2012 Fiscal Year Research-status Report
赤血球によるケモカインの吸着と放出のメカニズムに関する研究
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23659292
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
萱場 広之 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70224706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茆原 順一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80197615)
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Keywords | 赤血球 / ケモカイン / アレルギー / 臨床マーカー |
Research Abstract |
これまでに確認された事項は、次の3つの事項にまとめられる。1)日本人の殆どは赤血球上に数種類のケモカインと結合するダフィー抗原(DARC)を発現する。2)アレルギー性炎症などに深く関与するケモカインであるRANTESはDARCを発現する赤血球内に多量に存在する3)RANTES溶液中に赤血球を入れるとRANTESは速やかに赤血球に取り込まれる。 平成24年度にはさらに次のことが確認された。1)RANTES取り込みは10分以内に最大値に達し、その後はプラトーとなる。2)赤血球内RANTESは赤血球の膜機能の低下あるいは崩壊によって血球外に漏出する。3)赤血球内にはRANTES以外にも、DARCに親和性を持つEotaxin, MCP-1が蓄積されている。一方、DARCに親和性のないIL-1β、TNF-αは蓄積していない。4)IL-8は健常人赤血球内では特に蓄積を認めない。(細菌感染などの血清IL-8が高値の患者での赤血球への取り込みの検討の余地がある。)5)赤血球上のDARCの発現強度には個人差が存在する。6)赤血球上のDARCの発現強度はRANTESとの共培養後有意に低下する。結果は臨床検査の代表的国際学会の一つである ASCPaLMに発表した今後確認を要する事項は次の通りである。1)RANTES,Eotaxin,MCP-1の赤血球への取り込みがDARCを介するものか。2)赤血球内IL-8が術後や感染症治療後の患者で上昇しているか。3)RANTESなどのアレルギー関連ケモカインがアレルギー患者の赤血球内で健常人の赤血球より高濃度となっているのか。(アレルギー性炎症の長期経過の臨床的マーカーとしての可能性があるのか)4)赤血球上のDARC発現をコントロールしているのはどのような因子なのか。5)赤血球の老化、即ち流血中での存在期間と赤血球内ケモカイン含有量に相関はあるのか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想した通り、赤血球上に発現するDARC親和性の高いケモカイン(RANTES、MCP-1, Eotaxin)が赤血球内に蓄積していることが確認された。さらに、その吸収のスピードが徐々に吸収されるのではなく、きわめて速やかに吸収されることから、赤血球が炎症局所において血管内と間質のケモカイン濃度勾配の形成に寄与していることが推察された。赤血球上のDARC発現量は高濃度RANTES存在下で有意に低下する。その際に赤血球鏡面にはRANTESは存在せず、赤血球内に取り込まれていることから、DARCもinternalizeされていることが予想できた。これらの結果を踏まえて、これまでの研究成果をとりまとめ、国際学会に発表することができた。また、これらの観察事項から、新たに疑問が浮上し、それが今後のさらなる研究の課題として明確になってきたことも収穫である。研究は3年計画の2年目であるが、おおむね順調に成果が得られており、最終年度を迎えることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の疑問は、1)RANTES, Eotaxin, MCP-1の赤血球への取り込みがDARCを介するものか、2)赤血球内IL-8が高度外傷後、術後、感染症治療後の患者で上昇しているか、3)赤血球内ケモカインがアレルギー性炎症の長期経過の臨床的マーカーとして利用できるか、4)赤血球上のDARC発現をコントロールしているのは何か、5)赤血球の老化とケモカイン含有量に相関はあるのか、ということである。1)についてはDARC blocking peptideを用いた実験を昨年実施したが、blockingがうまくいかなかった可能性があり、新たに試薬を購入して再検討を予定している。2)については患者サンプルを取得して測定したい。3)についても慢性アレルギー患者(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息など)からのサンプルを用いて計測を行い、次の段階の研究の方向性を決定したい。4)は、実験系が異なり、骨髄細胞から赤芽球を分離培養する必要があり、現在赤芽球の供給元を探っている。5)はすでに昨年度比重による加齢赤血球分離を試みたが、期待した結果が得られていない。再検討の予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年は学会発表の旅費15万円、論文投稿時の英文添削料や投稿費用などに5万円、試薬など消耗品に約30万円を見込んでいる。大学の規定に従っておさめる間接経費は15万円である。
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Research Products
(1 results)