2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655068
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井原 敏博 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40253489)
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Keywords | 核酸 / 電気化学 / 分子認識 / センサー / 金属錯体 |
Research Abstract |
当初予定していたssBNAの電極固定化に関しては、末端に導入したチオールと金電極間の特異的相互作用を利用できないので、PTCA(ペリレン四酢酸)を足場にしてHOPG上への修飾を試みた。しかしながら、2R-SH=R-S-S-R + H2の酸化還元が期待される低電位領域においてPTCAの脱離が観察されたためこの系をひとまず断念することにした。 平24年度は金属錯体形成能を持つDNAコンジュゲートを用いることにした。具体的にはターピリジン(terpy)をDNA骨格中に組込む。そのためにはterpyを基体とするアミダイト試薬を合成する必要がある。当研究グループでは異なる研究目的で別途terpyアミダイトの合成を行っていたので、その構造を一部改変して新しいterpyアミダイトを合成することにした。合成後、DNA自動合成装置を用いて2つのterpyを骨格中の互いに離れたサイトに組込んだ。質量分析により目的とするDNAコンジュゲート、terpy2DNAを同定した。terpy2DNAの水溶液にFe2+やCu2+などの酸化還元活性な遷移金属イオンを添加すると、M2+:terpyの分子内の1:2錯体が定量的に形成することを確認した。このとき、DNAは互いに離れた2つのterpyが一つの金属イオンに配位するためterpy2DNA全体としてはΩ型の構造をとることになる。terpy2DNA末端にアミノ基を導入し、金電極表面に展開したジチオプロピオン酸との間でアミド結合を形成させることでDNA固定化金電極を得た。terpy2DNAは溶液中と同様に電極表面でも分子内1:2錯体を形成することを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたssBNAの電極固定化に関しては、現段階では棚上げし、異なる人工DNAを用いて目的を達成すべく研究を推進した。terpyを基体とするアミダイト試薬の合成は多段階に及び困難を極めたが、少量ではあったが単離生成することができ、これをDNAに組込むことに成功した。terpy2DNAの電極固定化に関してはssBNAのような制限(分子内にチオールがあるため、よく使用されるAu-S間の特異的相互作用を利用することができない)がないため、比較的容易に電極固定化の条件を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
terpy2DNAを多量に必要とするため、再度、terpyアミダイトの大量合成を行う必要がある。このアミダイト試薬を様々なサイトに組込んだ数種類のterpy2DNAを合成する。前年度確立した手法によりterpy2DNAを電極上に固定化する。電極上でFe2+などの酸化還元活性な遷移金属イオンとの錯体を形成させる。錯生成が相補鎖との二本鎖形成の影響を受けることがあれば、二本鎖形成を電気化学的にモニターすることが可能になる。しかし、Fe2+の場合には錯生成能が強すぎて、二本鎖形成が錯生成に影響を与えない可能性がある。その場合には、一本鎖と二本鎖状態のDNAの柔軟性(持続長)の差を利用して二本鎖形成をモニターすることができないかを検討する。すなわち、ボルタンメトリーにおいて掃引速度を変化させ、その際の電流プロファイルの変化を観察する。 上記系が上手く進まない場合には、フェロセン(Fc)とシクロデキストリン(CyD)をそれぞれ末端に修飾したDNAコンジュゲートを合成し、二本鎖形成を電気化学変化として取り出すための検討を行う。Fcの電気化学活性はCyDに包接されると著しく抑制されることが知られている。二本鎖形成に伴って包接現象がコントロールされれば、二本鎖形成を電気化学でモニターすることが可能になる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該なし
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