2012 Fiscal Year Annual Research Report
心臓病の増悪を防止する機能分子としてのβB1-クリスタリンの新たな役割の解明
Project/Area Number |
23659179
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Research Institution | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
Principal Investigator |
阪本 英二 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40291067)
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Keywords | 1心臓病 |
Research Abstract |
最終年度には、主として以下2つの成果を上げた。 (1)βB1-クリスタリン単独ハムスターの系統の作出:昨年度に引き続き、BIO14.6と正常ハムスターとの交配を進めた。第3世代で得られた♂と♀数匹のβB1-クリスタリン単独ハムスターをさらに交配させることで、最終的にβB1-クリスタリン単独ハムスターを♂と♀共に安定的に得ることに成功した。 (2)BIO14.6におけるβB1-クリスタリンの遺伝子変異の解明:BIO14.6のβB1-クリスタリン遺伝子のゲノム領域をPCRで増幅した。その塩基配列を決定したところ、βB1-クリスタリンの第3イントロンの開始部分(splice donor site)にGからAへの点突然変異を見出した。次に、この点突然変異がmRNAのスプライシングにどのような影響を及ぼすかをエクソン・トラッピング実験で検証した。すなわち、変異が見出されたイントロンと隣接するエクソンを含むゲノムをpSPL3ベクターにクローニングし、培養細胞にトランスフェクションした。培養細胞から抽出したRNAからcDNAを合成し、pSPL3ベクター内のエクソン配列に対応するプライマーセットでRT-PCRを行った。すると、正常ハムスター由来の第3エクソンはスプライシングされたが、BIO14.6由来の第3エクソンはスプライシングされなかった。以上のことから、BIO14.6の生体内でβB1-クリスタリンが欠損する遺伝的原因は、そのゲノムの第3イントロン開始部分におけるGからAへの点突然変異によるスプライシング異常であると考えられた。 以上まとめると、本研究によりβB1-クリスタリン単独ハムスターの系統が確立された。この新しい疾患モデル動物の誕生により、B1-クリスタリンの機能という医学のフロンティアを切り開くことが可能になった。
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