2012 Fiscal Year Research-status Report
クラウドコンピューティングによる大規模な離散逆問題の新しいGMRES型算法の構築
Project/Area Number |
23654040
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野寺 隆 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50156212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 温之 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (90118969)
大野 義夫 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (20051865)
山本 喜一 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20051873)
田村 要造 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50171905)
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Keywords | 非適切な問題 / 線形悪条件問題 / GMRES法 / Tikhonov値 / 並列計算 |
Research Abstract |
離散型線形悪条件問題は,非適切問題を表すモデル方程式を離散化して得られる連立1次方程式である.応用分野は,石油探査や重力測定,衛星写真や医用画像の復元等と幅広く,古くから活発な研究が行われている.非適切問題とは,Hadamardの定義した良条件問題のための3条件を満たさない問題のことであり,実社会ではこのような問題はいたる所に存在する. 近年,離散型線形悪条件問題に対する正則化手法としてGMRES法が注目を集めている.本研究では,非適切問題から生じる連立1次方程式に対し,解の安定を図るための正則化手法としてGMRES法を適用することについて考える.GMRES法による正則化の過程は,(1)GMRES法によって連立1次方程式の近似解を生成する,(2)制約条件を用いて最適な近似解を決定する,という2つの過程に分けることができる.(1),(2)の過程において,それぞれ従来よりも利便性を高めることを目的とした新手法の提案を目的としている.特に,第一種Fredholm積分方程式の離散化から導かれる連立1次方程式に対してGMRES法を適用する場合の,近似解決定の新たな閾値を提案し,GMRES法の新しい反復アルゴリズムを構成する.第一種Fredholm積分方程式とは,逆問題の1つとして知られ,離散型線形悪条件問題に分類される.対象となる問題は幅広く,近年活発に研究が行われている.悪条件問題は困難な性質を持つため,克服すべき点は多く残っている. 今回提案する閾値は,古典的な手法の1つであるTikhonov正則化に注目したものであるが,従来用いられている残差ノルムに比べ,解の精度,近似解の決定の面で有利に働く.本研究は,新しい算法の導出と実装による逆問題の精度のよい近似解を求めるクラウドコンピューティングによるソフトウェアの構築を目的としている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非適切な問題の離散化から得られる線形悪条件問題に対して,効率よく近似解を求める算法としてKrylov部分空間法の中でGMRES法を利用する.GMRES法に近似解空間の選択を加味した算法を加えることで,適応的に残差ノルムの収束を速め,適切な近似解を得られた時点で反復を終了できる算法を構成することができる. 以前から懸案になっていた非適切問題に対する近似解の決定を自動化する制約条件,Simplefied Tikhonov値をポリッシュアップし,より効率の良い正則化の値を採用することが可能となった.それによって,GMRES法の反復過程で計算できる残差ノルムと近似解ノルムの両方を用いて,近似解を得るための収束判定ができるようになった.さらに,収束判定に用いる制約条件は,GMRES法の反復の途中の計算で現れるものを再利用できるので,新しく計算する必要が全くない.よって,従来,GMRES法は残差ノルムの収束は進行するものの,近似解の精度の良し悪しの判定が不明であったが,その点が改善され適当なタイミングでほぼ最適に近い近似解を計算できるようになったことである.
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Strategy for Future Research Activity |
大規模な非適切問題の離散化から得られる線形悪条件問題の近似解を効率よく求めるKrylov部分空間法に基づく算法の提案とソフトウェアの開発が最終的な目標である.本年度は,GMRES法に基づく基本算法の開発実装とその算法の数学解析を中心に行ってきた.ソルバーの実装に関して言えば,小規模な非適切問題に対してほぼ満足の行ける結果が得られているが,大規模問題に対しては,いまだ望ましい計算結果を得られる手法を構成できてはいない.その理由の一つは,大規模な非適切問題は多種多様であり,各々内在する非適切性が多様であり,この方法が一般的に最善な手法であると言い切れない点にある.しかし,いくつかの算法の枠組みを適応的に組み合わせて利用すれば,ほぼ最善で満足できるソルバーを開発できると考えている. そこで,石油探査,衛星写真,医療関連の画像などから得られる実社会で生まれたBiG DATAを取り扱うことで,今回開発したソルバーの有効性を評価し,数理解析の力を借りて算法有効性を見極め,現在実装されている手法を並列計算機向きの実装へ改良し,高速な残差ノルムの収束性と近似解精度の高い算法の構築を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,この研究の最終年度であるため,以下の目的に研究費を使用したい. (1)実装した算法のチューニングやプログラムの検証およびその作業に必要なプログラミングやデータ整理の人件費. (2) 国内外の学会での成果発表,などに用いる.
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Research Products
(10 results)