2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23653180
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松本 敏治 弘前大学, 教育学部, 教授 (50199882)
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 方言 / 社会・認知的スキル |
Research Abstract |
「自閉症は方言を話さない」という噂をきっかけに自閉症スペクトラム(ASD)の方言使用に関連する一連の研究を行ってきた。平成24年度までに,1)ASDの方言使用が地域の子どもおよび知的障害に比べ少ないとの印象は全国的に認められる現象であること,および2)音声的特徴にとどまらず方言語彙使用にも差がみられることを明らかとした。さらに,寄せられた解釈(音韻・プロソディ障害説(表出性・受容性),パラ言語理解不全説,終助詞意味理解不全説,メディア影響説)について理論検討を行ったところ,これらの解釈では方言語彙の不使用を説明することが出来ない事が明白となった。その後,方言学者から方言の社会的機能の視点が提出され,ASDの対人的社会的障害との関連での検討を行った。幼児期ASDの方言不使用の説明のためにさらなる理論検討が求められた。 平成25年度は,研究協力者とともに理論検討を行い1)言語習得期における自然言語習得,および2)方言のもつ社会的機能の理解とその伝達意図の側面から検討した解釈仮説を提出した。第一に方言の習得を自然言語習得と見なして,自然言語習得における社会・認知的スキル特に意図理解にもとづく模倣の重要性について検討を行った。また,社会・認知的スキルに問題を抱えるASDの言語習得過程についても検討し,方言主流地域のASDが共通語を習得する過程についての説明が可能となった。年長者において見られる共通語と方言の使い分けの問題を方言の社会的機能と伝達意図との関連で吟味を行った。家族の中で本人のみ共通語を話すASDについて聞き取り調査を行った結果は,上記の仮説と一致する言語習得の様相を示していた。 ASDの言語習得および言語様式の問題について,方言の不使用という側面から貴重な知見を得ることが出来た。
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