2011 Fiscal Year Research-status Report
末梢血質量分析と臍帯血出生コホートの連携による自閉症診断マーカーの検索
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23659560
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
森 則夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00174376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 賢治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (20362189)
松崎 秀夫 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (00334970)
岩田 圭子 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (30415088)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自閉症 / 質量分析 / 診断マーカー / 血清 |
Research Abstract |
我々はNPO法人「アスペ・エルデの会」の協力を得て自閉症者血清を収集している。初年度に質量分析技術で自閉症児童群と健常児童群を比較解析し、両群において発現量に差がみられる分子を探索した。1.研究協力者のリクルート体制の確立と研究資源の確保:我々はNPO法人アスペ・エルデの会の全面的協力を得て、平成15年度から日本人自閉症者血清の収集を開始し、サンプル管理を行っている。質量分析はこれらのうち6歳から10歳までの自閉症児童および健常児童の血清を用いて行なう。2.末梢血血清の質量分析によるマーカー候補の特定:(プロテオーム解析)上記の自閉症者群と健常者群の血清を用いて、二次元電気泳動によるdifferential displayを施行する計画を予定していた。電気泳動条件確定後、収集した血清サンプルを蛍光二次元電気泳動で展開し、疾患特異的なタンパク質スポットを特定し、MALDI-TOF/MSによって特異的なスポットの質量分析を行い、確定した分子の配列のホモロジーサーチを経て、ヒトでの同分子の基本的情報を得る予定であった。しかし初年度は、共同研究者の機器の故障により遂行できなかった。(メタボローム解析)自閉症者群と健常者群の血清を用いて、ガスクロマトグラフ質量分析を施行した。脂肪酸に特化した解析を進めるため、Bligh&Dyer法によって総脂質を抽出し、メチルエステル化した脂質をGC分析に供して定量した。初年度は自閉症者50例・健常者52例で行い、特定の脂肪酸組成に差異を見出した。これに加えて、CE-TOF/MSによる代謝産物のパスウェイマッピング解析を施行し、6例ずつの小規模な検討ではあったが、セロトニン機能に関連した代謝産物の有意な変化がスクリーニングされるなど有望な結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択直後の共同研究者の脱退など、予想外の事態で研究に着手したが、最終的に事前の期待を上回る結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に出生コホートで成長後の発達・自閉症発症の有無との相関を追跡し、相関の高いものを自閉症マーカーとして同定する。代謝産物のメタボローム解析については例数を挙げて検討を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.末梢血血清の質量分析によるマーカー候補の特定:自閉症者群と健常者群の血清を用いて、浜松医科大学で二次元電気泳動によるdifferential displayを施行する。電気泳動条件確定後、収集した血清サンプルを蛍光二次元電気泳動で展開し、ゲル画像の比較から疾患特異的なタンパク質スポットを特定する。MALDI-TOF/MSによって特異的なスポットの質量分析を行い、これらの分子の基本的情報を得る。さらにCE-TOF/MSによる代謝産物のパスウェイマッピング解析を施行する。2.臍帯血出生コホートによるマーカー妥当性の検討 新生児を対象とした追跡的縦断調査を行う。上記にて同定された分子診断マーカーを臍帯血において測定し、その値が超早期診断 (出生時診断) マーカーとして有用であるかを経時的に検討する。臍帯血中の分子濃度の測定には、タンパク質の場合は特異的抗体によるELISA を行い、代謝産物はガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。 母親からの同意取得後、臍帯血サンプルの提供を受ける。出生後1、4、6、10、14、18、24、36ヶ月の時点で行動評価 (Mullen Scales of Early Learning)、及び小児科診察を行う。さらに14ヶ月以上の児に対して自閉症スクリーニングテスト(M-CHAT)を行う。いずれかで異常所見を呈した24ヶ月の児に対して自閉症観察尺度 (ADOS) を施行して、発達の様態および自閉症診断を満たすかどうかを追跡し、データを蓄積する。前年度に特定された分子診断マーカー濃度を臍帯血で測定して、その有用性の検証を行う。某マーカーが陽性の児童について発達の動向を追跡し、発症予測性の精度を確認する。また、マーカー陽性児で、自閉症の確定診断が付く前の種々の行動特性を、過去の診察・評価の記録から精査し、分子マーカー固有の初期表現型の特定も行う。
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