2012 Fiscal Year Research-status Report
後生動物の初期発生を選択的に阻害する海綿動物成分の分子細胞学的、系統発生学的研究
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23658102
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池上 晋 慶應義塾大学, 付置研究所, 教授 (80011980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 洋之 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (20169577)
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Keywords | 若狭湾 |
Research Abstract |
本研究において、棘皮動物イトマキヒトデ胚の発生を阻害する海綿成分を探索した。その結果、一海綿種 Petrosia solida から新規ポリアセチレン化合物を得た。本化合物は 3.1 mg/L の最低有効濃度で選択的に胞胚化を阻害する活性を示した。この活性の重要性に鑑み、本化合物の作用機作を解析することが今後の検討課題となった。 本研究では、ヒトデ胚発生過程において、胞胚期から原腸胚期にかけて作用する海綿成分の作用機作を解明するために、中期原腸胚期に出現する中胚葉性間充織細胞のクロマチン複製時期を検討した。胞胚期初期から差時的に2時間パルスで胚に BrdU を取込ませ、約 90個の間充織細胞が出現する中期原腸胚期まで発生させ、これらの胚(36時間胚)をParaformaldehyde固定し、間充織細胞マーカータンパク質MC5 に特異的に反応するポリクローナル抗体 Shk-T (モルモット)、二次抗体としてAlexa Fluor 488 標識抗モルモット IgG 抗体(ヤギ)、および FITC 標識 BrdU 抗体(ラット)を用いて免疫組織化学染色を施した。染色胚を共焦点レーザー顕微鏡観察することによって、胞胚期における予定間充織細胞は、ほぼすべて受精後 10-12 時間の初期胞胚期にクロマチン複製を行い、原腸陥入を開始する時期には複製が完了することがあきらかになった。この成果の上に立って、原腸胚期における間充織細胞の分化・増殖のメカニズムを解明することが今後の検討課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
後生動物の発生に重要な胞胚化と原腸形成を選択的に阻害する化学物質の作用機作を解析する上で有益な分子細胞学的知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
棘皮動物イトマキヒトデの胞胚化を阻害する新規化合物が得られたので、その作用機作を解析する。また、後生動物全体に共通する初期発生過程の分子細胞学的理解を深化させる本研究の研究目的に沿って、これまで材料として用いてきた棘皮動物イトマキヒトデの胚に固有な分子を見出し、その分子の生成と機能が発生過程にどのような役割を果たしているのかを、これまで明らかにしてきたヒトデ胚発生阻害剤の作用を解析することによって解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度と同様、消耗品を中心とした物品費と、国内を中心とした旅費に研究費を充当する。
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Research Products
(2 results)