2012 Fiscal Year Research-status Report
超音波・MRI血流可視化システムに基づく成人期ファロー四徴症の手術適応基準の確立
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23659515
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 泰佑 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70597129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
賀藤 均 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 部長 (70214393)
五條 理志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90316745)
梅津 光生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90132927)
銭 逸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80389147)
横田 元 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, 研究員 (60600202)
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Keywords | 心エコー / Vector Flow Mapping / 血流の粘性摩擦によるエネルギー損失 / 左室収縮 / 小児 / Norwood手術 |
Research Abstract |
Vector Flow Mapping (VFM)は、カラードプラ画像と、関心領域を囲む心血管壁のスペックルトラッキング画像から、流量保存則を適用してエコービームに直交する速度成分を算出し、血流の速度ベクトルを可視化するソフトウェアである。さらに速度分布が分かることで、血流の粘性摩擦によるエネルギー損失を算出することができる。速度の変化が急激であるほど、また速度ベクトルの向きがばらついているほど、粘性摩擦によるエネルギー損失(EL)が大きい値となる。 心エコーを用いた心機能評価では、従来から、心室駆出率や心筋ストレインに代表されるように、心室壁運動に関心が向けられてきた。しかし、心筋運動の結果として心室内に生じる血流については、ほとんど関心が払われてこなかった。VFMを用いて算出されるELは、血流の効率を反映すると考えられ、心機能の新しい指標となる可能性がある。 収縮期の左室内腔に生じるELの小児における基準値を明らかにするための研究を行った。 心疾患のない小児24名を対象に、心尖部五腔像の心エコー動画から、一心周期にわたる左室内血流の速度ベクトル分布を得て、収縮期に左室内に生じる単位時間あたりのELを算出し体表面積で補正した。その結果、体表面積あたりの収縮期の左室内ELが心拍数と有意な相関を示すことが明らかとなった。これは幼少児の左室が、hyperdynamicな状態であることを反映しており、ELが心機能評価の新しい指標となる可能性が示唆された。 また、Norwood手術後に大動脈が屈曲した形態となった症例を対象に、VFMを用いて血流の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、VFMの解析ソフトウェアであるが、これは共同研究チームである、北里大学血流解析学講座の協力で、ほぼ市販できるまでの完成度が得られている。 我々の研究の最終的な目標は、血流の粘性摩擦によるエネルギー損失(EL)を用いてファロー四徴症における肺動脈弁逆流が右室機能に与える影響を評価することである。しかし、ELそのものが全く新しい技術・指標であるため、まず、心機能評価の方法がある程度確立されている左心室を対象に、ELの計測を行い、その有用性を探ることとした。 その結果、上記に示すように、ELが心臓の収縮性を反映する可能性を示唆する結果が得られ、ELの有用性を世界で初めて示すことに成功した。この成果は、次年度に学会発表する予定である。 また心室内のみならず、血管内の血流をVFMで評価・解析する研究も進めることができた。orwood手術後に大動脈が屈曲した形態となった症例を対象に、コンピュータシミュレーションで得られた血流モデルと、VFMから求めた血流を比較し、VFMが優れた精度で血管内の血流を再現できることを示し、国内学会(小児循環動態研究会、2012年11月)で発表して大きな反響を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
いよいよ研究の最終年度である。Norwood手術後の屈曲した大動脈の血流をVFMで解析した研究については、すでに国内学会で発表しており、次年度中に国際英文誌に論文として発表する予定である。左室収縮期のエネルギー損失については、さらに症例を蓄積して、さまざまさ収縮指標との相関を見出して行きたいと考えている。次年度中に、国内・海外の学会で発表する予定である。左室収縮期のみならず、拡張機能の評価も進めていく方針である。左心室の機能評価にエネルギー損失が有用であることを示したのちに、右心系の評価も試みていく方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内・海外の学会で研究業績を発表するための旅費・参加費、また研究成果を論文で公表するための費用(英文校正料金や投稿代)、データ解析用のコンピュータシステムや、データ保存のためのハードなどに、研究費を使用する予定である。
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