2012 Fiscal Year Research-status Report
3He偏極装置の高度化に向けた単結晶セルの開発と3He高偏極化の研究
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23654107
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
猪野 隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (10301722)
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Keywords | 3He偏極 / 偏極中性子 |
Research Abstract |
本研究では、ヘリウム3偏極セルの試作とその性能評価が重要である。ヘリウム3核偏極を実現するために、本研究ではスピン交換法を用いている。スピン交換法では、まず円偏光のレーザーによりルビジウムの原子偏極を得る。この原子偏極、すなわちルビジウムの最外殻電子の偏極がヘリウム3原子核に移行して、最終的にヘリウム3核偏極が実現される。 高い偏極率を実現するためにはヘリウム3偏極セルの材料が重要で、セル材料にわずかでも磁性体が含まれていたり、あるいはそれに類する性質があると、大きなヘリウム3偏極緩和が生じてしまう。また、セル材料が石英ガラスのような多孔質構造の場合、ヘリウム3原子がセル内壁に浸透拡散し、これによりヘリウム3偏極緩和が助長されてしまうという問題もある。そこで、本研究では磁性不純物を含まず、かつ表面が密である物質として結晶材料でヘリウム3偏極セルを製作し、その偏極性能を評価する。当該年度は、サファイアを基材とするヘリウム3偏極セルを複数個試作し、これにヘリウム3ガスやルビジウム等を封入するためのガラス配管を接続した。 一方、ヘリウム3偏極セルの性能を評価するには、雰囲気中に存在する非偏極のルビジウム原子と偏極したヘリウム3原子核がスピンを交換することによりヘリウム3原子核が偏極緩和する効果を差し引かなければならない。この効果の大きさは、ヘリウム3の核偏極率とルビジウムの原子数密度を同時に測定することにより得られ、ヘリウム3核偏極率はNMRにより、ルビジウムの原子数密度は低濃度ルビジウム蒸気を透過するレーザーのファラデー効果から測定する。当該年度は、このファラデー効果を測定する光学システムの開発も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定外の業務が増加したため本来計画していた時間を本研究に費やすことができなかった。特に、J-PARC中性子施設の運転や保守業務で担当グループの人員が削減されたため、これによる負荷が増加し、研究時間を削ってこれに充てた。 結晶材料によるヘリウム3偏極セルが試作できたことは本研究において最も重要な進展といえるが、当該年度内にセルにヘリウム3ガス等を封入するテストまで進めることが不可能であった。 一方、ルビジウム原子数密度をファラデー効果から測定するための光学システムに関しては 予定通りの研究進展となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘリウム3偏極セルの性能評価をするための道具立ては整っているので、セルにヘリウム3ガス、ルビジウム等を封入し、偏極試験及び偏極緩和試験を行う。このガス封入及び評価試験を繰り返し、再現性を含めた結晶セルの性能評価を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の残金は、主として試験用セルの製作費に充てる。本研究推進で最も重要なことは試験用セルを製作し、その性能を評価することである。本年度の残金は少額のため、試験用セルの製作に有効利用することができないと判断し、これを次年度に繰り越し、次年度予算と合わせて試験用セルの製作費とすることにした。
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Research Products
(3 results)