2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655068
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井原 敏博 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40253489)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | DNAコンジュゲート / 電気化学 / BNA / LNA / ターピリジン / 協同性 / 錯生成 / ハイブリダイゼーション |
Research Abstract |
本研究では、リボース環内にジスルフィド結合からなる架橋構造を有するssBNA、およびDNA骨格中にterpy構造を組込んだDNAを用いて、そのハイブリダイゼーションに伴う電気化学的挙動の変化を見ることを目的に研究を行う。 ssBNAは、スルフヒドリル/ジスルフィド変換に基づく酸化還元反応により、リボース環の架橋構造が可逆的に開閉する。架橋構造はRNAとのヘテロ二本鎖を安定化するので、酸化還元反応を外部電位によって規制することで、ハイブリダイゼーションを制御することが可能と考えられる。しかしながら、上記の性格から電極修飾によく利用されるS-Au間の結合を利用することがきないため、ssBNAの電極上への固定化の方法を検討する必要がある。平成23年度は、炭素電極表面へのssBNAの固定化に関する検討を行った。まず、HOPG(highly oriented pyrolytic graphite)のbasal面にペリレンカルボン酸(PTCA)を吸着させた。ssBNA末端にアミノ基を導入したものを合成し、これをHOPG上に固定化したPTCAのカルボン酸とカップリングした。縮合剤としてはカルボジイミド系のものを使用し、ssBNA固定化の条件検討を行った。 HOPG電極へのssBNAの固定化は、マーカーイオン([Fe(CN)6]3+/[Fe(CN)6]4+)の酸化還元挙動を観察することで確認した。種々の条件の最適化の結果、ssBNAを電極上に固定化することに成功した。しかしながら、ssBNAの還元電位付近でPTCAがHOPG電極から脱離する傾向があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炭素電極(HOPG電極)を用いることで、ssBNAの電極上への固定化には成功したが、ssBNAの電気化学的挙動を観察することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ssBNAの固定化に関しては、PTCAより脱離しにくいピレンカルボン酸を用いる。加えて、さらに固定化量を増やすなどの方法をとる必要がある。並行して、terpyをDNA骨格に組込んだものを使用する方法も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ssBNAの電極上への固定化についてはその化学修飾法を見直す。ピレンカルボン酸を足場として用いることでアノーディックな電位においてPTCAのときよりも脱離し難くなることを期待している。新たに固定化に関する条件検討を行う必要があるが、基本的にPTCAで得られた反応条件をほぼそのまま活かすことができると考えている。 並行して、terpy-DNAの合成を行う。申請者らのこれまでの研究により、terpy-DNAの合成法は確立されている。terpyを基体とするアミダイト試薬を化学合成し、これをDNA自動合成装置に導入してDNA骨格中に2つのterpyユニットを組込む。このterpy-DNAは分子内でΩ構造をとり、遷移金属イオンと分子内の1:2錯体を形成する。金属イオンの酸化還元電位は、錯生成により影響を受ける。また、ターゲットとのハイブリダイゼーションによりΩ構造の熱安定性が変化するようなDNAの設計は難しくない。つまり、ssBNAと同様にハイブリダイゼーションを外部電位により制御すること、および金属イオンの酸化還元挙動をモニタすることで計測することが可能になる。平成24年度はterpy-DNAを固定化した電極を調製する。電極上のterpy-DNAと酸化還元活性金属イオンとの錯体を形成させ、その電気化学的挙動を観察する。金属イオンの酸化還元を介した、Ω構造の形成、およびターゲットとの二本鎖構造の制御の可能性について検討する。 多量のterpy-DNAを合成する必要があるため、アミダイト試薬、および精製用HPLC関係の消耗品などに要する多額の物品費を計上する。研究成果発表のための旅費を計上する。
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