2011 Fiscal Year Research-status Report
根圏効果の視覚化による植物根―微生物相互関係解析手法の開発
Project/Area Number |
23658062
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
信濃 卓郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・生産環境研究領域, 上席研究員 (20235542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤巻 秀 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (20354962)
中村 卓司 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所・畑作物研究領域, 主任研究員 (60399425)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 根圏 / 土壌微生物 / 根分泌物 / メタボローム / メタゲノム |
Research Abstract |
分泌物に該当する複数の低分子化合物を対象として、安定同位体である13Cの取込みをCE-FT-MSを用いて検出可能な技術を確立するために、予め光合成により13CO2を植物体に同化させ、生じた低分子化合物中に含まれる13C/12Cの比率を測定する手法を導入する事により、一つには地上部からどの程度、そしてどのような化合物が積極的に根圏に分泌されているのかを、もともと土壌中に存在する化合物と分別して測定することが可能となった。実際の根圏領域を視覚化するために短半減期である11Cを用いて、11CO2を植物体に同化させ、その根部への分配動向を検出することに成功した。これを利用し、例えば根粒の着生しているダイズでは根粒へ大量の11Cが短時間に運ばれていることが示された。ルーピンとマメ科モデル植物のミヤコグサを利用し、その根圏土壌を水中分画法と空中分画法による採種方法を比較したところ、用いている土壌では水中分画法において植物根の混入がより少なくなることが確認され、さらに実態顕微鏡下で微小な根を除去することで土壌から得られるDNA中に混入する植物根由来のDNAの割合を3%以下に低減することが可能となった。得られた根圏土壌から微生物DNAを採取し、その遺伝子構造を次世代型シーケンサーで解析する手法を導入し、根圏外の微生物構造とは明確に異なることを示した。これらの手法を統合することにより、根圏領域のより厳密な定義とその領域の採取、得られる土壌中の物質動態とそれに対応した土壌微生物の機能的変動を遺伝子レベルで解析するjことがはじめて確立される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同位体が組み込まれた化合物の識別が適切に行われることが求められており、これに関しての達成が確認されたため、次年度の計画が効率的に推進可能であると判断した。また、短半減期の同位体を用いて、根圏への物質移動が現実的に確認できることが土壌系でも認められることから、従来の根圏を根の周辺土壌と考える曖昧な評価ではなく、実際に根からの分泌物が影響を与えている領域をこの手法を用いて評価することが可能になった。 このような手法開発の他に、成果として根の分泌する低分子、高分子(タンパク質)の網羅的開発技術を平行して進めており、無菌的な条件での根の分泌する化合物のデータ解析を進めている。これらのデータは実際に根圏土壌中への分泌が期待されるものであり、土壌中の試料から得られる解析結果との対応付けが可能となった。 以上のように、計画を遂行する上で全体の統合が次年度に求められているが、それに対する複数の技術的な開発がなされたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに根箱を開発し、根分泌物と土壌を分別する作業にとりかかる。これにより、特定された根圏領域周辺での根分泌物の構成内容の解析と、それに応じた根圏土壌微生物の構造的な変動をあきらかにすることが可能となる。また、土壌微生物のRNA遺伝子の取得に取り組み、これが可能となった場合にはより短いタイムスケールでの根圏土壌微生物機能の変動解析が可能にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に開発された分析手法を行うための試薬の購入資金が必要である。また、新たに根箱を作成するための資材費が発生する。研究打ち合わせを行うとともに、計画最終年度のため業績の報告などのための旅費を計上する。根圏土壌微生物遺伝子の解析に利用するPCR用のプライマー作成において、当初予定していた配列数よりも少ない配列で十分な結果が得られることが判明したため残額が発生した。次年度の新たなプライマー設計に利用する。
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[Presentation] 根の世界2011
Author(s)
信濃卓郎
Organizer
サッポロ農学校2011(招待講演)
Place of Presentation
北海道大学
Year and Date
2011.09.15
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