2012 Fiscal Year Research-status Report
専門職教育と専門職性に関する異業種間比較研究―成人教育学の観点から
Project/Area Number |
23653244
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 洋子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70222411)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 正純 京都大学, 教育学研究科(研究院), 研究員(研究機関) (30547378)
|
Keywords | 専門職教育 / 専門職性 / 多職種連携(専門職)教育(IPE) / ネットワークモデル / 異業種コミュニティ / (教育)実践課題 / 振り返り(省察) / (生涯)継続教育 |
Research Abstract |
本研究では、多職種連携教育(Interprofessional Education)の実践交流ネットワークモデルを開発・構築する試行的取り組みとそれを踏まえた異業種間比較研究を通し、先行研究の乏しい専門職教育と専門職性に関わる研究基盤を形成するとともに、異なる領域の専門職の実践的課題の共有化がもたらす自己・相互教育のメカニズムと、専門職性へのより深い洞察の契機と可能性を追究する。当該年度は、①1年目の実践事例の共有化と議論、②特定の大学授業科目での異業種教員の連携の取り組み、③医学教育への教育学専攻者の関わりの参与的考察、③成人・生涯教育研究の第一人者Peter Jarvis教授を迎えてのIPEセッションの企画・運営、④ネットワークモデルに関する実践的考察(京都IPE研究会と東京IPEとの連携・交流に関する模索)などに取り組んだ。具体的には、①では、「IPE実践・振り返りセッション」を2回開催し、そのうち1回は看護教育や助産師教育の担当者、学芸員、ユースサーヴィスなどに携わる新メンバーとともに、医学教育の富士研プログラムに向けて翻訳・編纂したテキストを共同で読み、フリーディスカッション形式で実践的課題と論点を抽出した。②京大内で医学・薬学合同実施の医療安全学の授業を参与観察後、医学・薬学の担当者とともに意見交換や振り返りなどを行った。③では、募集した30人弱の参加者(看護学・助産学・薬学・医学・企業教育・学芸員・ユースサーヴィス・俳優養成など)とともに、Jarvis教授のレクチャーを踏まえ、「職業人の成長と経験をシェアする―英国成人教育・生涯学習研究者ピーター・ジャービスとともに」(「IPE実践交流セッション」)を実施し、参加者からかなり有益との好評を得た(記録は作成中)。④については、新たなインターネットサイトの設立の準備とともに、議論を継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の前半期は、研究分担者をはじめとする当初メンバーの個人的事情により、研究会や研究活動が停滞したため、一時は研究計画の大幅変更も検討した。だが、夏以降に新たな異業種メンバーとの連携が生まれ、刺激的な異業種コミュニケーションが可能となってきたために、当初計画を軌道修正しつつもより創造的な方向性をめざすべく、この数ヶ月は活動を進めてきている。9月に代表者が兵庫県立大学の看護教員研修会で講師を務めたことを契機に、同大看護学部の岡田彩子准教授を研究協力者に迎え、看護・助産学の教員や看護協会職員との連携が生まれ、学内でも医療安全学の授業を契機に、薬学教員との接点ができ、3月23日のIPEセッションの参加者はすでに、ほぼ全員がIPEのメーリングリストのメンバーとして登録しており、次年度の活動に参画予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、活動の本格的発展と中間報告の取りまとめの2つの課題に取り組む。とりわけ、当該年度最後に行った「職業人の成長と経験をシェアする―英国成人教育・生涯学習研究者ピーター・ジャービスとともに」(「IPE実践交流セッション」)の実践的成果が、本研究に占める位置と重要性を鑑み、これを詳細に記録化し、共同で分析・考察することが、当該年度と次年度を橋渡しする重要な作業になると考えている。次年度の具体的研究活動は、次のように予定している。 第一に、これまで述べてきた当該年度の「IPE実践交流セッション」について、この記録・論点整理の作業をもとに、成果の共有化とそれを踏まえたフリーディスカッションを中心とする「IPE実践・振り返りセッション」を3回程度実施する。それらを踏まえ、①IPEプログラム開発に向けた実践研究、②異業種間の専門職性の比較研究の2つの観点から、共同・個別論文を執筆する予定である。 第二に、IPE研究者・実践者ネットワークのメーリングリストやインターネットSNSサイトなどを利用した活動を準備中であり、これを本格的に展開する。ネット空間と実際の研究会活動を連動させたIPEパイロットプログラムを企画・開発し、実施したい。 第三に、同パイロットプログラムの総括・振り返りを中心とする「2013年IPE実践・振り返り総括セッション」を開催し、3年間の活動を総括する。このネットワークモデルと活動成果を反映させたものとして、最終報告書に代えて、IPEネットワークハンドブックないしヒントブックを編集・刊行する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が発生したのは、何よりも前半期の活動の停滞によるものであるが、次年度に繰り越した積極的な理由は、3月23日実施のIPE交流セッションの詳細な記録を正確に文字化し、共有できるデータとして加工し、次年度以降のIPE活動の実践研究に活用しようと考えたことにある。次年度使用額は、長時間の録音となったICレコーダーの録音内容を文字起こしするための業者委託費の予価に相当する額であり、これに充てたいと考える。当日は全体セッションの流れのみならず、4グループの机にICレコーダーを設置し、ワークショップ中の各グループの議論の様子を録音した。IPEメンバーとの意見交換も経て、この文字起こし費用が実践的取り組みの振り返りと相互考察のために、意義があり、必要不可欠な支出であると合意・決断した次第である。 次年度は、基本的に、前掲の3つの方向性における研究活動に関わって、研究費の使用を予定している。第一の「IPE実践・振り返りセッション」の実施、および論文執筆には、実際の対面的な実践研究活動や学会報告・情報収集などのための国内外旅費、消耗品・運搬費、記録や資料の整理・共有化のための謝金や消耗品費の使用が見込まれる。第二のIPE研究者・実践者ネットワークのメーリングリストやウェブサイトを利用した活動に関わっては、実践・情報共有化の手だてやサイト構築のための謝金や通信費など、第三の「2013年IPE実践・振り返り総括セッション」開催やハンドブックの編集・刊行については、消耗品・謝金・印刷費などが当てられる予定で、総体として、限られた研究費を効果的に効率よく無駄のない方法で使用できるよう、力を尽くしたい。
|
Research Products
(8 results)