2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヘム電子論によるヘモグロビンの協同的酸素結合機能の解明
Project/Area Number |
23655151
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 泰彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00191453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太 虎林 筑波大学, 数理物質科系, 特任助教 (40512554)
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Keywords | ヘムタンパク質 / ヘム電子構造 / 計算化学 / NMR / 機能解析 / π-π相互作用 / タンパク質の高次構造 / マリケン電荷 |
Research Abstract |
酸素(O2)運搬タンパク質ヘモグロビン(Hb)の協同的O2結合の分子機構を、補欠分子族ヘムのポルフィリン環と側鎖ビニル基のπ-π相互作用がヘムの電子構造に及ぼす影響に基づいて解明する研究を行った。密度汎関数法により、ヘム鉄原子の電子密度(ρ)は、ビニル基のコンフォメーションに依存すると共に、ヘム側鎖の2つのビニル基のコンフォメーション変化によるρの変化の大きさは最大でヘム側鎖メチル基1つをトリフルオロメチル(CF3)基に置換した場合に匹敵することを明らかにした。私共は、ヘム側鎖メチル基1つをCF3基に置換することによって生じるρの変化により、O2貯蔵タンパク質ミオグロビンのO2親和性は約1/2.7に低下することを実証している。X線結晶構造解析により示されているHbのヘム側鎖ビニル基の酸素化に伴うコンフォメーションでは、酸素化によってHbのO2親和性は約2.7倍上昇すると考えられた。 実際に、ヘム側鎖としてCF3基を1つ、そして2つもつ化学修飾ヘムをそれぞれHbのタンパク質部分に組込んだ再構成Hbを調製し、NMRによりこれら化学修飾ヘムはHbのタンパク質部分に正常に組み込まれることを確認した上で、それぞれのO2結合能を計測したところ、CF3基1つの導入に伴ってO2親和性が約1/2.2-1/6.3倍低下することが示された。一方、協同性はこれら3種類の再構成Hbでほぼ同様であり、天然Hbの約半分であった。このように、HbのO2親和性の調節に関しては、ヘム電子論に基づいて説明できる実験結果を得ることに成功した。協同的O2結合機能については、Hbの4つのサブユニットのヘム側鎖ビニル基のコンフォメーションが酸素化に伴って変化するタイミングを種々のシミュレーションで最適化し、それぞれのサブユニットのO2親和性の変化を検討することにより、ヘム電子構造が果たす役割を解明できると考えている。
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[Journal Article] Relationship between the Electron Density of the Heme Fe Atom and the Vibrational Frequencies of the Fe-Bound Carbon Monoxide in Myoglobin2013
Author(s)
R. Nishimura, T. Shibata, H. Tai, I. Ishigami, T. Ogura, S. Nagao, T. Matsumoto, S. Hirota, K. Imai, S. Neya, A. Suzuki, and Y. Yamamoto
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Journal Title
Inorg. Chem
Volume: 52
Pages: 3349-3355
DOI
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