2011 Fiscal Year Research-status Report
結晶界面ノンストイキオメトリー制御による高効率太陽光発電セル光吸収体の開発
Project/Area Number |
23656395
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
溝口 照康 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70422334)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 太陽電池 / CuInSe2 / 原子・電子構造 / 電子顕微鏡 / EELS / 第一原理計算 / 薄膜 / 無機材料・物性 |
Research Abstract |
非シリコン系太陽光発電セルの光吸収層であるCIGSやCISにおいては,光の散乱やキャリア電子の散乱を抑えるためには,均質かつ緻密でバンドベンディングの少ない多結晶体が必要となる.これら特性には界面近傍における欠陥の集積状態(ノンストイキオメトリー)が重要な役割を果たしている.本申請研究によりCIGS,CIS系化合物の粒界,界面付近における欠陥濃度と組成ゆらぎを定量化し,機能との相関性を明らかにすることを目指す.平成23年度においては,CIS薄膜の作成と,CIS双結晶薄膜作成に向けた双結晶基板作成を行った.CISと比較的整合性の高い酸化物基板及び硫化物上にCISを堆積した.薄膜成長条件を系統的に調べ,薄膜の配向状況,結晶性などを調べた.また,得られた薄膜に対して高分解能原子分解能電子顕微鏡観察を行い,CIS内部の欠陥構造および方位関係を調べた.また,CISやCIGS双結晶薄膜作成に向けた双結晶基板の作成も行った.これまでの双結晶に関する研究は対称傾角粒界に関する研究がほとんどであったが,一般的な多結晶体の粒界の多くは非対称粒界である.そのようなモデルと実際の材料とのギャップを補うために,非対称粒界を有する双結晶の作成と原子分解能観察を行った.その結果,新たな非対称粒界作成法を確立した(PRB 2011).さらに,CISやCIGS双結晶薄膜の粒界ノンストイキオメトリーには基板粒界の欠陥構造が影響すると考えられる.そのために双結晶基板における欠陥形成挙動をしらべた.その結果,粒界性格とノンストイキオメトリーとの相関性を明らかにした(PRB 2011).以上の研究結果により,双結晶基板作成指針とノンストイキオメトリー制御のための指針を確立することができた.今後はCISやCIGS中の格子欠陥の電子構造と物性への影響について調べる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における目標はCu(InGa)Se2(CIGS)およびCuInSe2(CIS)双結晶薄膜作成を目指した双結晶基板の作成技術の確立とCISおよびCIGS薄膜の単結晶への成膜であった.平成23年度においては,粒界方位,粒界面などを系統的に変え,様々な酸化物の双結晶基板を作成した.また,それら双結晶基板界面を高分解能電子顕微鏡観察と第一原理計算を行い,双結晶粒界におけるノンストイキオメトリーの形成挙動と粒界性格との相関性を明らかにすることができた(PRB2011).従来の双結晶基板の研究の多くは対称傾角粒界に関する研究であったが,実際の多結晶体内部の粒界のほとんどが非対称粒界である.そのことを踏まえ,非対称粒界を作成することを試みた.さまざまな考察を行った結果,非対称粒界を作成するための新たな技術を確立することに成功した(PRB2011).この手法さ様々な酸化物,硫化物,窒化物に適用でき,CISやCIGSだけではなく,他の多くの化合物への応用が期待される.以上のことから,双結晶基板作成のための技術はかなり確立され,目標を大きく上回る成果がでているといって過言ではない. 一方で,後述のように双結晶作成装置に荷重制御のための設計変更が必要なことが判明したため,24年度に導入する予定である. 薄膜の単結晶への成膜に関して,様々な酸化物,硫化物単結晶へのCIS薄膜の作成を行った.温度,雰囲気などの成膜条件を系統的に試行し,結晶方位や配向性,結晶性などを調べた.まだ最適な条件は探索し切れたとは言えないが,これまでにCIS薄膜を製膜し,同薄膜における欠陥構造を高分解能電子顕微鏡で観察している.これらの研究を通し,CISおよびCIGSノンストイキオメトリーの原子構造に関する知見をすでに得ている.以上のことからCISおよびCIGS薄膜作成に関してもおおむね目標を達成しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も継続的に双結晶基板の作成を行う.また,ZnOも基板として用いる予定であるが,ZnOは蒸気圧が高く,熱処理条件,雰囲気を制御し,最適な双結晶作成条件を明らかにする.そのためには,温度と荷重圧力をより精密に制御可能な電気炉を導入する必要がある.そのための電気炉を平成24年度に導入する予定である. また,CIGSおよびCIS双結晶薄膜の原子分解能電子顕微鏡観察と第一原理計算を行う.原子分解能観察および第一原理計算には既存の走査透過型電子顕微鏡(STEM)と計算機クラスターを用いる.STEM観察ではZコントラスト法を用い,各原子カラムにおける平均組成を見積もる.さらに理論計算においては異なる剛体変位状態,界面終端面をすべて網羅した計算を行い,粒界エネルギーを指標として最安定構造を求める.得られた実験像と計算構造の比較によりCIGSおよびCIS粒界における原子構造を完全決定する.CIGSについては4元系であり,構造が複雑になることが予想されるため,平成24年度についてはCISの欠陥構造とノンストイキオメトリーに関して中心的に研究する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの双結晶基板の作成を行ってきた電気炉では荷重を精密に制御することができない.しかしながら,これまでの研究により,いくつかの双結晶において,荷重が大きすぎるために結晶が割れたり,双晶が入ったりするなどの新たな構造欠陥が導入されてしまうことが明らかとなってきた.このことはその後の双結晶薄膜を製膜する際に影響を与えることが考えられるため,荷重をより精密に制御可能な双結晶作成電気炉を導入する予定である.現在のところ,1300℃~1500℃使用可能なもので,荷重は0kg~10kgまでを連続的に制御可能なシステムを導入する. また,これまでにCISにおける欠陥構造の電子顕微鏡観察が達成されつつある.そのようなCIS中における構造欠陥の物性への影響を明らかにするためには,より大きなスーパーセルを用いて系統的に第一原理計算をする必要がある.そのために,既存の電子計算機システムを増強する.具体的にはメモリの増強とネットワークシステムの高速化(インフィニバンド等の導入予定)である. これまでと同様に薄膜基板,ターゲットなども導入する予定である.さらに,これらの成果を発表するための学会参加旅費と論文投稿料を計上する.
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] "Ab-initio multiplet calculation of oxygen vacancy effect on Ti-L2,3 electron energy loss near edge structures of BaTiO3"2011
Author(s)
"S. Ootsuki, H. Ikeno, Y. Umeda, H. Moriwake, A. Kuwabara, O. Kido, S. Ueda, I. Tanaka, Y. Fujikawa, and T. Mizoguchi
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Journal Title
Appl. Phys. Lett
Volume: 99
Pages: 233109-1-3.
Peer Reviewed
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