2011 Fiscal Year Research-status Report
生体組織メゾスケール3次元解析のためのFIB連続切削SEM表面組成観察法の最適化
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23659104
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中村 桂一郎 久留米大学, 医学部, 教授 (20172398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 准教授 (00258401)
東 龍平 久留米大学, 医学部, 技能職員 (70569516)
都合 亜記暢 久留米大学, 医学部, 嘱託職員(技能) (80569517)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | FIB/SEM / FIB/SEM tomography / BFI / 超微構造観察 / 3次元構造解析 / 電子顕微鏡 / ミトコンドリア / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
本研究は、ナノテクノロジーの技術革新により実現した新しい概念の顕微観察装置であるFIB/SEMの生命科学分野の研究応用への最適化を目的として遂行している。材料系・半導体研究分野で注目されているFIB/SEMの医学生物学研究への応用のために、1)走査型電子顕微鏡観察法の改良(照射ビームへのBDの導入)、および、2)樹脂包埋生物試料の切削断面における断面観察のための試料作製法(固定、ブロック染色等)開発を柱として、これらを適切に連携・総合することにより、組織・細胞の的確な3次元的微細構造解析を可能とする技法を開発しつつある。時間と熟練した技術・労力が必要であった超薄連続切片観察と同等の画像の半自動取得を可能とし、切片作製時の変形等のない連続画像からは定量性にすぐれた3次元形態情報が得られるようになった。これまでに消化器系(消化管、肝臓、膵臓)、泌尿器系(腎臓、尿管、膀胱)、循環器系(心筋、血管、リンパ管)、生殖器系(精嚢)、神経系(海馬)、運動器系(骨・軟骨、腱)および、皮膚においてデータを得ており、医学生物学研究においてポストゲノム次元での生命現象理解の大きなbreakthroughとなる萌芽と考えられるこれらの成果は、研究成果欄に挙げるように、順次、日本解剖学会、日本顕微鏡学会をはじめとする学会/研究会において公表し、また、学術論文としてMicron等発表し、さらに引き続き実験データのまとめおよび発表準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最新の顕微技術を駆使した次世代電子顕微鏡であるFIB/SEMの医学生物学研究への応用の最適化を目指す本研究は、当初予想しなかった成果を挙げており、これまでの研究成果は、すでに国内外の学会において公表し、学術論文として発表している。中でも、直径30nm程度のミトコンドリアのcristae junctionの証明、および、間葉組織中に分布する厚さ50nm以下の極めて扁平なシート状突起をもつ細胞の形態をはじめて明らかにしたことは特記するに値する。いずれも生体組織に普遍的に存在し、機能研究に重要な形態情報であるにもかかわらず、これまで明確でなかった構造であり、期待以上の成果が得られた理由は、対象の構造とサイズが、これまでTEM、SEM、共焦点レーザー顕微鏡いずれの方法においても同定が難しかったことにあると考えられる。その他、新たに開発した、骨・軟骨・靭帯の超微形態をそのまま観察できる手法により、これまでは極めて困難であった硬組織およびその周辺で機能する細胞の形、分布様式、周囲の細胞および細胞外基質との関連、動態等の観察が実現できることが明らかとなってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本装置は、試料作成法の難易度が低く、透過型電子顕微鏡(TEM)レベルの高解像度をもって、走査型電子顕微鏡(SEM)ひいては光学顕微鏡レベルの広範囲の観察を可能とし、医学生物学研究においてポストゲノム次元での生命現象理解の大きなbreakthroughとなると期待される。1)皮膚真皮、間葉組織中に分布する線維芽細胞の細胞間相互関係と組織構築の解析におけるFIB/SEM法の最適条件の検討により、末梢組織中の生体防御・免疫系細胞、組織幹細胞のニッチ等の細胞逐次型解析が可能となり、昨今、Romaniaの研究グループにより注目されている細胞群とは異なる新たな間葉組織像を明らかにする可能性を追求する。2)ミトコンドリアのクリステ構造に注目した、肝細胞、心筋細胞、骨格筋線維、脂肪細胞、ステロイドホルモン分泌細胞等の各種組織細胞の解析を行い、最近注目されているミトコンドリア機能との関連について解析する。3)コネクトーム解析として、海馬ニューロンの時系列変化について、詳細な検討を行う。また、4)FIB/SEM法により得られた連続画像データの精密計測のための技術的問題点の把握とその解決の基盤となる情報を収集し、さらに、観察対象組織の特性を勘案したFIB/SEM観察のための試料作製・加工方法の検討・最適化を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、すべての対象について、FIB/SEM所見が基本であり、本装置を適切に稼働させるための消耗品の購入、および、学術情報交換、研究打合せのための出張旅費として、23年度と同様の研究費を計上する。私学助成により申請者が所属する研究施設に設置された本装置のうち、SEM機能部分は当該施設がの維持・管理している。次年度研究費は、本装置の特徴であり、本研究に特化した、FIB切削装置の稼働および関連実験に必要なGaガス、および、高感度検出器などの消耗部品の維持・管理に充当する。
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Research Products
(22 results)