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2012 Fiscal Year Research-status Report

機能性物質の時間分解ESRイメージング研究

Research Project

Project/Area Number 23655137
Research InstitutionNiigata University

Principal Investigator

古川 貢  新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (90342633)

Keywords機能性物質 / 光誘起伝導性 / 時間分解ESR / ESRイメージング
Research Abstract

本課題の目的は,時間・空間分解ESRを用いて,空間情報を兼ね備えたスピンダイナミクスという観点から機能性発現メカニズムを解明することにある.研究推進方針として,効率的な光誘起機能性物質の探索,および,時間・空間分解ESRシステムの開発とを平行して行ってきた.昨年度までに,単分子型光誘起伝導性TTF誘導体が,低温において1ms程度の電荷分離状態の寿命を持つことを明らかにした.しかしながら,十分なシグナル強度が得られないという問題点も指摘してきた.そのために,単結晶での測定を行った場合には,シグナルを観測することが出来ず,基盤のバックグラウンドシグナル等に埋没してしまうことが問題として挙げられた.積算を重ねてシグナル強度を稼ぐことも考えられるが,次の画像化という点を考慮した場合,非現実的となる可能性が高い.そこで,上記の問題の解決方法として,寿命が長く,十分なシグナル強度を持つ物質の再探索をすることとした.そこで,共有結合性有機骨格構造(COF)にドナー・アクセプターを導入した光誘起伝導性COFの光誘起伝導性メカニズムの解明を試みた.極めてスペクトル幅の狭いESRシグナルが観測され,励起三重項では無く,電荷分離状態と帰属することが出来た.この電荷分離状態は,10 Kにおいて,およそ1ms程度の寿命をもつことを明らかにした.またESR信号は,TTF系と比較して極めて強く,光ファイバーにて試料直近まで光を導入するなどの,強度を稼ぐためのハードウェア的な措置も考慮する必要が無い.このことからも,ドナー・アクセプター系COFは,本研究課題に適した物質系と見なすことが出来る.
一方で,磁場勾配コイルの設計に関しては,およそ業者との打合せも最終段階にある.300 G/cm程度の磁場勾配を持つZ軸磁場勾配コイルの設計を行っている.最終段階として,磁場勾配コイルの固定方法について打合せ中である.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本課題では,時間・空間分解ESR装置を開発し,上記装置を利用して光誘起機能性物質の機能性メカニズムの解明することが目的である.本研究課題では,最適な物質探索,および,時間・空間分解ESR装置の開発,そして,上記の利用した光誘起機能性メカニズムの解明を行う.昨年度までの物質探索の結果,単分子型光誘起伝導性TTF誘導体の長寿命な電荷分離状態を観測することができたが,シグナル強度が弱いという問題を抱えていることを突き止めていた.本年度は,まず,上記の問題点を回避することを最優先に考え,解決方法として,光ファイバーを導入するなどの装置的な工夫を凝らしてきた.しかしながら,根本的な解決することが困難であるという結論に達した.そこで,問題を解決するために,今一度,研究課題に最適といえる,「ESRシグナル強度の大きな,長寿命な電荷分離状態を示す物質」探索を行った.その結果,共有結合性有機骨格構造(COF)物質に,ドナー・アクセプターの概念を導入した光誘起伝導性COFが最適であることを見いだすことが出来た.これにより,上記の問題点をすべて解消することが出来た.一方で,磁場勾配コイルを用いたESRイメージングシステムについては,若干の遅れが否めない状況である.300 G/cm程度のZ軸磁場勾配コイルの作成を業者との打合せを,ほぼ済ませた状態である.25年度には完成する予定である.若干の遅れはあるものの,目的に達するための準備は整えることが出来たと言える.

Strategy for Future Research Activity

上記物質の単結晶取得は実質的に不可能である.従って,結晶に電圧を引加して,機能性発現下での時間分解ESR測定は期待出来ない.そこで,櫛形電極をパターニングした石英基盤上に薄膜化することを検討する.電圧下(機能発現下)での時間分解ESR測定を行い,その後に,時間・空間分解ESRへと展開していく予定である.本年度までに,粉末試料においては充分に強いシグナル強度を持つことは確認できているので,薄膜試料での時間分解ESR,および,電圧下における時間分解ESR測定に関しては,問題なく実行できるものと予想される.もし仮に,信号強度が再び問題になるような場合には,測定温度の制御,電流検出ESRへの方向転など,ハードウェアを改良することで,回避を検討する.また,ハードウェア的なアプローチとして,磁場勾配コイルの完成を成し遂げ,時間・空間分解ESRシステムを完成させる予定である.そして,これらを利用して,時間分解のESRイメージング法により,光誘起伝導性メカニズムの解明を試みる予定である.

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

時間・空間分解ESRシステムを完成させるために,磁場勾配コイルの作成は不可欠である.研究費は磁場勾配コイルの作成に充てる予定である.また,薄膜試料作成するために,石英基盤の櫛形電極の作成も不可欠である.基盤材料,電極材料,電極間距離などの試行錯誤が必要であり,特注となることを想定している.上記のように研究を遂行していき,得られた結果は,学会発表する予定であり,そのための旅費としても使用する予定である.

  • Research Products

    (10 results)

All 2013 2012

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (9 results)

  • [Journal Article] Charge Dynamics in A Donor–Acceptor Covalent Organic Framework with Periodically Ordered Bicontinuous Heterojunctions2013

    • Author(s)
      S. Jin
    • Journal Title

      Angew. Chem. Int. Ed.

      Volume: 52 Pages: 2017-2021

    • DOI

      10.1002/anie.201209513

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] ドナー・アクセプター結合型COFの時間分解ESRによる光伝導性の解明2013

    • Author(s)
      高橋誠弥
    • Organizer
      日本化学会第93春季年会
    • Place of Presentation
      立命館大学
    • Year and Date
      20130322-20130325
  • [Presentation] C60を内包した光誘起伝導性COFのスピンダイナミクス2013

    • Author(s)
      古川貢
    • Organizer
      日本化学会第93春季年会
    • Place of Presentation
      立命館大学
    • Year and Date
      20130322-20130325
  • [Presentation] 電子スピン共鳴でみる機能性物質のスピンダイナミクス2013

    • Author(s)
      古川貢
    • Organizer
      GreenChem Symposium
    • Place of Presentation
      新潟大学
    • Year and Date
      2013-03-17
  • [Presentation] π拡張した光誘起伝導性物質(EDT-TTF)BTAのスピンダイナミクス2012

    • Author(s)
      古川貢
    • Organizer
      第51回電子スピンサイエンス学会年会
    • Place of Presentation
      札幌コンベンションセンター
    • Year and Date
      20121101-20121103
  • [Presentation] 時間分解ESR法による共有結合性有機骨格構造の光伝導性解明2012

    • Author(s)
      高橋誠弥
    • Organizer
      第51回電子スピンサイエンス学会年会
    • Place of Presentation
      札幌コンベンションセンター
    • Year and Date
      20121101-20121103
  • [Presentation] 有機固体のアドバンスドESRによる機能性解明の研究2012

    • Author(s)
      古川貢
    • Organizer
      第51回電子スピンサイエンス学会年会
    • Place of Presentation
      札幌コンベンションセンター
    • Year and Date
      20121101-03
  • [Presentation] 時間分解ESRによる光誘起伝導性TTF誘導体におけるメカニズムの解明研究2012

    • Author(s)
      古川貢
    • Organizer
      第6回 分子科学討論会
    • Place of Presentation
      東京大学
    • Year and Date
      20120918-20120921
  • [Presentation] 機能性物質のアドバンスドESR2012

    • Author(s)
      古川貢
    • Organizer
      分子研研究会「レーザー分光および磁気測定による分子構造探求の新展開」
    • Place of Presentation
      分子科学研究所
    • Year and Date
      20120730-20120731
  • [Presentation] Spin Dynamics for Photoconductive Materials, TTF-derivatives2012

    • Author(s)
      K. Furukawa, K. Tsujimoto, H. Fujiwara, S. Takahashi, and T. Nakamura
    • Organizer
      The 2nd International Symposium of Electron Spin Science
    • Place of Presentation
      ホテル大観荘
    • Year and Date
      20120723-25

URL: 

Published: 2014-07-24  

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