2011 Fiscal Year Research-status Report
代謝物を指標とした膵癌早期診断・個別化治療の新展開-メタボローム解析の臨床応用-
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23659654
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼丸 学 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80529876)
井上 重隆 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (00529802)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 膵癌 / 代謝産物 / 治療抵抗性 / ゲムシタビン耐性 |
Research Abstract |
背景と研究目的;膵癌の第一選択薬であるGemcitabineは第3相試験で平均生存期間を2カ月延長するにとどまり70%以上の症例では画像上その効果を認めない。膵癌の治療成績向上にはGemcitabine治療の効果を予測する分子マーカーを同定することやGemcitabineの感受性を向上させる新規治療の開発などが必要である。これらの試みはこれまで遺伝子レベル、蛋白レベルでのみ行われてきたが、生体内には核酸やタンパク質以外に有機酸・アミノ酸など低分子化合物が存在し、その種類は数千から数十万にのぼる。これら細胞の代謝活動により作りだされた代謝産物はゲノム情報の最終的形質発現であり、代謝産物の網羅的解析であるメタボロミクスは今後の生物学的研究において重要な役割を担うと考えられる。本研究は膵癌治療感受性の増強を目指し、膵癌のGemcitabine抵抗性にかかわる代謝産物関連分子の同定並びにこの制御を模索する。これまでの研究成果;膵癌細胞株であるSUIT-2、CAPAN-1においてそれぞれGemcitabine耐性膵癌細胞株を2種樹立し、その細胞中の代謝産物を島津製作所が開発した質量分析装置LCMS-IT-TOFによりprofilingを行った。複数の解析ツールを使い、正確かつ再現性のある結果を得た。Gemcitabine耐性膵癌細胞株と親株との間では約30%の代謝産物の発現相違を認め、その中にはアミノ酸、核酸、エネルギー、ビタミンの代謝経路にかかわる代謝物を多く認めた。Gemcitabine耐性膵癌細胞株でSUIT-2、CAPAN-1両方に共通して増加していた代謝産物としてaspartate、hydroxyproline、creatine、creatinineを、減少していた代謝産物としてglutamine、prolineを同定した。ここまでの研究成果は現在論文にまとめ投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質量分析装置で同定した質量データ(代謝物)と実際の代謝物を示す標品との突き合わせ作業に予測していたより時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
Gemcitabineによる治療データのある膵癌切除標本組織を対象とした代謝産物の解析を行い、同定したGemcitabine耐性関連代謝産物の発現がGemcitabineの治療予測因子となりうるか調べる。また、膵液組織、針生検組織を対象に代謝産物の発現解析を試み、より臨床に則した有用性を検討する。また、これまでに同定された代謝産物の関連分子を同定し、この分子を制御することでGemcitabine抵抗性を改善する新規治療法の開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Gemcitabine耐性に関わる代謝物として同定された質量データと実際の標品との突き合わせ作業を引き続き行う。それに伴う試薬、標品の購入費がかかる。また、膵液組織、針生検組織といった臨床サンプルより代謝物を抽出しLCMS-IT-TOFによるプロファイリングを進める。それに伴う抽出試薬、プラスチック器具なその費用がかかる。また、これまでに同定された代謝産物の関連分子を同定し、この分子の制御による癌細胞の生物学的機能の変化を調べる。in vitro実験に伴うsiRNA試薬、PCR試薬、抗体などの費用がかかる。得られた知見は欧米雑誌に投稿もしくは国際学会にて発表予定であり、それに伴う経費も計上する。
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