2012 Fiscal Year Research-status Report
栄養物質トランスポーター分子がマウス小脳皮質出生後形態形成において担う機能の解析
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23659103
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
阿部 弘之 帝京大学, 医療技術学部, 講師 (80309335)
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Keywords | nutrient transporter / PiT1 / PiT2 / GLUT1 / cerebellum |
Research Abstract |
<研究実績の具体的内容> 平成24年4月に、本研究計画申請時所属(帝京大学医学部解剖学講座)より、現所属へ異動となり、独立した立場で新しい実験室を設営・運営させて頂くこととなったが、異なったキャンパスへの異動であったため、平成24年度は主として研究環境の立ち上げ作業を行うこととなった。帝京大学の真摯なサポートに依り、現在では本研究計画遂行に必要な研究環境は整い、実験を再開することが出来た。 以下、具体的な進捗状況について述べる。(a) 動物細胞培養に必要な実験環境が整ったため、トランスポーター分子発現抑制のために動物に投与するVivo-Morpholino antisense oligonucleotide (vMO)の効果を、培養マウス細胞株を用いて、細胞レベルで確認することが可能となった。(b) 本研究計画における最も重要な実験として、新生仔マウス小脳へのvMO投与があるが、そのために必要な実験設備(実体顕微鏡、LED照明装置、33G注射針を装着した微量注入用ハミルトンシリンジ、マイクロインジェクターおよびマニピュレータ)の準備が整った。現在、生体組織染色用の色素(Evans Blue)を用いて、新生仔マウス小脳への微量注入法の検討を行うため、マウスの交配中である。また、新生仔マウスへのvMO投与の際には、なるべく非侵襲的な麻酔法を用いる必要があるが、低体温麻酔を用いることを考え、文献情報を参考に、麻酔条件の検討を併せて開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画の目的は、(1)申請者らが新生仔マウス小脳皮質外顆粒細胞層において見出したグルコースおよび無機リン酸トランスポーター分子の特徴的局在に着目し、(2)新生仔マウス小脳皮質形態形成過程において、当該トランスポーター遺伝子発現を人為的に変化させることにより、(3)出生後小脳皮質形態形成過程において当該栄養物質トランスポーター分子が果たす機能の有無、さらにはそうした機能の実態を明らかにすることである。 平成23年度の研究により、マウスPiT2 mRNA特異的Vivo-Morpholino antisense oligonucleotide(vMOmPiT2-1)を用い、無機リン酸トランスポーターPiT2のタンパク質発現様式を変化させることができることを、培養細胞株を用いて確認した。さらに、vMOmPiT2-1存在下に培養した場合、細胞数が激減することを見出した。これらの結果から、vMOmPiT2-1を用いたアプローチが、少なくとも培養細胞を用いたPiT2の機能解析に有効であることが判明している。 平成24年度は、vMOmPiT2-1を新生仔マウス小脳へ投与し、小脳皮質発達への影響を形態学的に検索する計画であったが、研究代表者の新しい研究室立ち上げ作業のため、実施することができなかった。しかしながら、”研究実績の概要”に記載した様に、本研究計画の遂行に必要なハード面の研究環境を立ち上げることができ、現在、新生仔マウスを用いた動物実験に取り掛かるところであるが、細胞レベルで足がかりとするデータが既に得られていることを考慮すると、現在までの達成度は”やや遅れている”とすることが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.マウス無機リン酸トランスポーターPiT1およびグルコーストランスポーターGLUT1特異的Vivo-Morpholino antisense oligonucleotide(vMO)を用いた解析の開始:PiT2についての解析と同様のアプローチを、PiT1、GLUT1についても開始する。まず、培養マウス細胞株を用いてその効果の確認を行う。なお、vMOの使用は、平成23年度交付申請書には記載していないが、レンチウイルスなどウイルスベクターを用いる場合に比べ、作成や取扱いが非常に簡便であること、幅広い種類の細胞に取り込まれることなどを考え、まず最初に使用することにした。 2.マウス無機リン酸トランスポーターPiT1、PiT2およびグルコーストランスポーターGLUT1特異的vMOの新生仔マウス小脳への投与と、その小脳皮質発達への影響の形態学的解析:小脳への注入時には、vMO溶液にEvans Blue色素を添加し、注入部位が実体顕微鏡下に同定できるようにする。形態学的解析にあたっては、Evans Blueに染色された部位(vMOが注入された領域)と、周囲の非染色領域(vMO非注入領域)を比較し、微細な形態学的変化を見落とさないようにする。 3.平成23年度交付申請書には、新生仔マウス小脳におけるin situ hybridization法によるPiT1、PiT2、GLUT1遺伝子発現の検索を行うことを記載したが、vMOはタンパク質の翻訳を特異的に抑制することによって標的分子の発現を抑制し、mRNAを標的とはしない(標的遺伝子のmRNA発現量を抑制しない)。従って、in situ hybridization法によって得られる遺伝子発現についての情報は、本研究計画には必須ではなくなったと考えられ、研究の効率化のため、実施しないこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用は、主として以下の事項に関して行うことを計画している: (1)PiT1およびGLUT1特異的Vivo-Morpholino antisense oligonucleotide(vMO)の合成と活性の確認:vMO購入経費、マウス細胞株培養経費、抗マウスPiT1、GLUT1抗体購入経費、蛍光標識2次抗体購入経費など(2)新生仔マウス小脳へのvMO投与:マウス購入・維持経費など(3)vMO投与新生仔マウス小脳の形態学的観察:組織化学実験用経費(組織包埋およびプレパラート作製用試薬・物品、ヘマトキシリン-エオジン染色、ニッスル染色、ミエリン髄鞘染色、神経細胞の形態解析用特異抗体、蛍光標識2次抗体など)(4)一般的な生化学用試薬購入経費(ウエスタンブロット実験など)(5)旅費など:学会出張旅費 なお、次年度に使用する予定の研究費があるが、これは、申請時に所属していた研究室のあった帝京大学板橋キャンパスにおいて、平成24年1月から4月にかけて、新しい大学棟への研究室・実験室・動物実験施設の総移転があったため、その期間中の実験(動物実験を含む)が行えなくなったこと、および、平成24年4月に現所属へ異動し、新しい研究室の立ち上げ作業にあたってきたことが主たる理由である。
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