2011 Fiscal Year Research-status Report
ホスト分子修飾ポリマーを利用した革新的血管内塞栓物質の開発
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23655104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原田 明 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大須賀 慶悟 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90332741)
日高 国幸 大阪大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (50437430)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 血管内塞栓物質 / ホスト-ゲスト相互作用 / ヒドロゲル / シクロデキストリン |
Research Abstract |
血管内治療において、塞栓物質の開発・臨床利用は欧米では積極的に利用されつつあり、その治療効果は絶大である。一方で日本では保険未承認の影響もあり、開発自身も遅れている。塞栓物質として注目されているのが、古典的な材料が多い。本申請課題においては、新たな高分子材料を用いた血管塞栓物質の開発に向けて、自己修復性を備えた血管塞栓物質の作製を行う。さらに血管内塞栓のみならず、高分子塞栓物質に効率よく薬剤を坦持できる超分子ホスト分子を導入し、塞栓も行いながら、薬剤溶出によって腫瘍を効率よく死滅させる球状高分子の開発に取り組むことを目的としている。自己修復性超分子ゲルの作製我々はシクロデキストリン (CD) の包接錯体形成を利用して、自己修復性ヒドロゲルの作製を試みた。特に CD 分子とゲスト分子を一分子鎖中に導入した。CD と相互作用する炭化水素系ゲスト分子誘導体を用いて水中で重合し、高分子主鎖からなるヒドロゲルを形成した。形成されたヒドロゲルの特徴として、化学架橋点を導入しておらず、確認されたヒドロゲルはホスト-ゲスト相互作用により非共有結合型の錯体形成が架橋点となっていると考えられる。粘弾性測定においても、化学架橋型に見られるような粘弾性挙動に類似しており、ホスト-ゲスト相互作用のみによるヒドロゲルの形成に成功した。得られたゲルを二つに切り、切断面を接触させ 24 h 静置後に引き上げた。その結果、接着後 24 h 経過するまでに再接着が確認された。自己修復性がホスト-ゲスト相互作用による架橋によるものなのかは、競争ゲスト分子・競争ホスト分子を切断面に塗布することで評価した。接着が確認された時と同様の条件で、競争ゲスト分子または競争ホスト分子を切断面に塗布したところ、再接着は確認されなかった。これは、切断面において競争ゲスト・競争ホストが包接錯体の形成を阻害したためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度において作製した自己修復性超分子材料は、ホスト-ゲスト相互作用に基づいた特異な分子認識により化学刺激や酸化還元刺激に応答する自己修復性材料の開発に成功した。刺激に応答してミクロスケールで複合体の形成をスイッチングするといった研究は数多く報告されているが、ホスト-ゲスト相互作用を外部刺激によって制御し、マクロスケールでのモルフォロジー変化としてその物性を制御できた例は少ない。我々のこのような性質を利用して、自己修復性の塞栓材料や刺激応答性の塞栓物質への展開が出来ると考えている。さらに機能性の向上においてはシクロデキストリンを使用することにより、薬物輸送に利用できるゲルへも展開できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
自己修復ゲルから血管内挙動を規定する適切な物性指標の作製得られた自己修復性ゲルを用いて、実際に塞栓物質として使用する前に、現在、使用されている球状塞栓ゲルの物理特性を評価する必要がある。これらの物理的強度は血管内に導入されたときに非常に重要な要素となる。固すぎると導入自身が困難になり、導入中に破損が生じる可能性がある。加えて、目的とする場所の手前にて止栓される可能性がある。一方でソフトなエラストマーにおいては血管内に密着しやすく、カテーテルでの導入も容易と考えられる。一方で目的とする塞栓位置よりも先で止栓される可能性があり、この場合に塞栓物質を大量に流し込む必要が生じ、患者への負担が懸念される。要求される弾性を指標として決定する必要があり、高分子エラストマーの分子量、それぞれのポリマーユニット比を調整する。球状エラストマーの弾性が不足している場合には部分架橋を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費に関しては、当初計画に従って、作製したホスト分子修飾ゲルの材料評価や自己修復性ゲルの材料評価を行う。これら材料評価を経て、より高性能な材料を開発するために、材料合成の試行錯誤を繰り返すことが考えられ、与えられた研究費は主に合成試薬の購入などの消耗品費に使用する予定である。またより良好な材料が作製でき次第、動物実験にも挑戦したいと考えており、実験用動物の購入費用やディスポーザブル器具の購入費用などに使用させて頂きたいと考えている。
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Research Products
(26 results)