2012 Fiscal Year Research-status Report
致死的疾患に罹患した高齢者に対する適切なインフォームドコンセントの阻害要因の検討
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23659264
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
明智 龍男 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80281682)
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Keywords | 超高齢化社会 / がん / インフォームドコンセント / 同意能力 |
Research Abstract |
後方視的調査の結果、平成23年4月から平成24年3月までに名古屋市立大学病院精神科に依頼になった433名の患者のうち治療同意能力に問題点がみられた12名の患者に対して、後述する改訂版判断能力評価用構造化面接(Structured Interview for Competency and Incompetency Assessment Testing and Ranking Inventory-Revised: SICIATRI-R)を施行していた。12名の患者はすべて60歳以上であり、最も頻度の高かった施行理由は、抗がん治療に対しての理解度の評価であり(8名)、それに治療拒否(2名)が続いていた。精神医学的な診断はせん妄が6名と最も多く、その他は、うつ病(2名)、精神発達遅滞(2名)、認知症(1名)、アルコール依存(1名)であり、全体で7名に意思決定能力障害があると判断された。12名ともにSICIATRI-Rの施行に際して大きな問題はなかったが、わが国の高齢がん患者に実施する際には、回復願望や診断病名の記憶などに際して若干の修正が望まれると考えられた。 SICIATRI-R:北村らによりわが国で開発された同意能力評価のための半構造化面接である。本面接では、同意権限の理解、同意不同意の選択の明示、判断の他者への委譲がないこと、期待できる利益に関する理解、予測できる危険に関する理解、代替手段に関する理解、無治療から予測できる危険に関する理解、無治療の場合に期待できる利益に関する理解、回復願望、病的決定要因の有無、病識・洞察に関して評価を行い、同意能力のレベルを5段階に分類するものである。20分程度で施行可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
やや遅れていたが、血液がん患者を対象とした研究は順調に進捗しており、最終的には予定していた計画を達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、名古屋市立大学病院血液内科に入院となった65歳以上のがん患者(悪性リンパ腫と多発性骨髄者の入院患者でがん告知を受けた者)を対象に本研究を継続する。具体的には、対象者に本研究に関しての説明を行い、同意が取得できた場合には、原則として依頼から1週間以内に主治医に対して改訂版告知内容調査票(Disclosure Content Check List-Revised :DCCL-R)を用いて説明内容についての聴き取り調査を行い、説明内容が十分か否かを評価する。本調査内容を参考にしながら、患者に対して、修正されたSICIATRI-Rを施行し、同意能力に関して検討する。あわせて、患者の精神症状として、Mini Mental Examination (MMSE)を用いて認知機能障害の程度を評価するとともに、PHQ-9を用いてうつ病の有無の評価を行う。サンプリングは連続的に行い、最終的な目標症例数は50名とする。 Disclosure Content Check List-Revised :DCCL-R 主治医が、患者に説明した医療行為の内容を記載するための調査票である。主治医の説明した内容として、決定権の保有、決定の依頼、治療の推薦、治療から予想できる危険の説明、治療から期待できる利益の説明、代替手段の説明、無治療から予測できる危険の説明、無治療の場合に期待できる利益の説明、病名告知の状況について調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の研究を予定通り遂行するために、引き続き、適切な研究助手(例:看護師免許の保有者)等を雇用することで、研究対象となる患者の連続的なサンプリングや、研究を実施する具体的な時間のコーディネーション等が円滑にすすむよう配慮する。また、SICIATRI-Rの実施結果の解釈および研究結果の議論のために主として国内の研究機関等で研究打ち合わせを行う予定である。なお、主として研究の遅れのために発生した繰越金に関しては、本年度より一層研究を遂行するために研究助手の雇用等に充てる予定である。
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