2011 Fiscal Year Research-status Report
低分子量エポキシ化合物TGA固定自己心膜の心血管補填材料としての適性に関する研究
Project/Area Number |
23659662
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
後藤 行延 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20451700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 祐司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30302417)
松下 昌之助 筑波技術大学, 保健科学部, 准教授 (70359579)
揚山 直英 独立行政法人医薬基盤研究所, その他部局等, 研究員 (50399458)
兵藤 一行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (60201729)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心臓血管外科手術 / 自己心膜 / 架橋処理 / GA / TGA |
Research Abstract |
心疾患の外科修復においては患者の自己心膜が組織補填材料として頻用される。心膜は未処理またはglutaraldehyde (GA)固定して用いられることが多いが、柔軟性・強度・生体適合性・瘢痕収縮・遠隔期の石灰化などについて、未処理とGA固定のいずれが有利であるかは不明確である。本研究では、エポキシ化合物triglycidylamine (TGA)の親水特性と低毒性に着目し、従来のGA固定よりも柔軟で抗石灰化作用に優れた心膜固定の方法論確立に挑戦した。以下の4群に分けて心膜架橋処理を行った。(1)GA群(0.6%GAによる固定処理)、(2)GA-C群(Professor Carpentier’s recipeによる固定処理、(3)TGA群(100mM/L TGAによる固定処理;TGAを25mM/L sodium tetraborate decahydrateにてpHを7.4に維持しながらDWを加えて100mM/Lに調整)、(4)未処理群(生理食塩水に保存)。はじめにEx-vivo実験研究で心膜固定におけるTGA、GAの特性を検証した。引き続きIn-vivo実験研究として、摘出心膜をTGAまたはGA処理した後に同一動物個体に移植し、物理学的特性変化・石灰化を観察した(最長6ヶ月の慢性動物実験) ⇒両実験において、TGA、GAの濃度、処理時間を段階設定し、TGAの固定適性を検証しつつ固定条件の最適化を図った。物理学的評価として、示差走査熱量計による架橋強度測定、引張試験による柔軟性評価を行った。組織学的評価として、Kossa染色によるCa沈着の評価、MMP-9、TN-C免疫染色によるタンパク分解酵素および細胞外基質糖蛋白発現の評価ならびにWestern blotsを行った。Ca定量には、原子吸光分析法とプラズマ発光分光分析法を用い、石灰化の程度・分布の評価には放射光吸光度測定を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記概要に記したとおり、予定されたin-vitroおよびin-vivo実験はおおむね計画通り実施されている。ただし、ウサギによる慢性実験は一部実施途中にあり、すべての予定された解析が済んでいるわけではない。慢性実験の結果を正確に分析した上で次年度の予定研究に移行する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、ウサギを用いた上記in-vivo実験研究を継続する。並行して、カニクイザルを用いたin-vivo慢性実験を開始する。In-vivo実験研究(カニクイザル);本学と至近距離にある医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターにて飼育されている体重5kg前後のオスのカニクイザル(Cynomolgus monkeys, Macaca fascicularis)を用い、慢性実験を実施する。実験動物の取り扱いにあたっては、同研究センターおよび筑波大学実験動物取り扱い規約を遵守する。[全身麻酔] ketamin筋注により麻酔導入、静脈路確保ののちatropin, thiopentalを追加して気管内挿管。人工呼吸器に接続し、酸素とフォーレンにて麻酔を維持する。剃毛、消毒ののち、ドレーピングをおこなう。[手術] 胸骨正中切開で心膜を採取し、ウサギを用いた実験と同様、4群および各処理時間に分けて心膜架橋処理を行う。右心耳を部分遮断し、心房を切開した後ポリプロピレン糸を用いて固定処理したサル自己心膜を縫着する。止血ののち閉創し、覚醒後サルをcageに戻す。12週または24週でサルを再び麻酔し右開胸、自家移植した心膜部分を摘出して以下の評価を行う(この時点でサルは可能な限り安楽殺せず、他の研究に供する)。1)TGAおよびGA処理カニクイザル心膜組織の石灰化評価:Kossa染色、原子吸光分析、プラズマ発光分光分析、放射光による石灰化の程度・分布の評価2)TGAおよびGA処理カニクイザル心膜の免疫組織学的評価:MMP-9、TN-C免疫染色、Western blotsによるMMP-9、TN-Cの定量評価
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度同様、本研究計画経費の大部分は消耗品費に充てられる。TGA等の薬品、免疫染色用キットを含む分析用消耗品が比較的高額である。カニクイザルを用いる研究計画に関しては、必要最小限の予算で研究を実施するために、国内で最も霊長類実験に適した施設のひとつである医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター疾患制御研究室の充実した研究施設環境を共有する。
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Research Products
(1 results)