2012 Fiscal Year Research-status Report
マルチエマルションを活用した貫通型細孔を有する微粒子の創製と応用
Project/Area Number |
23656498
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
迫口 明浩 崇城大学, 工学部, 教授 (30196141)
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Keywords | 微粒子 / 貫通型細孔 / マルチエマルション / 固定化酵素 / 糖 |
Research Abstract |
本研究課題では、マルチエマルションの溶液構造を利用した貫通型細孔を有する微粒子の新たな調製法を開発し、この微粒子を固定化酵素として利用することを試みる。すなわち、酵素、ポリマーおよび糖類をO/W/O型マルチエマルションの水相中に共存させ、これら3成分の特異的な分子間相互作用から形成されるナノ構造と、O/W/O型マルチエマルションの持つマイクロ構造を、このマルチエマルションの凍結乾燥という簡便な方法によって保持させた微粒子を作製する。この微粒子の調製条件を種々検討することから、含有される酵素の機能を強化した微粒子を創製する。 平成23年度までに2種類のリパーゼとプロテアーゼを用いて検討した結果、担体として用いたPEGの濃度などを最適化することにより貫通型細孔を有する微粒子を得ることができた。とくにリパーゼSMとスブチリシンを固定化した微粒子では、調製時に糖としてトレハロースやリビトールを添加することで、有機溶媒中において酵素活性を増大させることができた。 そこで平成24年度では、プロテアーゼとしてスブチリシンとα‐キモトリプシンなどを選択し、さらにスブチリシンに対して添加する糖の影響を検討した。その結果、有機溶媒中で酵素活性を発現する貫通型細孔を有する微粒子の調製に成功した。とくに、固定化スブチリシンはキシリトールの添加によって特異的な酵素活性を発現した。すなわち、この固定化スブチリシンはキシリトールを添加しない固定化スブチリシンに比べて酵素活性は低下したが、リビトールを添加した場合と同様に、特異的に酵素活性を増大するキシリトールの添加濃度の存在が見出された。本固定化法はリパーゼおよびプロテアーゼの有機溶媒中における酵素活性発現に有用であり、糖類の添加方法を最適化することで他の酵素についても有機溶媒中での利用が可能な固定化酵素を実現することができるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、マルチエマルションの水相(緩衝液)に酵素、その固定化担体であるポリエチレングリコール(PEG)および糖類(トレハロース等)の3成分を溶解させ、このO/W/O型マルチエマルションを凍結乾燥させることで、貫通型細孔を有する微粒子状の固定化酵素を創製することを目的としている。得られた微粒子を顕微鏡観察し、微粒子の形態上の特徴とO/W/O型マルチエマルションの調製条件(酵素の種類、水相pH、緩衝液の種類、PEGの分子量や濃度、糖類の種類や濃度など)との関係を検討し、貫通型細孔を有する微粒子の調製条件を検討した。 種々の条件で調製された微粒子を用いて非水媒体中でのエステル合成反応を行い、生成物であるエステルの生成量をガスクロマトグラフによって追跡し、得られた反応の初速度を酵素活性の指標として、基質や反応条件を変えて酵素活性を測定し、貫通型細孔を有する微粒子の酵素機能を評価した。とくに、トレハロースよりも低濃度の添加によって酵素活性を増大することが可能なリビトールとほぼ一致する濃度で酵素活性の最大値が得られ、さらにスブチリシンに対する阻害剤としての機能も有するという興味深い特性を持つキシリトールを見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに検討した酵素に加えて、種々のリパーゼやプロテアーゼを用いて、これら酵素を含有した微粒子を作製し、この微粒子の形態を顕微鏡観察し、貫通型細孔を有するための条件を解明する。 得られた種々の酵素を含有する微粒子の非水媒体中でのエステル合成を試みて酵素機能を検討する。さらに、酵素の固定化担体としてPEGおよびこれ以外の高分子を、糖類としてトレハロースおよびこれ以外の種々の糖類を用いて、貫通型細孔を有する微粒子に固定化された酵素の作製とその酵素機能を検討する。 とくに、酵素活性および形態の異なるいくつかの微粒子を選び、微小流路へ充填してマイクロバイオリアクターとしての基礎的検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に続いて平成24年度においても、調製した微粒子の酵素活性を測定する際に用いるガスクロマトグラフ(研究室所有の機器)の不調が続いた。研究室メンバーでのメンテナンスを行いつつ、メーカーとの相談を重ね、部品の交換修理などを行った。昨年度と同様に、ガスクロマトグラフの運転操作と保守管理に細心の注意を払いながら酵素活性の測定を行った。しかし、平成24年度末、いよいよガスクロマトグラフが復調しなくなった。平成24年度中、故障にすぐ対応できるように予算の使用を工夫せざるを得ないため、当初予定していた旅費、人件費・謝金を凍結し、物品費を最小限に抑えて、研究室にストックしていた消耗品等を効率よく使用するようにした。その結果、測定できなかった期間が生じたことによる実験計画の修正と、当初の予定より少ない起源の異なる酵素について検討することとなった。 そこで、平成24年度末からメーカーと修理のための技術的相談を行い、修理費用の支払い計画とともに、昨年度の凍結および縮小していた実験および研究計画を組み入れて平成25年度の研究計画を調整している。とくに、起源の異なる酵素を含有する微粒子の調製条件と微粒子の形態および酵素機能について幅広く検討し、いくつかの固定化酵素を微小流路へ充填したマイクロバイオリアクターについての基礎的検討を行う。そのためには、酵素を含めた各種試薬、ガラス器具など実験に必要な消耗品を多数購入する必要がある。
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