2011 Fiscal Year Research-status Report
エタノール発酵責任遺伝子群の新規エピジェネティック制御機構の解明と応用展開
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23658281
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原田 昌彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70218642)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アクチン関連タンパク質 / クロマチンリモデリング / 遺伝子発現 / エピジェネティック制御 |
Research Abstract |
出芽酵母のエタノール発酵能はグルコース濃度環境に応じて厳密に制御される。この現象に関連遺伝子群のエピジェネティクス制御が関与すると予想されているが、その詳細は不明であることから、その機構の解明を目的として研究を行った まず、arp6変異株のエタノール発酵能・グルコース分解能の解析について解析を行った。その結果、低グルコース環境においても、arp6変異株では、TCA回路/呼吸系のほとんどの遺伝子が野生株に比べて抑制され、逆に解糖系遺伝子は活性化を示唆する結果が得られた。標準培地でarp6変異株を培養した際にエタノール濃度の変化が観察された。 また、発酵関連遺伝子の細胞内空間配置とその変化の解析を行った。いくつかの発現変化を示す発酵関連遺伝子について、lacリプレッサー/オペレーターシステムを利用してこれらの遺伝子を可視化して観察するシステムを構築中である。これが完成し次第、グルコース濃度に依存したこれらの空間配置の変化や、arp6変異に伴う変化を解析する。lacリプレッサー/オペレーターのシステムについては、技術的な支援を海外共同研究者であるSusan Gasserより受けた。また、抗GFP抗体を用いた免疫電顕法について、Pavel Hozakに酵母株を送って共同研究を開始した。 さらに、Arp6の発酵関連遺伝子への結合の解析を行った。クロマチン免疫沈降(chromatin immunoprecipitation; ChIP)を用いて、Arp6の発酵関連遺伝子への結合と、グルコース濃度による変化を観察する目的で、作成したArp6抗体の評価を行った。その結果、抗体のArp6への特異的な結合が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出芽酵母のエタノール発酵能の改善は、バイオエタノールの産生向上に大きく貢献できる可能性がある。本研究により、arp6変異株において、低グルコース環境においても、arp6変異株では、TCA回路/呼吸系のほとんどの遺伝子が野生株に比べて抑制され、逆に解糖系遺伝子は活性化を示唆する結果が得られた。また、標準培地でarp6変異株を培養した際にエタノール濃度の変化が観察された。現在は、Arp6がこれらの遺伝子発現のエピジェネティック制御にどのように関わるかについて解析を進めており、lacリプレッサー/オペレーターシステムや、クロマチン免疫沈降(chromatin immunoprecipitation; ChIP)などの方法をこの解析に適応できる目途がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Arp6がこれらの遺伝子発現のエピジェネティック制御にどのように関わるかについて解析を進める。これまでに解析によって、arp6変異によって発現が変化する遺伝子の同定を行い、さらに、lacリプレッサー/オペレーターシステムや、クロマチン免疫沈降(chromatin immunoprecipitation; ChIP)などの方法をこれらの遺伝子の解析に適応させる条件を決定した。そこで、これらの遺伝子の空間配置の変化や、Arp6の結合の変化を詳細に解析する。グルコース濃度、エタノール濃度、温度などを変化させた様々な環境下でarp6変異株を培養し、経時的にエタノール濃度、グルコース濃度を測定する。特に抵グルコース濃度でのエタノール発酵に注目して、解析を行う。さらに、すでに作成している抗Arp6抗体を用いてArp6複合体を精製し、質量分析によって複合体の構成因子を同定する。その際に、グルコース濃度を変化させた条件でも、複合体構成因子の比較を行う。また、これらの構成因子の翻訳後修飾の有無やその種類についても同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養条件による遺伝子の核内配置の変化を解析する過程で、いくつかの遺伝子が核膜孔複合体に結合するという新規な発見があった。これをさらに解析するために、核膜孔複合体に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降法の条件検討が必要となった。そのために他の抗体を用いるクロマチン免疫沈降を実施する時期も遅れた。しかし、適当な条件が既に設定されたことから、次年度に核膜孔複合体抗体を用いたクロマチン免疫沈降を他の抗体を用いた実験に、当該研究費を用いる。
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Research Products
(23 results)