2011 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ溶射によるプラスチック樹脂の表面硬化技術の開発と宇宙航空部材への適用
Project/Area Number |
23656538
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 明 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (70110773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 宏之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40361505)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プラズマ溶射 / プラスチック樹脂 / 表面硬化技術 / 宇宙航空部材 |
Research Abstract |
宇宙航空部品の軽量化には、軽金属に加えてプラスチックの利用が欠かせないが、強度、硬度など機械的特性、耐熱性など環境特性に劣る。このため、表面改質が考えられているが、これまでの技術では工程が複雑、コスト高であるなどの問題がある。 本研究では、これらの課題を解決できる大阪大学独自開発のガストンネル型プラズマ溶射を用いて、ABS樹脂FRP等プラスチック樹脂の表面に、金属、セラミックスなどからなる複合機能膜を作製し、その作製プロセスの解明、複合機能膜の物性の解明を行い、高機能を持つ表面硬化樹脂の開発研究を行う。また、本研究で開発した表面硬化樹脂について、宇宙航空部品の軽量化を目指した様々な部材への適用性を検討する。 このため、本年度は、ガストンネル型プラズマ溶射により、ニッケル、チタンなどの金属粉末をアクリルなどプラスチック樹脂表面に溶射し、高硬度で、耐熱性、耐食性などに優れる金属複合プラスチック材料を作製した。現在、ニッケルなど金属膜の厚みが薄く、また、プラスチック基板への熱の影響が大きいためその解決方法が課題となっている。 また、得られたニッケル、チタン膜のマイクロ構造を光学顕微鏡、電子顕微鏡で明らかにし、その皮膜組成をXRD等により解明した。その結果、酸化の少ない金属膜が得られている。現在、硬さや引っ張り強度など機械的特性の結果をまとめている。以上の結果により、金属-プラスチック樹脂との複合・接合機構などを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ABS樹脂FRP等プラスチック樹脂の表面に、金属、セラミックスなどからなる複合機能膜を作製する方法については、プラズマ溶射を用いた場合、プラスチック樹脂基板への熱影響が大きく、基板の変形、変質により、技術的に困難さがともなう。このため、ガストンネル型プラズマ溶射を用いた本研究においても、適正溶射条件を探るのに時間を要し、未だ最適溶射条件に到達していないのが現状である。 当初の目的では、ガストンネル型プラズマ溶射を用いて、ABS樹脂FRP等プラスチック樹脂の表面に、200ミクロン以上の金属、セラミックスなどからなる金属複合膜を得る最適条件を求めることが達成されているべきであるため、本研究の1年目の研究達成状況としては、若干遅れ気味である。したがって、高機能を持つ表面硬化樹脂の作製プロセスの解明、複合機能膜の物性の解明についての研究も現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ガストンネル型プラズマ溶射を用いてABS樹脂FRP等プラスチック樹脂の表面に、金属複合機能膜を作製する場合の適正溶射条件を求める。この場合、プラスチック樹脂基板への熱影響を抑制し、基板の変形、変質を防ぐ。ガストンネル型プラズマ溶射を用いて、ABS樹脂FRP等プラスチック樹脂の表面に、200ミクロン以上のニッケル、チタンなど金属複合膜を得る。2.高機能を持つ表面硬化樹脂の作製プロセスの解明、複合機能膜の物性の解明についての研究を推進するとともに、金属皮膜特性を解明し、硬さや引っ張り強度など機械的特性、傾斜機能性も明らかにする。また、それらの金属皮膜とプラスチック樹脂との複合・接合機構などを解明する。3.ガストンネル型プラズマ溶射により、ジルコニア、アルミナなどセラミックス粉末をプラスチック樹脂表面に溶射し、耐熱性、耐食性などに優れた機能をもつセラミックス複合プラスチック材料を作製する。それらのセラミックスとプラスチック樹脂との複合・接合機構と、金属-プラスチック樹脂との複合・接合機構とを比較検討する。4.種々のプラズマ溶射条件により、金属・合金粉末、セラミックス粉末を混合させてプラスチック樹脂表面に溶射し、高機能金属-セラミックス複合皮膜を作製する。それらの構造・機能を解明することにより、新しい高機能プラスチック複合材料を設計する。5.本研究で開発した耐熱高機能を持つ表面硬化プラスチック樹脂について、宇宙航空部品の軽量化を目指した様々な部材への適用性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度において、プラスチック樹脂基板への熱影響が大きく、基板の変形、変質のため、ガストンネル型プラズマ溶射の最適溶射条件において溶射膜を得ていない。このため、本年度の研究計画に遅れがあり、次年度に使用する予定の研究費がある。 以上のように、本年度は研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、次年度の研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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