2011 Fiscal Year Research-status Report
樹状細胞に高発現する小胞体膜局在性トランスポーターの機能と免疫系における役割
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23659085
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
湯浅 博昭 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20191471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 勝央 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50315892)
太田 欣哉 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90448704)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | トランスポーター / 樹状細胞 / 小胞体 / 免疫 / 抗アレルギー薬 / 創薬標的 |
Research Abstract |
免疫制御に関わる樹状細胞に高発現し,小胞体膜局在性を示す新規トランスポーターとして見出されたVOAT1には,免疫系における重要な役割が予想される.本研究は,その解明による免疫系関連研究の新局面の開拓,創薬・創剤の新基盤の提供を目指し,VOAT1の輸送機能解析等に取り組むものである.ヒトVOAT1遺伝子を導入し,一過性に発現させたHEK293細胞を用い,蛍光性プローブ基質として見出された5-AF(5-aminofluorescein)の細胞内(小胞体部位)局在集積性に関する一連の蛍光画像評価解析を行った結果,まず,抗アレルギー薬として知られるtranilastやprankulastの他,indomethacin他の抗炎症薬等が強い阻害効果(集積性低下)を示すことが見い出された.さらに範囲を広げて多様な薬物等の影響を検討した結果,抗アレルギー作用性物質群や多様な生理的作用の予想されるフラボノイド群のなかにも,阻害効果を示すものが見い出された.これらの結果は,VOAT1の炎症ないし免疫反応への関与及び抗アレルギー薬の薬効への関与の可能性を強く示唆するものである.また,生理的基質の特定及び役割の解明への手がかりとなる情報として役立つものと期待される.一方,小胞体内へのVOAT1介在性基質集積が定量的輸送活性評価には不十分であるという問題があり,その克服のため,酵母のIst2p(細胞膜タンパク質)由来の細胞膜局在化配列(Ist2p/Ct)の付加によりVOAT1を細胞膜に強制局在化させ,十分な基質集積が可能な細胞内取込に働かせることを試みたが,成功には至っていない.引き続き,他の細胞膜局在化配列の利用,細胞膜局在化に働く補助因子タンパク質の利用,VOAT1の小胞体膜局在化配列を特定し不機能化する手法等についても検討を進めているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VOAT1の機能解析を進展させ,特異的に作用する薬物等を絞り込むことができた.炎症ないし免疫反応関連の薬物等が多く,その種の生体反応へのVOAT1の関与の可能性が強く示唆されると同時に,生理的基質の特定及び役割の解明へと研究を進展させるうえで大きく役立つことが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
炎症ないし免疫関連の生体内因性物質としては,脂質性メディエーター類や関連の脂肪酸等が予想される.この点に着目しながら,引き続き,VOAT1の機能解析を進める.当面は,VOAT1の一過性発現系細胞での5-AF(蛍光性プローブ基質)の細胞内(小胞体部位)集積性への効果を指標とした検討を続けていくことにする.また,モデル樹状細胞での同様な5-AF集積性評価も検討課題とする.VOAT1の細胞膜局在化の試みについても,継続予定である.Ist2p/Ct以外の細胞膜局在化配列の利用,細胞膜局在化に働く補助因子タンパク質の利用,VOAT1の小胞体膜局在化配列を特定し不機能化する手法等について検討していくことにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は,概ね当初の計画に沿い,主にVOAT1の機能解析のための輸送実験及びVOAT1の細胞膜局在化手法構築のための実験で使用する試薬類(細胞培養用及びサンプル処理用の試薬他)及び器具類(サンプルチューブ他)の購入のための消耗品費に当てる予定である.また,情報収集のための調査・研究旅費等にも一部を当てる予定である.
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