2011 Fiscal Year Research-status Report
植物病原菌と昆虫病原菌における共通毒素生産に依存した病原性発現機構の比較解析
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23658041
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
児玉 基一朗 鳥取大学, 農学部, 教授 (00183343)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 植物病原菌 / 昆虫病原菌 / 毒素 / 毒素生合成遺伝子 / 病原性 |
Research Abstract |
Alternaria属植物病原菌およびMetarhizium属昆虫病原菌は、それぞれの宿主植物および昆虫に対して毒性を示す毒素デストラキシンを生産する。一方、Fusarium属植物病原菌およびBeauveria属昆虫病原菌ともに毒素であるボーベリシンを生産し、それぞれ宿主植物あるいは昆虫を加害する。これらの毒素はいずれも環状ペプチド構造を有するが、その生合成の分子機構は明らかとなっていない。本研究では、植物病原菌と昆虫病原菌という全く異なる病原体における共通毒素生産の意義および病原性進化との関連を、毒素生合成遺伝子の単離と機能解析を通して分子レベルで明らかにすることを目指す。 本年度は研究計画を達成するために、以下の検討を行った。昆虫病原菌 Metarhizium anisopliaeおよび植物病原菌 Alternaria brassicaeにおいて、次世代シークエンサーによるドラフトゲノム解析を遂行した。シークエンスデータに基づき、Blastサーチによる非リボソーム型ペプチド生合成酵素(NRPS)(環状ペプチド生合成酵素)候補遺伝子のカタログ化を行った。さらに、植物病原菌 Fusarium oxysporumに関しては公共DBを利用し、同様にNRPS候補遺伝子を同定した。それぞれの候補遺伝子内におけるドメイン予測により、さらに、デストラキシン生合成に関与すると考えられるNRPS遺伝子を絞り込んだ。遺伝子機能解析のため、昆虫病原菌M. anisopliaeおよび植物病原菌 A. brassicaeにおいて、形質転換系および遺伝子ノックアウト系の確立を進めた。 以上の検討により、植物病原菌および昆虫病原菌において共通毒素生産に関与すると考えられる候補遺伝子が明らかとなり、次年度に向けて、遺伝子機能解析を遂行する準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究目的および本年度の計画に照らし合わせて、ほぼ計画通りの検討を行い、予想される成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に得られた研究成果に基づき、研究目的である「植物病原菌と昆虫病原菌という全く異なる病原体における共通毒素生産の意義および病原性進化との関連を、毒素生合成遺伝子の単離と機能解析を通して分子レベルで明らかにする」ことを目指して、共通毒素生合成の分子機構解明のため、候補遺伝子の機能解析を進める予定である。その結果、植物病原菌と昆虫病原菌における、病原性進化のメカニズムが明らかになることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の結果を踏まえ、次年度は以下の研究課題を遂行予定である。研究費は、実験遂行のための物品費、成果報告のための旅費および技術職員雇用のための人件費として使用予定である。なお、次年度に使用する助成金148,220円が生じた理由は、本年度の実験計画の進行に伴い計画の一部を次年度に移行させたことによるものであり、下記研究課題について次年度に請求する研究費と合わせて使用する予定である。選抜候補NRPS遺伝子断片を用いた遺伝子ノックアウト(KO)実験((1)遺伝子KOベクターの構築と相同組換えによる遺伝子破壊、(2)組換え体における毒素生産能・病原性検定)遺伝子機能の比較・系統解析・進化学的検討((1)NRPS遺伝子の菌株間における分子系統学的解析、(2)データの統合、考察および応用への提言)
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Research Products
(6 results)