2011 Fiscal Year Research-status Report
配向性分子の集積化により形成される不斉ナノキャビティの空間機能開発
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23655069
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高藤 誠 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50332086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ガナパシー ヒュラシー 熊本大学, 大学院先導機構, 特任助教 (90551276)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | キラル超分子 / 分子認識 / 液体クロマトグラフィー / 異性体分離 |
Research Abstract |
医薬,環境科学,工業材料などの分野において,光学異性体や構造異性体の精密分離・分析は重要な基盤技術である。これまでにHPLC 用キラル固定相に関して,様々なアプローチや具体的な分離例が報告されてきた。例えば,ポリシュガー,ポリペプチドなどの規則的立体構造をもつ天然ポリマーや,立体特異的低分子をインプリントした固定相などが挙げられる。本研究では,キラル分子が形成するユニークな分子配向体が形成する不斉ナノキャビティの立体特異的ナノ空間を利用した分子形状の精密認識システムの開発を目的とし,キラル分子を基材界面に配向状態を維持したまま安定化した固定相の開発およびその精密分子形状認識・分離システムへの応用を目指した研究開発を行った。今年度は,水中,有機溶媒中で一次元キラル分子配向体を形成する二鎖型グルタミド誘導体にシリカ粒子界面に固定化するための重合性基としてアルコキシシリルを導入した化合物を多孔質シリカ粒子界面にグラフト化した固定相の開発を行うとともに,グルタミド誘導体のシリカ界面での分子配向状態の評価ならびにその分子認識能について評価した。熱分析,固体NMRの結果から,グルタミド誘導体とアルコキシシリル基の間のスペーサーを長くすることで,界面に固定化されたグルタミド部位の配向が誘起されることが示唆された。グルタミド誘導体をグラフト化した固定相を用いて,HPLCにより多環芳香族や芳香族異性体に対する分離能を評価した結果,市販のオクタデシル化シリカと比較した場合,著しく高い分離能が得られた。またスペーサーを長くした固定相において,より高い分離能が得られることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
配向性分子であるグルタミド誘導体を多孔質シリカ界面にグラフト化した固定相を用いて,界面の分子配向構造が創り出すナノ空間を利用した分子認識について評価を行った。その結果,精密な幾何異性体分子や構造異性体分子の認識が可能であることが確認された。本研究では分子配向体が形成する特異的空間の機能開発を提案しており,これまでの結果から界面空間機能を分子形状認識への応用できる可能性が示唆されており,おおむね当初の予定通り研究が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
配向性分子を界面に固定化することで得られる特異的空間を分子認識へ応用できる可能性が示唆された。今後は,キラル炭素をもつ配向性分子が形成するキラル立体空間を利用したキラル分子の認識への応用,アミノ酸,糖類を骨格とする様々な配向性分子の固定化による固定層のバリエーション化とその評価について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費として,様々な配向性分子合成のための試薬類,溶媒類ならびに分子認識評価のための分析用試薬(高速液体クロマトグラフィー,核磁気共鳴スペクトル)などの消耗品を計上するとともに,これまでに得られた成果を含め学会等での報告を行うための旅費を計上する計画である。
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