2011 Fiscal Year Research-status Report
構造信頼性手法を用いた設計荷重設定方法に関する研究
Project/Area Number |
23656549
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯島 一博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50302758)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | FORM / 設計荷重 / 曲げ捩り / 崩壊 |
Research Abstract |
研究目的を達成するための,今年度の本研究の第一の目標は、履歴性のある非線形性の強い現象について設計不規則波を導出すること、第二の目標は実船のコンテナ船について、曲げ捩じり応答のための設計荷重を導出し、過去に開発されている設計荷重との比較を通して、手法の有効性を確認することである。初年度である平成23年度にこれらの両方に取り組み、簡単な問題に関して基本的な原理の確認を行った。 まず,履歴性のある非線形性の強い現象について設計不規則波を導出する目標に対して,一自由度の非線形ばね―質点モデルを作成して不規則波中の船体構造の崩壊現象をシミュレーションすることができた。しかしながら,実際に計算を行ったところ FORM(First Order Reliability Method)を用いて設計不規則波を一意に定めることができなかった。この理由を探ると,最大荷重の発生する時刻が任意であることから,FORMを用いて設計不規則波を導出するためには,別の付帯条件を付加することが必要なことがわかってきた。また,極限波中で累積的に進行する崩壊現象では静水中荷重の低減の考慮が重要なことがわかった。荷重総和も低下することから,極限的な一発大波での崩壊現象が確率的に高い事象であることが明らかになりつつある。 次に実船のコンテナ船について曲げ捩じり応答のための設計荷重を導出するために,斜め波中のデッキ部そり応力の周波数応答関数を得た。得られた周波数応答関数は位相差と応答振幅の両方を含む。このような応答関数を元に波スペクトルと重ね合わせることで応答の分散を算出し,短期予測を行った。短期予測結果から,任意の確率レベルに応じた最大応答参照値が導出される。この結果とFORMから得られる応答レベルの比較を行い,同じ確率レベルに対し短期予測とFORMから得られる応答レベルが同程度であることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に対する初年度の実施予定は,FORMによる設計荷重設定の動作原理の確認であった。具体的に挙げた二つの目標について,それぞれ適用可能性の目途をつけることができ,この点では動作確認がほぼできた。よっておおむね順調といえる。 より詳細に述べると,履歴性のある非線形性の強い現象へ適用する際に設計荷重を一意に定めることができないという本手法の問題点が発見された。この問題点は当初予想しなかったもので,解決ができればFORMを用いた設計荷重の設定のための新しい知見となり,Jensenらの手法を補完できる。また,上記の問題点が生じる理由と,付帯条件を付することで上記の問題の解決ができる見込みを見いだせている。 コンテナ船の曲げ捩じり荷重については応答レベルの比較ができた。これは当初予定していた内容である。時間不足のために設計ルールで与えられている荷重分布とFORMで得られる荷重分布の比較を行うことができなかったが,これは時間を掛ければ容易に実施可能である。両者がほぼ一致することが予想できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
履歴性のある非線形性の強い現象についてFORMで一意に設計荷重を定めることができなかったことに対しては,現在,あらゆる不規則波を対象とするのではなく,ある時刻であらかじめ指定した波面上昇量の極値を取る不規則波の中から設計荷重を設定することが考えられる。つまり付帯条件付きのFORMの問題に置き換えることで,この問題を解決しようと検討を行っている。FORMが一種の最小値問題であることを踏まえると,拘束条件を付した最小値問題として取り扱えばよい,ということである。また,累積的に進行する崩壊進行による静水中荷重の低減効果についても開発されたモデルへの付加的することで考慮可能である。 平成24年度は予定通り,クラック進展による耐力低下が生じる事象を組み込んだ強度モデルを開発し,どのようなシナリオで崩壊が進行するかの検討を行いたい。その際に,平成24年度は研究室の学生二名を研究協力者として体制に含めることで研究の進捗を加速する。初年度の検討から動作原理の確認と不備を補う方法の発案ができているので,研究協力者との協調によって,研究の進行速度が数段上がることが期待できる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に購入したクラスタエレメントにより,単一の計算について高速計算処理が可能となった。今後,多数・長時間の崩壊シナリオを検討するためには大規模な計算を複数個同時に実行する必要がある。そのためには平成24年度中の大量のメモリの購入による,一層の計算環境の整備が必要である。また,研究が活発に行われつつある分野であるので海外研究者の情報集集が望まれ,そのための海外出張が必要である。研究費は主にこの目的のために使用したい。
|