2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23657065
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
川窪 伸光 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60204690)
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Keywords | 花 / 降雨 / 適応進化 / インターバル撮影 / 微速度撮影 / 気象観測 |
Research Abstract |
本研究の目的は,顕花植物の有性繁殖器官である「花」の「発現(開花)生態」を,繁殖実行時の『降雨へ対抗するための適応』という全く新しい視点で再検討・再構築することである。そのため,降雨を開花送粉時のストレスと捉え,ストレス回避である【開花制御】と,ストレス耐性である【雨滴耐性】の2つの側面から解析する。 平成24年度の研究実施状況は,23年度の準備段階を経て,目的達成の第二段階として,野外観察データの集積と,観察機材の実践運用であった。具体的には,野外において各種の野生植物の蕾から開花,結実までの花器機能発現の全過程を,いくつかの植物において,その外部形態変化を微気象環境と対応させて連続的に記録できた(以下の項目が詳細)。 1. 非常に興味深い材料として,オオイヌノフクリと,キク科植物の開花過程を,最新のデジタル技術を駆使して微速度撮影した。撮影された映像は,花を静止画状態で記録した画像であり,すべてに撮影日時も同時に記録されているので,並行して記録している気象データと容易に対応できるようになっている。 2. 撮影タイミングに完全同期した微気象の環境モニタリングを,昨年設置した気象観測装置で行った。温湿度センサーと光センサーに接続したデータロガーによって対象植物個体付近の微気象を記録し,データの解析法を検討している。 3. やはり雨の中の撮影には,さまざまな困難が存在していた。カメラの防水性劣化・故障の問題から,撮影対象植物の降雨による物理的変形が予想以上に大きく,その変形を予想して撮影する困難に現在直面している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.野外において,さまざまな顕花植物の開花過程を,最新のデジタル技術を駆使して微速度撮影する手法を確立した。2.植物1種について2台のデジタルコンパクトカメラを24時間休み無しに全天候下で数日間対応させることを試み,それに成功した。3.撮影された映像は,すべてに撮影日時も同時に記録されているので,気象データと容易に対応できるようになった。4.撮影タイミングに完全同期した微気象の環境モニタリングできるようになった。5.観測装置を山野へ移動できるように,大型三脚に気象観測装置1セットをくみ上げ実際運用できた。6.しかし,雨の中の撮影には,さまざまな困難が存在していた。カメラの防水性劣化・故障の問題から,撮影対象植物の降雨による物理的変形が予想以上に大きく,その変形を予想して撮影する困難に現在直面している。7.植物体の降雨による植物体の変形は,新たな課題を提供していると認識し,さまざまな検討を行っている。8.変形を押さえる植物体の固定は,撮影には有利だが,本来の自然な植物体の姿とは言えず,問題があるので,新年度の新たな課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体の進行はほぼ順調に推移しているので,計画通りに平成25年度以降を進める予定である。つまり,微速度撮影で把握した形態変化と環境モニタリングデータとの同期解析の結果を,以下のような開花生態的パラメータと対応させて解析を発展させる。 1.「降雨時の開花の有無」:降雨開始時に開花しない種の系統的類縁関係(降雨予測性の進化的背景)2.開花形態パラメータである「上向き開花,横向き開花,下向き開花」3.「開花維持時間(開花日数)」4.「花の開閉可逆性」 また,降雨開花時の「雌雄ずいの雨滴回避性(雌雄ずいが雨に当たるか)」,花弁「撥水性」「厚さ」「表面ワックス」「毛や微細構造」「排水溝構造」など,また「花柄による運動」も解析する。この段階では,人為的に水を花器へスプレーして,水滴の動態をハイ・スピードカメラなどで撮影して詳細に追加解析する。 さらに,撮影対象植物の降雨による物理的変形は,新たな課題を提供していると認識し,新年度の新たな課題となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要な物品はほぼそろっている。また,データも集積,解析しつつある。したがって,一部消耗品を補給するとともに,データの最終整理,単純解析のための人件費,また学会発表旅費を使用する予定である。
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