2012 Fiscal Year Research-status Report
人工多能性幹細胞由来自己反応性リンパ球を用いた自己免疫疾患霊長類モデルの開発
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23659201
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
伊藤 靖 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (90324566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小笠原 一誠 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20169163)
石垣 宏仁 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90432301)
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Keywords | iPS細胞 / 霊長類モデル / 自己免疫疾患 / 免疫学 / 病理学 |
Research Abstract |
自己免疫疾患の病態解明と治療法開発のために、通常ならば胸腺で消去され、末梢リンパ組織には存在しない自己反応性Tリンパ球をカニクイザルiPS細胞から誘導することを試みた。 カニクイザルの線維芽細胞、末梢血Tリンパ球にレトロウイルスベクターを使用し山中4因子(c-myc、Oct3/4、Klf4、Sox2)を導入、iPS細胞を作製した。これらのiPS細胞を免疫欠損マウスに移植し後、形成された腫瘤から組織切片を作製し、顕微鏡的に奇形腫であることを確認した。この結果は、樹立したカニクイザルiPS細胞が三胚葉のいずれの細胞にも分化可能であることを意味し、作製したiPS細胞の多能性が証明された。 これらのカニクイザルiPS細胞をbone morphogenetic protein (BMP) 4を加えて培養し、embryoid bodyを作製した。次にフィーダー細胞上で、stem cell factor (SCF)及びvascular endothelial growth factor (VEGF)を加えて培養を続け、CD34陽性細胞を得た。蛍光標識抗体とフローサイトメーターを用いて培養細胞中10%程度の細胞がCD34陽性であることを確認し、昨年度の実験より誘導効率が改善した。この細胞は造血幹細胞に類似した性質を有することが期待される。 生体内でのCD34陽性細胞の造血能を確認するため、CD34陽性細胞をセルソーターで分離後、放射線を照射したマウスの血管内あるいは骨髄内に移植した。移植後経時的に採血し、蛍光標識抗体でサル及びマウス主要組織適合抗原複合体MHCクラスI分子、CD45分子を染色し、フローサイトメーターで解析したが、サル由来の細胞は検出されず、生着しなかったと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
iPS細胞からCD34陽性の造血幹細胞類似の細胞の誘導に成功し、昨年度より誘導効率が向上した。しかし、Tリンパ球への分化には成功していない。また、カニクイザルCD34陽性細胞をマウスに移植しても、生着と血液細胞への分化は確認されていない。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究を行っている東京大学中内啓光教授の研究室では人のTリンパ球からiPS細胞を作製し、その細胞を再度分化させTリンパ球を誘導することに成功しているので(Cell Stem Cell Vol.12, pp.114-126)、その条件をもとにサルのiPS細胞に最適化したTリンパ球誘導条件を決定する。マウス生体内ではTリンパ球への分化誘導が成功しなかったため、再度in vitroでの分化誘導を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
iPS細胞からTリンパ球を誘導するためにサイトカインと細胞培養試薬が必要となる。また、分化の確認のために蛍光標識抗体を用いて細胞を染色し、フローサイトメーターを用いて、細胞表面分子の発現を解析する。誘導したTリンパ球の自己反応性をサルの末梢血を用いて、混合リンパ球反応を行い、アイソトープを用いた増殖反応測定、ビーズアレイを用いたサイトカイン測定により細胞の反応性を確認する。その後、カニクイザルに細胞を移植し、症状を観察する。定期的に採血し、細胞の生着、炎症反応の生化学的解析を行う。サルの飼育費も必要となる。
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Research Products
(4 results)