2012 Fiscal Year Research-status Report
エタノール発酵責任遺伝子群の新規エピジェネティック制御機構の解明と応用展開
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23658281
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原田 昌彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70218642)
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Keywords | 細胞核 / クロマチン / 遺伝子発現 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
エピジェネティクスは、環境に適応した遺伝子発現において重要な役割を果たしている。出芽酵母のエタノール発酵能はグルコース濃度環境に応じて厳密に制御される。この現象に関連遺伝子群のエピジェネティクス制御が関与すると予想されているが、その詳細は不明であった。細胞核内の遺伝子空間配置がエピジェネティクス制御の分子基盤であることが明らかにされ、申請者はこの経路にArp6が必要であることを見出した。興味深いことに、出芽酵母のarp6変異株では、低グルコース環境下でもエタノール発酵能が抑制されないことが示された。Arp6による遺伝子の核内配置がエタノール発酵能に及ぼす影響を解析したところ、arp6変異株における遺伝子の空間配置の異常が観察された。またarp6変異株ではH2A.Zのクロマチンへの取り込みが低下し、この現象も当該遺伝子群の発現制御に関わることが示された。さらに、Arp6が核膜孔複合体と相互作用することを示し、Arp6による新規な遺伝子発現制御機構の存在が示唆された。本研究の遂行には、核内の遺伝子配置観察において先駆的な業績のあるProf. Susan Gasser(スイス)、および核内のアクチンファミリーの電子顕微鏡観察で実績のあるProf. Pavel Hozak(チェコ)を海外研究協力者とする研究体制をとった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Arp6による遺伝子の核内配置がエタノール発酵能に及ぼす影響の解析が進み、その分子機構についての情報が得られた。例えば、arp6変異株ではH2A.Zのクロマチンへの取り込みが低下し、この現象も当該遺伝子群の発現制御に関わることが明らかにされた。さらに、Arp6が核膜孔複合体と相互作用することを示し、Arp6による新規な遺伝子発現制御機構の存在を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析から、Arp6が遺伝子の核膜近傍への空間配置に必要であることが明らかにされた。またArp6と核膜孔複合体との相互作用も示された。したがって、マイクロアレイで検出された発酵関連遺伝子の発現変化には、Arp6と核膜孔複合体との相互作用を基盤とした遺伝子の核内空間配置の変化が寄与している可能性がある。そこで、lacリプレッサー/オペレーターシステムを利用してこれらの遺伝子を可視化して観察することにより、グルコース濃度に依存したこれらの空間配置の変化や、arp6変異に伴う変化を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Arp6と協調して機能するヒストンタンパク質解析を実施する過程で、Arp6がクロマチンに加えて核膜孔複合体と協調してアルコール発酵関連遺伝子の制御に関与するとの新規発見があった。これによって、出芽酵母変異株を作成・解析の追加実験を行う必要が生じた。次年度は、Arp6と核膜孔複合体との相互作用解析による遺伝子空間配置解析実験のための消耗品費(一般試薬類、講師試薬類、培養試薬類)として700,000円を、またこれに関連した研究成果報告のための国内旅費に100,000円を支出する。
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Research Products
(25 results)