2013 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ物理に現れる双曲-楕円型方程式系の解の時間大域構造
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23654062
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西畑 伸也 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80279299)
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Keywords | オイラー方程式 / ポアソン方程式 / 双曲型保存則 / ボーム・シース条件 / 境界層 |
Research Abstract |
本研究課題は、プラズマ物理に現れる双曲-楕円型非線形偏微分方程式系に対する時間大域的可解性と、解の漸近挙動を解明することを目的としています。とくに、ボーム・モデルと呼ばれるオイラー方程式とポアソン方程式の連立した双曲-楕円型方程式系を主な研究対象としています。ボーム・モデルに対するこれまでの研究で、プラズマ物理学でシース(鞘)と呼ばれる境界層は、数学的には半空間上の平面定常解と理解される現象であることを示し、さらにシース形成の条件として知られていたボーム・シース条件が定常解が存在して漸近安定になる為の十分条件であることを証明しています。あわせて、初期条件に応じた定常解への収束の速さも求めました。また、線形化方程式を解析することで、ボーム条件は必要でもあることを示唆する結果も得られています。 プレ・シースと呼ばれるシースとプラズマつなぐ中間領域は、ボーム・モデル対して電位準中性を仮定して得られる双曲型方程式系(ラングミュア・モデル)の希薄波に対応することが、時間大域解が存在した場合に解の取りうる漸近状態を解析することから、明確になりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プレ・シースに対する研究の成果として、空間次元に応じて解の挙動が異なることを示唆する結果が得られています。また、数値解析を用いた研究にも着手し、過去の研究で頻繁に用いられていた幾つかのスキームと比較して、双曲型方程式系を解く際にローにより発案されたスキームを用いた方が、より高い精度が得られることが分かりました。さらに、双曲-放物方程型の一般的な方程式系を使う準備として行った双曲-放物方程式系に対して、定常解の存在と安定性を証明し、定常解への漸近の速さを求めています。この手法は、ラングミュア・モデルを含む双曲型方程式系や、ボーム・モデルを含む一般的な双曲-楕円型方程式系の研究にも応用可能だと考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
プレ・シースと呼ばれるシースとプラズマつなぐ中間領域は、ボーム・モデル対して電位準中性を仮定して得られる双曲型方程式系(ラングミュア・モデル)の希薄波に対応することが、解の取りうる漸近状態を解析することから示唆されています。一方、数値計算による解析では、この結果は空間次元が2以上で初めて成立し、空間次元を1とした場合には成立しないことを示唆する結果も得ら、空間1次元では、解が爆発し大域解が存在しないことが予想されます。こうした、この空間次元に応じた解の挙動の違いを数学的に解析し、シースからプラズマに至る遷移の様子を解明する研究を継続します。 本研究課題に関連する研究では、双曲-放物方程式系の研究では定常解の漸近安定性が示されています。この研究で開発した手法を応用して、ラングミュア・モデルを含む一般的な双曲型方程式系や、ボーム・モデルを含む双曲-楕円方程式系に対する定常解の存在と安定性の研究に着手する予定です。 次年度の研究費の使用計画では、幾つかの国際研究集会を日本国内で主催し、本研究課題に関連する研究者を海外から招待し、その旅費の援助を行う予定です。とくに、プラズマの方程式の数学解析は欧米など海外で盛んであるため、こうした研究者との交流し、最 新の研究成果に触れることは本研究課題の推進を円滑ならしめると思われます。また、関連する研究を行っている海外の研究者を個別に招待し、研究上の議論を行う予定です。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、プラズマ物理に現れる非線形波の安定解析を主な目的としている。研究を円滑ならしめる為、同分野の専門家を海外から招いて、平成25年度に国際研究集会を開催する予定であったが、平成26年度に延期された為未使用額が発生している。また、同じ目的で主催した二つの国際研究集会開催に掛る費用が安価に済んだことにもよる。 本研究課題を円滑に遂行する為、関連する分野の研究者を海外から招き、国際研究集会を開催する予定である。その為の旅費の援助、開催に掛る費用などに充てる。また、研究費に余裕があれば、数値解析に使用する為、最新のCPUやGPUを搭載した高速のPC購入に充てる。
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