2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉村 剛 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40230809)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 食材性シバンムシ / ケブカシバンムシ / 人工飼育 / オオナガシンクイムシ |
Research Abstract |
本研究課題において最も重要な点は、シバンムシ類の人工飼育を行うための十分な生体試料を確保できるかどうかにある。本年度は、古民家解体材からのシバンムシ類の採集を実施するとともに、併せて、近年その被害が増加しつつあるオオナガシンクムシについても人工飼育を試みた。1.食材性シバンムシ類の採集と同定:食材性シバンムシ類の確保を目指し、京都府の古民家解体材からシバンムシ類のものと思われる脱出孔のある部材を採集し、恒温飼育室に保管することによって羽化・脱出する成虫の確保を試みた。その結果、ケブカシバンムシ成虫が2頭採集され、本種の木材害虫としての重要性が確認された。残念ながら死体での採集となったことから、人工飼育への展開は今後の課題となり、現在も引き続いて試料を保管中である。また、全国の文化財関連研究者に対して、シバンムシ類試料提供の依頼を行った。2.オオナガシンクムシ人工飼育法の検討:食材性シバンムシ類の人工飼育に向けた取り組みと併行して、近年その被害が増加しつつあるオオナガシンクイムシの人工飼育法の確立を目指した取り組みを開始した。オオナガシンクイムシ被害材をヒラタキクイムシ用人工飼料(約100立法センチメートル)と共に飼育容器に投入し恒温室で飼育した結果、被害材からの成虫の羽化と人工飼料への穿孔が認められた。このことは、ヒラタキクムシ用人工飼料がオオナガシンクイムシへ適用可能であることを示している。しかしながら、人工飼料からの幼虫の落下が観察されたことから、本種の人工飼育にはより大きな飼料が必要であることが明らかとなった。現在、500立法センチメートルの大きさの人工飼料を用いて飼育を続けているところであるが、成功すれば日本で初めてのオオナガシンクイムシの人工飼育となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で最も重要な点は、いかにして多数の生体試料を得ることができるか、という点である。 残念ながら、生体試料を得ることに失敗したことから、現時点では「(3)やや遅れている」と自己評価せざるを得ない。しかしながら、入手した解体材からケブカシバンムシの発生が認められたことから、研究の方向性および方法については誤りはないと判断された。 一方、日本で初めての試みであるオオナガシンクイムシの人工飼育について、その可能性が見えてきたことは大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続いて、食材性シバンムシ類生体試料の入手を目指した取り組み、および人工飼育法に関する検討を行う。具体的な計画は以下の通りである。なお、既に研究を遂行中のオオナガシンクイムシの人工飼育については、継続して実施する1. ケブカシバンムシが採集された解体材へのトラップの設置と生体試料の採集、並びに新たに入手した解体材における虫孔の詳細な調査とトラップの設置2. 全国の文化財研究者だけでなく害虫駆除業者および古材業者に対してもシバンムシ類の情報・試料提供を依頼。情報提供があった場合は、すぐに対応して採集を実施するとともに発生材の含水率等発生条件を調査3. 生体試料が得られた場合は、ヒラタキクイムシ用人工飼料による飼育を開始
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費(50万円)の使用計画は以下の通りである。1. 物品費(10万円):古材および人工飼料用木材・薬品類の購入代金2. 旅費(33万円):生体試料採集および成果発表のための国内学会参加に関わる国内旅費(20万円:11月に名古屋で開催予定の日本環境動物学会および3月に森岡で開催予定の日本木材学会)、並びに成果発表のための国際学会参加に関わる国外旅費(13万円:8月に韓国で開催予定の国際昆虫学会)3. その他(7万円):上記国内・国際学会参加費
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