2011 Fiscal Year Research-status Report
C型慢性肝炎におけるCD36分子を標的としたインスリン抵抗性の解明
Project/Area Number |
23659399
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
樋本 尚志 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (20325343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽場 礼次 香川大学, 医学部附属病院, 准教授 (90304584)
舛形 尚 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (70263910)
正木 勉 香川大学, 医学部, 教授 (30335848)
千田 彰一 香川大学, 医学部附属病院, 教授 (30145049)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / CD36分子 / インスリン抵抗性 / 肝脂肪化 |
Research Abstract |
最初に,C型慢性肝炎患者44例の肝組織におけるCD36分子の発現およびその局在について免疫組織化学法を用いて検討した。CD36分子の発現は全例とも類洞にみられたが,肝細胞には発現していなかった。次に,肝組織におけるCD36分子の発現の程度と血中の可溶型CD36 (sCD36) 値との関連について検討した。肝組織におけるCD36分子の発現が高度な症例の血中sCD36値は,軽度な症例のそれと比較して有意に高値を呈しており,肝組織におけるCD36分子の発現と血中sCD36値は正の相関を示した。また,C型慢性肝炎患者における血中sCD36およびoxidized low-density lipoprotein (oxLDL)値を健常人8例のそれらと比較した。C型慢性肝炎患者における血中sCD36およびoxLDL値は,健常人のそれらと比較して有意に高値であった 。C型慢性肝炎患者における血中sCD36またはoxLDL値とインスリン抵抗性との関連について検討した。インスリン抵抗性はHOMA-IR値を算出して評価した。血中sCD36値とHOMA-IR値との間には有意な相関は得られず,oxLDL値とHOMA-IR値との間にも有意な相関は認められなかった。しかしながら,oxLDL/sCD36比とHOMA-IR値との関連を解析したところ,緩やかな負の相関を認めた。なお,血中sCD36値と肝脂肪化の程度との関連について検討したところ,肝脂肪化がgrade0からgrade1,grade 2へと高度になっても血中sCD36値に有意な変動を認めなかった。血清ALT値,HCV-genotypeまたはHCV-RNA量と血中sCD36値との関連についても解析を行ったが,いずれも有意な相関はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では対象患者は目標の50例には到達していないものの40例ほど集まり,保存血清や肝組織はすでに確保されている。データ解析に必要な血液検査データは概ね揃っている。肝組織におけるgrading, stagingおよび肝脂肪化といった組織学的な評価も終了している。実験計画書に示したように,肝組織におけるCD36分子の発現およびその局在について免疫組織化学法で確認した。また, ELISA kitを購入して対象症例の血中sCD36およびoxLDL値の測定も終了した。さらにその発現の程度と血中sCD36値との相関についても確認した。以上より,予定していた初年度の実験計画は概ね遂行されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,現時点まで得られた研究成果をまとめて学会で報告をしたいと考えている。抄録が採用され,本年6月の第48回日本肝臓学会総会で発表予定である。今後は,C型慢性肝炎患者におけるoxLDL,sCD36値と抗ウイルス療法の効果との関連について解析してゆきたい。また,対象症例を非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) 患者に広げてCD36分子がインスリン抵抗性の出現に関与するか否かについても解析を進めていきたい。次に,対象患者における末梢血中のリンパ球を採取してフローサイトメトリーを行ってCD36欠損症の頻度を明らかにし,C型慢性肝炎患者におけるCD36欠損症とインスリン抵抗性との関連について解析していきたい。さらに,C型慢性肝炎患者におけるCD36遺伝子多型についても解析を行い,インスリン抵抗性を惹起する特有のgenotypeが存在するか否か検討していく予定である。初年度の研究に使用した検体は,治療に必要な検体として既に用意されていたものを使用したものが殆んどであった。しかしながら,次年度の研究は当大学の倫理委員会に承認され,さらに患者のインフォームドコンセントを得たうえで検体を採取しなければならず,できるだけ早期に倫理委員会に申請したうえで研究にとりかかる必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画で提示したように,次年度の研究はフローサイトメトリーや遺伝子多型といった特殊検査に費用を重点的にあてたいと考えている。残った研究費は,ELSAや免疫組織化学法のアッセイに必要なkitや試薬の補充ならびに,学会発表のために必要な諸経費や論文作成のための費用として使用したいと考えている。
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