2011 Fiscal Year Research-status Report
赤血球によるケモカインの吸着と放出のメカニズムに関する研究
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23659292
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
萱場 広之 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70224706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茆原 順一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80197615)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 赤血球 / Duffy抗原 / ケモカイン / 炎症 / アレルギー |
Research Abstract |
平成23年度には、以下の検討を行った。【1】、赤血球内にRANTESが蓄積されていることを確認した。【2】、蓄積されているケモカインの定量では、赤血球200μlに蒸留水300μlを加えて赤血球を溶血させて測定した。溶血検体では溶血前検体の数倍以上の数値を示した。健常人では溶血前178.5±166.2pg/ml、溶血後1120±529.8 pg/mlであった。【3】、ケモカイン蓄積が赤血球細胞性状(形状、浸透圧膜抵抗性)に与える影響では、特に大きな変化はなかったが、詳細は今後検討が必要である。【4】、赤血球を異なる条件下で一定時間培養し、pH、浸透圧、糖濃度、温度、溶血の度合い、などの種々の条件下で赤血球内および上清中のケモカイン濃度測定を予定したが、これは未だすべては検討できていない。赤血球の浸透圧膜抵抗性はpH低下によって低下することが確認された。【5】、赤血球を様々な濃度のRANTES存在下で培養したところ、培養直後から赤血球内RANTESの上昇があり、逆に上澄み中RANTES濃度の低下がみられた。しかし、24時間後には上澄み中濃度は再上昇し、これは赤血球の膜機能の障害が進んだことによって一旦赤血球に吸収されたRANTESが逸脱したためと考えられた。【6】、Duffy抗原の発現量がケモカイン蓄積量やケモカイン吸着力とどう関係するのか検討するであったが、Duffy 抗原が本当にRANTES吸着の門戸になっているかの確認が先との判断から、Duffy抗原ブロッキングペプタイドを購入し、その効果を見る予定である。【7】、炎症モデルにおける血清および赤血球内ケモカイン濃度の炎症作成後の経時変化をラット(SD)を用いた検討は、動物モデル作成とケモカイン測定まで行ったが、アッセイ系に問題が残った。動物実験系については計画の見直しが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、赤血球がケモカインを吸着し放出するメカニズムの解明、第二に臨床疾患と赤血球内ケモカインの関連を検討である。平成23年度は以下の7項目の検討を行った。項目ごとに達成度評価と理由を記す。評価は(1)当初の計画以上に進展、(2)概ね順調に進展、(3)やや遅れている、(4)遅れている、とした。【1】赤血球内にDuffy抗原親和性ケモカインが蓄積されていることの確認:達成度(2)<理由>RANTESの蓄積を確認した。【2】蓄積ケモカインの定量:達成度(2)<理由>RANTESの定量を行い種々の条件下で赤血球内への取り込みなどの検討ができた。【3】ケモカイン蓄積が赤血球細胞性状に与える影響:達成度(2)<理由>赤血球形態をフローサイトメトリーで検討できた。【4】赤血球を異なる条件下で一定時間培養し、赤血球内および上清中のケモカイン濃度を測定:達成度(2)<理由>培養時間、培地内中RANTES濃度、培養温度などを変えて検討できた。5】赤血球をRANTES存在下に培養し、赤血球内にRANTESが蓄積される量を時間とRANTES濃度を変数として分析する:達成度(2)<理由>【4】に同じ。【6】Duffy抗原の発現量とケモカイン蓄積量やケモカイン吸着力の関係の検討:達成度(3)<理由>Duffy抗原発現量と疾患の関係検討中だが、一定の傾向を確信するには至っていない。Duffy抗原の発現をコントロールする因子の検討を行わねばならず、【6】については研究計画の見直しが必要。【7】炎症モデルにおける血清および赤血球内ケモカイン濃度の炎症作成後の経時変化をラット(SD)を用いて検討:達成度(3)<理由>炎症モデル作成は行ったが、ラットのIL-8相当ケモカインのアッセイに疑問があり、頓挫している。現在計画を再考中。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】赤血球内にDuffy抗原親和性ケモカインが蓄積されていることの確認: RANTESの蓄積を確認したが、他のDuffy抗原親和性ケモカインについても検討を開始する。【2】蓄積されているケモカインの定量:各種疾患と蓄積量の関係、赤血球自体の日齢による影響などについて「検討を重ねる。【3】ケモカイン蓄積が赤血球細胞性状に与える影響:例数を増やして確認するが、ネガティブである可能性が高い。【4】赤血球を異なる条件下で一定時間培養し、種々の条件下で赤血球内および上清中のケモカイン濃度を測定:今後Duffy抗原ブロッキングペプタイドを用いてRANTESが赤血球に入り込む門戸がDuffy抗原であるのか否かの確認を行う。pHの影響も検討する。【5】Duffy抗原の発現をコントロールする因子の検討:臨床検体、および赤血球のプロジェニター細胞を用いて、TNF-αが発現に関与するか確認する。【6】炎症モデルにおける血清および赤血球内ケモカイン濃度の炎症作成後の経時変化をラット(SD)を用いて検討:難航が予想されるため、有力なアッセイ系が判明するまで【5】を優先する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は赤血球のプジェニター細胞の分離に必要な磁気ビーズ、および培養時に必要となるCSF系のサイトカインなどに約40万円を見込んでいる。RANTESはアッセイ系のELISA10万円および培養に用いるrecombinant human RANTESに10万円、その他培地や試験管類などに10万円、Duffy抗原アッセイ用の抗Duffy抗原抗体やブロッキング剤に10万円、RANTES以外のDuffy抗原親和性ケモカインのうち、赤血球内に蓄積量の多いものについてのアッセイ系に10万円の合計90万円を見込んでいる。23年度に購入したELISAや抗体なども継続して使用する。旅費は研究者2名が日本臨床検査医学会総会、日本臨床化学会などへの出席を想定し、20万円前後の出費を予定している。間接経費は本学の取り決めで33万円となる。
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