2011 Fiscal Year Research-status Report
進行期悪性黒色腫に対する連続壊変型アルファ線放出薬剤を用いたRI治療の挑戦
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23659581
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鷲山 幸信 金沢大学, 保健学系, 助教 (80313675)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射線 / 癌 / 薬学 / アルファ放射体 |
Research Abstract |
悪性黒色腫の腫瘍細胞膜表面はメラノコルチン-1型受容体を過剰発現し、この受容体と色素細胞刺激ホルモンの1つであるα-MSH(Melanocyte Stimulating Hormone)は結合親和性をもつ。そこで、DOTA基を持つα-MSHペプチド類似体DOTA-Re(Arg11)CCMSHに放射性同位体をキレート結合させることで、悪性黒色腫の腫瘍細胞に集中的に放射線を照射することを試みた。今年度はα線放出核種227Th, 226Thとの標識を目指し、これらの同位体である234Th(半減期24.1日)による標識の検討を行った。234Thは親核種の238U(金沢大学所有)から分離精製して調製した。その後、DOTA-Re(Arg11)CCMSH溶液に234Th溶液と0.5M CH3COONH4溶液と蒸留水を加え、互いの量を変化させることで溶液のpHを3~5.5と変化させた。この溶液を75℃で40分間撹拌し、反応溶液を逆相HPLCに通し220nmの吸光度でUVチャートを取得した。またHPLCの溶離液を1mLずつのフラクションとして分取しNaIシンチレーション計数装置でγ線の計測を行い、Th標識ペプチドのカラム保持時間を検討した。HPLCでの分析結果から234ThはpH4.5で最も多くペプチドと標識することが判明した。pH3では234Thはペプチドと標識されずTh4+イオンの状態で溶離されてしまうことが判明した。一方pH5以上となるとThは特に水酸化物を形成しやすい状態となり、ペプチドと反応する以前にTh(OH)4を形成した。今後、Th標識 DOTA-Re(Arg11)CCMSHに関しては悪性黒色腫モデル動物を用いた体内動態実験を行い、また225AcについてはDOTA-Re(Arg11)CCMSHの標識率のpH依存性を早期に検討し、動物を用いた臨床前試験を展開していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた実験計画は1)α線放出核種の準備、2)α線放出核種の抗体やペプチド等への標識と精製、3)細胞を用いた生物学的効果の検討の3つであった。このうち項目3)についてはあまり進展を見なかったものの、それ以外の項目については目標とした範囲まで研究が進展したことから、達成度をやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成23年度に行うことが出来なかった、細胞を用いた生物学的効果の検討を行う。その後、下記の検討を行う。1.担癌実験動物を用いたα線放出核種の抗腫瘍効果の検討 (in vivo)C57BL/6マウスやヌードマウスに対して、マウス由来やヒト由来の悪性黒色腫細胞を1x106個皮下移植ないしは尾静脈投与を行い、メラノーマモデルを作成する。次いで皮下移植担癌モデルマウスにα核種標識抗体やペプチドを投与して経時的に解剖し組織を摘出する。摘出組織は重量測定後、NaIオートウェルカウンターまたはGe半導体検出器でα線核種由来のγ線測定を行い単位重量あたりの取込率(%ID/g)を算出する。また動物用ガンマカメラを用いた腫瘍イメージングを行う。α線放出核種の投与放射能量を変化させて動物実験を行う。RI投与前と投与後経時的に尾静脈より血液を採取し赤血球、白血球、血小板数を測定する。測定結果からα線放出RIに対するMTDを決定する。皮下移植担癌モデルマウスではモデル作成後からの経過時間によって腫瘍サイズを変化させることができる。したがってモデル作成直後、1週間後、2週間後、3週間後にそれぞれα線標識抗体やペプチドを投与する。抗腫瘍効果の判定には一定期間後の総腫瘍重量の測定とモデルマウスの生存期間観察によって行う。2.被ばく線量の計算とヒトへの適応評価実験で得られた体内分布のデータを基にMIRD法を用いて各臓器への線量を算出しヒトへの線量評価を行う。評価用の計算は市販のコンピュータ上で、データ解析用ソフトウェアを用いて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初次年度研究費には900,000円が計上されていた。しかし本年度の研究の進捗がやや遅れたため、今年度の研究費が114,642円繰り越された。したがって次年度は当初の研究費よりも増額の1,014,642円となった。次年度の研究費は物品費、旅費、その他の費目として使用する。以下にそれぞれの用途を記す。物品費:物品は主に実験動物の購入に用いられる。実験動物はC57BLマウスを用いる。このマウスは悪性黒色腫の実験でよく用いられるものである。またプラスチック器具やラジオアイソトープの購入、アイソトープの分離に用いるガラス器具や試薬の購入、実験データ解析用のコンピュータソフトウェアも物品費から購入する。おおよそ600,000円程度を使用する。旅費:実験で得られた研究成果の発表に関する国内学会への移動および滞在に使用する。おおよそ350,000円程度を使用する。その他:ラジオアイソトープの運搬等に使用する。おおよそ50,000円程度使用する。
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Research Products
(6 results)