2011 Fiscal Year Research-status Report
栄養物質トランスポーター分子がマウス小脳皮質出生後形態形成において担う機能の解析
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23659103
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
阿部 弘之 帝京大学, 医学部, 講師 (80309335)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | nutrient transporter / PiT1 / PiT2 / GLUT1 / cerebellum |
Research Abstract |
1.研究実績の具体的内容 Vivo-Morpholino antisense oligonucleotide(vMO)を用い、無機リン酸トランスポーターPiT2のタンパク質発現を抑制することを試みた。vMOは、培養細胞培養上清に添加するだけで細胞内に取り込まれ、標的mRNA分子に相補的に結合して翻訳を抑制する。まず、マウスPiT2 mRNA特異的vMO(vMOmPiT2-1)の作用を、マウス線維芽細胞株NIH-3T3を用いて検討した。NIH-3T3の培養上清へ、vMOmPiT2-1または陰性対照vMO(standard control vMO)を、50μMの濃度で添加し、3日後に抗マウスPiT2抗体を用いて蛍光染色を行った。この際、対比染色としてHoechst 33342(核)およびCellTrace BODIPY methyl ester(CTBPY)(細胞内膜構造)で染色した。その結果、以下の所見を得た:a. vMOmPiT2-1を添加した場合、培養プレートに付着している細胞の数が極めて少なく、円形の、明らかに異常な形態の細胞が容易に見いだせた。b. vMOmPiT2-1を添加した場合の方が、CTBPY染色強度が明らかに強かった。c. 抗マウスPiT2抗体による染色強度は、CTBPY染色強度で補正したところ、vMOmPiT2-1添加した場合の方が弱くなった。d. 抗マウスPiT2抗体による染色では、vMOmPiT2-1添加した場合に、細胞質内に顆粒状の染色がしばしば見られた。2.研究実績の意義、重要性等 vMOmPiT2-1によりマウスPiT2発現量が抑制し得ること(結果c)、その細胞内局在が変化すること(結果d、新知見)さらに、細胞増殖や生存、または接着性が低下すること(結果a、新知見)が判明した。これらの結果は、PiT2分子の持つ新しい機能を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画の目的は、(1)申請者らが新生仔マウス小脳皮質外顆粒細胞層において見出したグルコースおよび無機リン酸トランスポーター分子の特徴的局在に着目し、(2)新生仔マウス小脳皮質形態形成過程において、当該トランスポーター遺伝子発現を人為的に変化させることにより、(3)出生後小脳皮質形態形成過程において当該栄養物質トランスポーター分子が果たす機能の有無、さらにはそうした機能の実態を明らかにすることである。平成23年度の研究により、マウスPiT2 mRNA特異的Vivo-Morpholino antisense oligonucleotide(vMOmPiT2-1)を用い、無機リン酸トランスポーターPiT2のタンパク質発現様式を変化させることができることを、培養細胞株を用いて確認した。さらに、vMOmPiT2-1存在下に培養した場合、細胞数が激減することを見出した。これらの結果から、vMOmPiT2-1を用いたアプローチが、少なくとも培養細胞を用いたPiT2の機能解析に有効であることが判明した。これらの結果は、今後、新生仔マウス小脳スライス培養、さらに、新生仔マウス小脳への直接注入することにより、小脳皮質形態形成におけるPiT2の関与について研究していくうえで、重要な基盤となると思われる。 一方、他の解析対象分子、無機リン酸トランスポーターPiT1、グルコーストランスポーターGLUT1については、解析を始めることができなかった。この点を考慮すると、現在までの達成度は"やや遅れている"とすることが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.マウス無機リン酸トランスポーターPiT1およびグルコーストランスポーターGLUT1特異的Vivo-Morpholino antisense oligonucleotide(vMO)を用いた解析の開始:PiT2についての解析と同様のアプローチを、PiT1、GLUT1についても開始する。まず、培養マウス細胞株を用いてその効果の確認を行う。なお、vMOの使用は、平成23年度交付申請書には記載していないが、レンチウイルスなどウイルスベクターを用いる場合に比べ、作成や取扱いが非常に簡便であること、幅広い種類の細胞に取り込まれることなどを考え、まず最初に使用することにした。2.新生仔マウス小脳のスライス培養への、nutrient transporter特異的vMOの適用:生後2日目の新生仔マウスより小脳を無菌的に摘出し、ビブラトームを用いて、定法に従ってスライス培養を行う。その培養上清中に、培養細胞株を用いて効果を確認したnutrient transporter特異的vMOを添加し、以後1週間から10日程度培養を継続し、経時的に小脳皮質の形態学的観察(詳細は平成23年度交付申請書に記載した通り)を行い、変化を探索する(スライス培養中でも、小脳皮質の形態形成は進行する)。なお、本スライス培養実験は、平成23年度交付申請書には記載していないが、in vivoでの新生仔マウス小脳への直接注入は、技術的に容易ではないことから、vMOを確実に到達させることのできるスライス培養を用いた実験をまず行うことにした。3.最終的には、成23年度交付申請書に記載した通り、新生仔マウス小脳に対し、vMO溶液を直接注入した後飼育を継続し、経時的に小脳を摘出して小脳皮質の形態学的観察を行い、変化を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用は、主として以下の事項に関して行うことを計画している:(1)PiT1およびGLUT1特異的Vivo-Morpholino antisense oligonucleotide(vMO)の合成と活性の確認:vMO購入経費、マウス細胞株培養経費、抗マウスPiT1、GLUT1抗体購入経費(2)新生仔マウス小脳スライス培養:マウス購入・維持経費、ビブラトーム関係消耗品経費、培養用プラスチック器具経費など(3)スライス培養小脳の形態学的観察:組織化学実験用経費(蛍光標識2次抗体など)(4)一般的な生化学用試薬(ウエスタンブロット実験など)(5)旅費など:学会出張旅費なお、次年度に使用する予定の研究費がある理由だが、申請者の所属する研究室のあった帝京大学板橋キャンパスにおいて平成24年1月から、4月上旬まで、新しい大学棟への研究室・実験室の総移転があったため、その期間中の動物実験などが行えなくなったため、実験も一旦中止としたことが主たる理由である。
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Research Products
(1 results)