2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜修復異常という新たな筋ジストロフィー疾患概念の確立と新規原因遺伝子の探索
Project/Area Number |
23659454
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
金川 基 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00448044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 達史 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30262025)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 筋ジストロフィー / 細胞膜修復 / ジスフェルリン |
Research Abstract |
三好型遠位型、肢帯型筋ジストロフィー2Bの疾患遺伝子ジスフェルリンは、物理的に損傷した細胞膜の修復に関わると考えられている。しかし、ジスフェルリンが膜修復機能を発揮する仕組みについて不明な点は多い。その理由は、未だに同定されていない膜修復関連分子が多数存在しているためと考えられる。かつてジストロフィンを中心とした筋鞘膜の安定性に関する分子群の発見が筋ジストロフィー研究に多大な進展をもたらしたように、膜修復に関与する分子群が同定できれば、膜修復異常を発症要因とする新しい疾患概念の確立というブレークスルーが期待される。本研究では、独自の技術と先端プロテオミクスを用いて、ジスフェルリンを含む修復小胞の構成成分を網羅的に同定し、膜修復に果たす役割を解明した上で、各成分が筋ジス発症要因、疾患原因遺伝子となるか明らかにすることを目的とした。本年度は、まず、ジスフェルリン含有小胞の構成成分解析を行うため、抗ジスフェルリン抗体の作成および筋組織からジスフェルリン含有小胞を生化学的に調整する方法を樹立した。次に、筋ジストロフィー病態におけるジスフェルリン相互作用分子群の発現を検討したところ、病態の重篤度に相関して、発現が上昇する成分を見出した。更に、ジスフェルリン変異マウスと筋ジストロフィーモデルマウスとの二重変異マウスの解析から、ジスフェルリン欠損によって、筋ジストロフィー病態が増悪する結果を得た。以上の結果は、ジスフェルリン依存の膜修復活性が、病態進行に対して保護的に作用していることを示唆しており、筋ジストロフィー病態の統合的な理解に貢献することが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗体の作成ならびにジスフェルリン含有小胞の生化学的調整法を樹立し、小胞構成成分解析の基盤を整えることができた。また、プロテオーム解析の前段階として、免疫沈降や抗体カラムの初期条件検討も進めることができた。また、ジスフェルリン依存の膜修復活性が、筋ジストロフィー発症に直結する膜脆弱性を保護していることを証明し、筋ジストロフィーの病態理解をより深める結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度より引き続き、ジスフェルリン含有小胞成分の同定、各成分と相互作用する分子の探索を行い、膜修復機構との関連性を明らかにする。ジスフェルリン含有小胞の構成成分を同定するため、プロテオーム解析を行う。この研究から同定される分子が膜修復に関与するか検証する。具体的には、筋線維に物理的損傷を与えた後、損傷部への蓄積を指標に膜修復との相関を実証し、また、ジスフェルリン変異マウスや患者筋生検を用い、小胞成分の発現量と細胞局在を解析することで、病態との関連性を示す。また、小胞成分の機能解析として、RNA干渉や過剰発現させた培養筋芽細胞を用い、膜損傷を与えた後の蛍光試薬の流入を指標に膜修復への関与を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ジスフェルリン含有小胞の調整、プロテオーム解析、培養細胞に必要な生化学、分子生物学試薬、ならびにプラスチック製品等を購入する。プロテオーム解析の委託費、実験動物飼育費も必要となる。研究成果発表、共同研究のための出張費も必要となる。
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