように変貌させたかを聞き取ること、青年期における文化間移動の意味を探ることである。平成25年度は、①日本とインドネシアでEPAに伴う人材の国際移動がどのように報じられているか、両国のマスメディア分析を続行し、②国家試験の合格者、不合格者の追跡をすること、③地方に帰国した元EPA候補者と面接し、日本語を生かす機会の少ない場所で、日本体験はどのような意味をもっいたかを調べた。 2013年度の成果は以下である。 ①2008,9年に比して2013年は、EPA看護師・介護士候補者のことが大手メディアで報道される回数は激減した。しかし、地方新聞では、国際化のサインとして就労開始時や国家試験合格時などに取り上げられていた。 ②本研究ではEPAが試験的段階であった1~4陣に焦点をあてて5年間の経過を追った。介護福祉士候補者第一陣104名のうち約10%が国家試験受験前に帰国、合格率は37%であったが、合格しても帰国した人が28%いた。不合格59名の30%が再挑戦、うち半数強が2度目の挑戦で合格。104名のうち試験に合格し介護福祉士として就労している者は34%であった。EPA候補者間の相互サポートやインドネシアの家族との日々の交流にICT(SNS等)が大きな役割を果たしていた。帰国の理由は、親の高齢、家族の病気、女性の場合は、30歳前には結婚すべしという親や本人の考え、日本暮らしは4,5年で十分などであった。合格者には、配偶者を呼んで家族形成を始めた人もいる。 ③バリでの追跡面接では、外国人向けの病院看護師になった人、日本人むけの高齢者施設の準備に関わっている人、日本の映画撮影隊のコーディネーターをやっている人がいた。どの人も日本での経験をポジティブに評価していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度ということで、成果を発信することに重きをおき、2つの国際学会で3件の発表、国内学会でも3件の発表を実施した。 2013年度2月のジャカルタでの帰国者との面接調査に続き、8月にはバリ島に帰国した3人とも直接会うことができ、首都圏以外の地方に帰国した人の情報をえることができた。また、合格して日本で正規の看護師・介護福祉士となった人との面接を実施し、一人前として就労しだした時に突き当たる問題があることを新たに発見した。どのような条件の時に日本に定着でき、どのような時に帰国にいたるのか、定着を左右する要因をみきわめることに努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 今後EPAに参加を考えている施設に参考になりそうな情報を盛り込んだ小冊子をつくり、研究の社会還元を図るとともに、学術雑誌への投稿論文を2~3執筆する。 2) ICTの急速な発展が、昼は勤務先で日本人と交わり、夜はネットを通してインドネシア語で交流を楽しむことを可能にした。このような新しい事象を取り込んだ、コンテンポラリーな文化接触理論を構築したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3年間、外国人医療人材のメディア接触状況を精査し、国内学会、国際学会で報告したが、査読に時間のかかる学会誌投稿には至っていない。遅れの主たる理由は、メディアの技術革新を予測できなかったことにある。スマートフォンなどの機器、faccbookなどのITコミュニケーションは劇的に変化し、新聞のウェプ閲覧も一般化した。最近、テクノロジーの進化と普及がやや止まり、やっと現状を全体的に把握できるようになった。 次年度は、協力いただいた関連機閲への報告書作成と論文段縞を行う。そのため、未使用額は、下記に用いる予定である。 1)EPA看護師・介護福祉士候補者を受け入れた施設、あるいは今後受入予定の施設向けに、小冊子を作成し、印刷、配布する。行政、関連団体・機関も含む。 2)論文投稿に向けて、必要な追加調査を行う。
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