2013 Fiscal Year Research-status Report
シリカナノ細孔内の「天然―人工ハイブリッド光合成系」の構築
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23655196
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 繁 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 名誉教授 (40108634)
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Keywords | 人工光合成 / 光反応 / シリカメソ多孔体 / クロリフィル / タンパク質安定化 / 光エネルギー / ガラス / メゾスコピック |
Research Abstract |
様々な外部形状中(ミクロ粒子、ガラス基板、アルミナ基板中の孔)に形成したシリカナノ細孔中に、光合成反応中心膜タンパク質複合体である光化学系II(PSII)二量体、光化学系I(PSI)3量体、あるいは、TiO2などの光機能分子を、導入、反応させる技術を確立した。光駆動の電子移動系、水分解系、大気酸素中でも効率がさがらない水素発生反応系をつくった。拡散を選択的に応用できる反応環境をナノ細孔内に形成した。 PSIIは、光反応により水から電子を取り出し酸素を出す植物巨大タンパク質複合体である。二量体で分子量756 kDa、サイズ20 nmx12nmで色素、電子担体分子40以上をふくむ。好熱性シアノバクテリアThermosynechochoccus vulcanusより熱安定なPSIIを、単離・精製し、外径約5μmの粉末状多孔質材料(SBA )と混合した。内部細孔への吸着パターンの解析、PSII活性と熱安定性を評価した。SBA内部の径23 nmの細孔中に5%重量のPSIIが吸着され、活性と熱安定性が強化された。光化学系I(PSI)のSBA内への吸着もおこなった。絶対嫌気性光合成細菌ヘリオバクテリアのI型反応中心の吸着もにも成功した。 0.05mm厚のアルミナ薄膜を貫通する孔内にシリカ細孔を形成した基板に、T.vulcanus PSI反応中心三量体を吸着させた。細孔内でのPSI三量体は薄膜面に平行(細孔軸に垂直)に配列することを、電子スピン共鳴法により確認した。この細孔内で分子を並べる基礎技術を完成し、論文を発表した。 内部に無数の細孔をもつ、ホウ素珪酸ガラス板内にPSI, PSIIを吸着させ、さらにメデエーター(DCIPやヴィオローゲン色素など)、ヒドロゲナーゼ酵素を同時に導入した。光反応産物が外部拡散せずに逐次反応するミクロ反応系を構築した。効率増大、反応特性、最適化を検討中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、1)光反応タンパク質をナノメートルサイズのシリカナノ細孔中へ導入し機能させるた。2)タンパク質機能を生体外で発揮させる。3)シリカは光をよく通すので、光合成や光センサータンパク質を入れた無機―生体ハイブリッド樋廽反応系を構築できた。4)これを利用して、光エネルギーで、水から電子を取り出し、電力や水素の発生をする天然/人工ハイブリットの「人工光合成系」の基礎が出来上がった。5)また拡散速度が分子サイズで異なる細孔内での特異な反応環境についての基礎データを得た。 タンパク質素材は、一般的には不安的だが、安定なタンパク質を好熱性シアノバクテリアから精製した。a)新発見の「光センサータンパク質」群、b)CO2還元や水素発生に必要な強い還元力を作る「光化学系I-クロロフィルータンパク質複合体」。c)水を分解して酸素を取り出す「光化学系II複合体」を使用した。 多様なシリカメゾスコピック材料を使用した。a)内部にナノ細孔を持つ粉末状メゾスコピック試料(FSM, SBA)。b)ホウ素珪酸複合ガラスを部分酸融解してナノ細孔を形成した板状メゾスコピックガラス、c)板厚0.1mm以下のアルミナ薄膜を電解処理して微細貫通孔をあけ、20と100nmのシリカナノ細孔を自己成長させたガラス素材を個別共同研究で得た。d)この他にPSIをシート状に加工しte光反応をおこなわせることに成功した。 これらの組み合わせで顕著な成果をあげた。その結果、「光応答して色を変えるガラス体」、「光で酸素を出す緑色粉状シリカ多孔体」、「光合成反応中心タンパク質複合体やヒドロゲーナーゼを規則的に内部配列させ強い還元力を発生するシリカーアルミナ薄膜系」、「シート状に配列させたPSI」等の新機能素材の作成と光エネルギー変換に成功した。人工光合成系作成の基盤情報が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) PSI-シリカメゾスコピック基材ハイブリットによる人工光合成系の開発;PSIは光エネルギーを利用して強い還元力を作り出す。これまでにSBA内にPSI三量体を吸着させた。この吸着パターンの解析を行い、細孔径と分子サイズの適合方法を確立する。さらに、人工電子供与体・電子受容体存在下で光反応による電力発生、可溶性タンパク質フェレドキシンを孔内に共存させてのNADPの還元、ヒドロゲナーゼを共存させての水素発生系などを構築する(論文投稿中:Light-driven Hydrogen Production by Hydrogenases and a Ru-complex inside a Nanoporous Glass Plate under Aerobic Conditions. T. Nojiら)。最適な電子供与体・メディエイター、シリカ内部環境を検討した。細孔内でのPSIとPSIIの連結を行い、人工光合成系を構築する。 2) ガラス板状シリカ多孔体―タンパク質ハイブリッド系によるイメージングユニットの作成;①ガラス板状シリカ多孔体へPSI、PSII、人工電子受容体を併せて導入することで、光反応(光誘起電子移動)で色調を変化させたり、出力を2次元的に帰る事ができる画像型光反応材料を開発する。②ガラス板状シリカ多孔体へ光センサータンパク質を導入して光イメージセンサとする。さらに異なるタンパク質群をもちいて、マルチカラー化を行う。 シリカ基材の作成と入手、機能の分光解析に必要な光学機器、レーザの保守、タンパク質精製用の消耗品、データ解析に必要なソフトウエアの購入を予定する。国内外の学会で成果発表を行うための、出張旅費を研究費から充当する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に、光合成反応中心をシリカナノ多孔体基板に導入し、光合成機能を測定し学会発表と論文投稿の予定であった。しかし、完成した人工光合成基板の能力検定には既存の測定系は不十分だった。このため、これを改良し正確な検定をした後、次年度に「シリカナノ細孔内の天然―人工ハイブリッド光合成系」論文の投稿、学会発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。 光合成能力検定用の分光装置改良と光合成生体試料作成用に消耗品費(分光部品8万円+試薬7万円=計15万円)、学会発表に旅費(5万円)、論文作成投稿にその他経費(3万円)、を計上する
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