2011 Fiscal Year Research-status Report
知識基盤社会における「型の教育」探求のための総合的データ構築
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23653241
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
阿部 茂 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (20184210)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 型 / 身体 / 模倣 / 知識基盤社会 |
Research Abstract |
平成23年度は、研究実施計画において、以下のように予定していた。すなわち、1.江戸時代における「型の教育」に関わる思想、慣行や実態を知るための史料を蒐集する、2.江戸時代の学問論・芸道論・道徳論における「型の教育」の主張を摘出する、3.江戸時代の育児書と農書から子ども観、発達観(成長観)、教育観を摘出する、4.随筆・風俗見聞録・文芸作品などにもとづきながら、身体の訓練のありさまを摘出する、5.絵画に描かれた「型の教育」のありさまを摘出する、である。これにに基づき、本年度の研究活動の重点として、江戸時代における「型の教育」の事実や思想を考えるための史資料を蒐集した。 蒐集した史資料は具体的には、江戸時代の育児書、幕末・明治初期来日外国人の見聞録、江戸文化・風俗研究書などである。また、当初は今年度に予定していなかった明治期以降の資料の蒐集も行い、写真による庶民生活記録、職人生活に関する聞き書きなどを蒐集した。蒐集の方法は、影印の史料、および活字化されて刊行された図書を探索・購入した、東北大図書館や島根市立図書館などを訪問して蒐集した、などである。 上記方法によって蒐集した史資料はいずれも、庶民生活のさまざまな場面に現れ出た「型の教育」のありさまを文章や画像を通して窺うことのできるものである。データ(史資料)の蒐集・整理を主目的とする本研究においては、こうした蒐集作業は、最も土台となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
江戸時代の育児書については、史料としての意義を考えて、影印本で出版されているものを入手したが、くずし字の読解にやや時間をとられていることが、遅れの原因と考えている。東洋文庫の『子育ての書』など翻刻資料を参照して、読解のスピードを上げたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、1.前年度十分に遂行できなかったこととして、江戸時代の育児思想の特質を際だたせるための比較対象として江戸時代の農書を蒐集整理することが挙げられるので、このことをまず進める。また、当初から平成24年度の作業として予定していた、2.職人の仕事ぶりとそこに現れる「型」を描いた史資料、特に図像を多く含むものを蒐集し、3.明治初期からおおむね昭和戦前期までの時期について、学校教育が著しく普及・拡大するなかで、「型の教育」が子どもの遊びや集団活動の中でどのように機能していたのかを探るための民俗慣行資料を蒐集する、という史資料蒐集作業を中心的に行う。さらに、それらの史資料を簡便に検索できるようにするためのデジタル化の作業を行う。 平成25年度については、1.以上の作業の成果に基づいて、「型の教育」と「知の教育」との相剋と相補の関係性を見渡す見取り図作成のため、思想史的・口承的・視覚的なデータを蒐集・分類・整理した上で、検索可能なデータベースとするとともに、2.以上の作業過程、および蒐集・整理・分類したデータの紹介と現代における「型の教育」の意義を考えるための視点、今後の課題などを取りまとめて、成果を報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究においては、上記の研究推進方策にも示したとおり、資料の蒐集・整理がひとつの大きな柱となる。したがって、平成24年度は、すでに書籍として刊行された史資料の蒐集のために物品費(配分額300,000円)を、各地の図書館などで所蔵している史資料の探索・蒐集のために旅費(配分額100,000円)を、それらの蒐集した史資料の整理作業補助謝金(配分額40,000円)を使用する、などが研究費の主な使途となる。 平成25年度についてもほぼ同様に、刊行資料の蒐集を主目的として物品費(配分額220,000円)を使用し、各地に赴いての資料蒐集のために旅費(配分額)60,000円)を、また報告書の作成のための費用を「その他」(配分額80,000円)のなかに計上している。 なお、次年度使用金が75,000円程生じているが、資料整理補助として見込んだ「謝金」、および他大学等の図書館に依頼する複写費として見込んだ「その他」の経費が使い切れていないことが大きな原因である。このため、平成24年度は、資料整理の効率的方法を考案して、補助員を使っての資料整理を鋭意進め、また図書館を通じての依頼による資料複写ではなく、図書館を直接に訪れて資料を探索蒐集する作業を増やす、などの方途を探る。そのために、必要に応じて費目ごとの金額を他の費目に柔軟に使用するようにしたい。したがって、平成24年度の「その他」(複写費としての使用を想定したもの。配分額60,000円)は、ある程度、物品費や旅費に転用することも考えられる。
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