2012 Fiscal Year Research-status Report
知識基盤社会における「型の教育」探求のための総合的データ構築
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23653241
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
阿部 茂 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20184210)
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Keywords | 型 / 身体 / 模倣 / 知識基盤社会 |
Research Abstract |
本年度も、昨年度に引き続き、研究の基礎になる史資料の蒐集に努めた。明治初期からおおむね昭和戦前期までの時期について、学校教育の著しい拡大が達成されるなかで、学校教育の質・量両面に亘る躍進の後景に退いて見つけにくくなりつつも、なおその機能を失うことのなかった「型の教育」の実相を探るための史資料である。具体的には、民俗学的な視点からの子どもの遊びや集団活動に関する研究・調査、子どもの生活・職人の仕事の様子を被写体とした写真・絵画、および職人・芸人などを対象としたその個人史の聞き取りなどの史資料が中心である。併せて、昨年度蒐集が十分でなかったと思われる、江戸時代の思想史・教育史関係の資料や教科書(往来物)、絵本、年中行事に関する資料なども蒐集した。蒐集した史資料は、書籍として刊行されたもの(原史料の覆刻、影印なども含めて)が主である。また、そうした歴史的資料以外に、身体や模倣について理論的な考察を行っている近年の身体論関係の研究なども蒐集した。 なお、民俗学的な子ども・若者研究の視点を広げる目的で、沖縄の子ども・若者習俗や教育・文化に関わる史資料を把握するため、琉球大学附属図書館などでの史料調査も行った。 上記の方法によって蒐集した史資料はいずれも、庶民生活のさまざまな場面に現れ出た「型の教育」のありさまを文章や画像を通して窺うことのできるものである。データ(史資料)の蒐集・整理を主目的とする本研究においては、こうした蒐集作業は、最も土台となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
購入予定の書籍が品切れであったことや、研究補助者と監督者との時間的調整がうまくいかなかったため雇い入れができず、このため蒐集資料整理の作業が遅れていることが、大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
「型の教育」と「知の教育」との相剋と相補の関係性を歴史的に見渡す見取り図作成のための思想史的・口承的・視覚的なデータを分類・整理する。具体的には「型の教育」の思想の盛り込まれた江戸時代の学問論・芸道論・道徳論・農書・随筆・風俗見聞録・文芸作品など、および日本の知識社会化の動向とそれに合わせて変容しつつある「能力」観を読み取るための資料などを中心に蒐集する。 江戸時代以来、日本社会は、非常に広い意味での「知識社会化」を幾度か経、そのたびごとに社会的に必要とされる知識は多量化・高度化してきたと言えるが、そのたびごとに「知の教育」と「型の教育」とがその位置関係をどのように変化させてきたのかを読み取れるよう、蒐集した史資料の整理・分類を行う。 最後に、蒐集・整理・分類したデータの紹介と現代における「型の教育」の意義を考えるための視点、今後の課題などを取りまとめて、成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度に当たる本年度は、刊行資料の蒐集を主目的として物品費(配分額220,000円)を使用し、各地に赴いての資料蒐集のために旅費(配分額)60,000円)を、また報告書の作成のための費用を「その他」(配分額80,000円)のなかに計上している。 なお、昨年度の未使用額が160,000円ほどある。これは、上記「現在までの到達度」でも、やや遅れている原因として記載したように、購入予定の書籍が品切れであったこと、資料整理のための研究補助者の雇い入れの不手際で資料整理補助として見込んだ「謝金」が使い切れていないことなどが大きな原因である。このため、平成25年度は、書籍については古書を含めて入手可能状況を迅速に把握し、また資料整理の効率的方法を考案し、補助員を使っての資料整理を鋭意進めるつもりである。
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