2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658147
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長谷川 益己 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00372756)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 空中超音波 / 非接触 / 非破壊評価 / 音弾性 / 応力解析 |
Research Abstract |
超音波を使用した木材の非破壊評価は超音波センサーと材料の界面にカップラントの塗布が必要とある。しかし,カップラントは塗りむらや拭き取りによる作業効率の低下,木材内部へのしみ込みによる測定の不安定さが問題であった。これらを克服するために,本研究課題では空中超音波を使用して非接触な非破壊評価法の開発を目指した。初年度は下記2点について検討し,意義のある研究成果を得た。・木材の空中超音波の計測方法の確立:スギおよびヒノキの空中超音波の伝播速度を測定した。伝播方向は繊維,半径,接線方向とした。センサーの周波数を100から500kHzまで50kHz毎に変化させて伝播速度を測定したところ,250から400kHzまで良好に測定できた。さらにセンサーの周波数帯域を考慮すると350kHzおよび400kHzが最適であることが明らかになった。また,空中超音波の測定可能な距離は繊維方向で10cmまで測定可能であることを確認した。半径,接線方向についてはサンプルの寸法(伝播距離)は10cmのときは,減衰が大きく,測定が難しかった。非接触法(本研究課題)の実験値を従来の接触法と比較して妥当性を検討した。両者は3方向とも1%水準で有意な正相関が得られ,非接触法の伝播速度は接触法によるものと同程度であることが明らかになった。・空中超音波伝播特性に与える木材の物理的性質の影響:初年度は気乾密度に注目し,伝播速度と密度の関係を樹種間,同一樹種の樹幹内で検討した。スギでは非接触法および接触法の両手法で伝播速度は気乾密度と1%有意水準で負の相関関係を示した。ヒノキでは両者に明確な相関関係は見られなかった。 以上より,空中超音波は非接触式で超音波伝播速度計測を可能にする重要なツールであることが明らかになった。これらの研究成果は木材の非接触非破壊評価法の開発の道が拓けたという点で非常に意義があると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
木材において空中超音波の伝播速度が計測できたことは初年度の重要な研究成果であるが,問題点も残されている。空中超音波の伝播方向が繊維方向と一致する場合は,木材試料の寸法(伝播距離)が10cmまで計測が可能となった。しかし,空中超音波を接線および半径方向に伝播させると,寸法が大きくにつれて,超音波の減衰が激しくなり,計測が難しくなった。これは次年度の課題となり,初年度の研究目的である「木材の空中超音波の計測方法の確立」は完全に達成されていない。以上のことから,達成度について「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に生じた問題点の解決した上で,以下の2点について本研究課題を推進していく予定である。・問題点の解決:接線および半径方向の空中超音波の伝播速度の計測方法を確立する。周波数の低い探触子を使用し,木材内部での超音波の減衰を少なくし,計測方法を検討する。・空中超音波伝播特性に与える木材の物理的性質の影響:木材試料の含水率を飽水から繊維飽和点,気乾,全乾と変化させながら,伝播速度に与える影響を検討する。・木材の内部欠損の2次元可視化:木材試料に3方向(繊維・半径・接線)に空洞を作製し,伝播速度と受信波形を解析することで,空洞の判別が可能か検討する。さらに得られたデータをデジタル変換して画像化し,2次元可視化を目指す。 以上をとりまとめて,関連学協会にて2年間の研究成果の発表と情報収集を行うことで,本研究課題である「空中超音波による木材の非接触式非破壊評価法の開発」の実現につなげたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に生じた問題点の解決に向けて情報収集をしていたため,研究遂行が遅れて残額が生じた。残額は少額であり,次年度の物品費と併せて使用する。研究費は次年度の研究課題である(1)空中超音波伝播速度に与える含水率の影響,(2)内部欠損の2次元可視化を遂行する際に必要となる関連物品の経費を物品費から,研究成果の発表および情報収集に必要となる経費を旅費等から,研究成果の査読付きジャーナルへの投稿経費をその他から使用する予定である。
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