2011 Fiscal Year Research-status Report
全ての解析的保存量を保つ差分法による重力3体問題の軌道計算
Project/Area Number |
23654044
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
峯崎 征隆 徳島文理大学, 人間生活学部, 講師 (70378834)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 非可積分系 / 拘束系 / 保存量 / エネルギー保存差分 / 3 体問題 / Lagrange 軌道 / 周期軌道 / 衝突解 |
Research Abstract |
重力 3 体問題の軌道を厳密に再現する差分法を開発することを,本研究では目指している.研究代表者がすでに構成した一般 3 体問題 (G3BP) の差分は,角運動量を除く保存量の全てを保ち,可逆性をもつことが解析的に示されている.しかしながら,数値実験では,求積時間とともにエネルギーの誤差が急速に増大する欠点が見られた.この欠点を取り除いた後,H.23 年度の計画に沿って,以下の結果を得ることができた.1. 未定乗数を消去することによって,元の差分系から新たな拘束系の差分を得た.新たな差分系 (d-G3BP) は 2 次の精度で,(1) 解析的・数値的にも角運動量以外の保存量を正確に保ち,(2) 周期解,準周期解,衝突解を高精度に再現することを数値的に確認できた.2. d-G3BP は G3BP と全く同じ Lagrange 軌道をもつことを証明した.これは,G3BP の数値解法が "解析的"に特殊解に対応する軌道を保つことを初めて示したものである.3. d-G3BP がもつ Lagrange 軌道の線形安定性条件は G3BP のそれと高精度で一致することを数値的に示した.特に G3BP の特殊例である制限 3 体問題 (R3BP) の場合には,ステップ幅の 1 乗のオーダーまで一致することを解析的に証明した.2, 3 の結果から,他の数値積分法より d-G3BP は G3BP の軌道を正確に再現することが期待できるのみならず,可逆性のため,合成法による d-G3BP の高精度化も可能である.従来は,様々な仮定に基づいた近似の元で扱われてきた共軌道運動が,この高精度化 d-G3BP によって正確に計算できることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由は以下のとおりである.1. H.23 年度中に,d-G3BP が二等辺三角形解軌道をもつことを解析的に証明する予定であったが,未だ行われていない.2. d-R3BP, d-G3BP における Lagrange 解の安定性解析のうち,解析的に証明できたのは,d-R3BP に関するものだけである.
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Strategy for Future Research Activity |
H.23 年度に構成した d-G3BP には,正確には "角運動量を保存しない"という問題があった.d-G3BP とは異なる座標系で G3BP を差分化することで,(1) 厳密に角運動量を含んだ全ての保存量を保ち,(2) 数値的に Lagrange 軌道を再現することが可能である.また,得られたスキームは d-G3BP より簡単で,N 体問題 (N>3) への拡張も容易である.そのため,H.24 年度は,この新スキームにおける周期解の存在証明,およびそれらの安定性解析を行うものとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. H.23 年度末から執筆中の英語論文校正料,2. 解の存在証明,安定性解析をする際に使用する数式処理ソフト,3. 調査・研究旅費として使用する予定である.
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