2012 Fiscal Year Research-status Report
低分子量エポキシ化合物TGA固定自己心膜の心血管補填材料としての適性に関する研究
Project/Area Number |
23659662
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
後藤 行延 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20451700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 祐司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30302417)
松下 昌之助 筑波技術大学, 保健科学部, 准教授 (70359579)
揚山 直英 独立行政法人医薬基盤研究所, 霊長類医科学研究センター, 研究員 (50399458)
兵藤 一行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60201729)
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Keywords | 心臓外科手術 / 心膜 / GA / TGA / 架橋処理 |
Research Abstract |
先天性心疾患等の外科修復においては患者の自己心膜が組織補填材料として頻用される。心膜は未処理またはglutaraldehyde (GA)固定して用いられることが多いが、柔軟性・強度・生体適合性・瘢痕収縮・遠隔期の石灰化などについて、未処理とGA固定のいずれが有利であるかは不明確である。固定媒体としてはGAが定着しているが、固定の際の濃度や処理時間にも明瞭な指針はなく、GA以外の組織固定媒体が検討された形跡も少ない。本研究では、エポキシ化合物triglycidylamine (TGA)の親水特性と低毒性に着目し、従来のGA固定よりも柔軟で抗石灰化作用に優れた心膜固定の方法論確立に挑戦している。TGA固定における組織強度、柔軟性、定着後の石灰化抑制効果についてヒト心膜および動物を用いた基礎実験を行い、並行してTGA、GA固定液の組成および処理時間の最適化を図った。TGA固定における組織強度、柔軟性、定着後の石灰化抑制効果について、ヒト心膜(倫理審査を経て使用)およびラット心膜を用いたex-vivo基礎実験(物理学的検証、組織学的評価、放射光によるカルシウム沈着度の評価等)を行った。並行してTGA、GA固定液それぞれの組成および処理時間の最適化を、同じくex-vivo実験を通じて図った。引き続き、TGAあるいはGA処理した心膜をウサギ皮下に定着させ、最長6ヶ月に渡ってのin-vivo慢性実験を行っている最中である。これらの実験を通じてTGAを用いた新たな心膜固定技術の確立を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に示したとおり、ex-vivoの基礎実験によるTGAの性能の検証・処理の最適化はほぼ完了した。引き続いてウサギを用いたin-vivo慢性TGA心膜植込み実験の最中であり、この成果を分析した上でさらに次の研究課題に進む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ウサギin-vivo実験の結果を勘案してTGA/GAの処理条件を適正化するとともに、短時間でのTGA処理法を確立する:TGAのエポキシ環の開環は温度依存性が高く、pH・濃度・圧力・促進剤などにも影響を受ける。温度が高いほどエポキシ環の開環は促進されるが、タンパクの熱変性を考慮すると20~37℃の範囲での処理が好ましいと思われる。また濃度も高いほど反応性が向上するが、高濃度では細胞毒性の懸念があり、10mM~1Mの範囲が望ましいとされる。溶液のpHも反応性に影響を及ぼし、7.0~7.4が好ましいとされる。これらの処理条件を変化させながらin-vivo慢性実験を積み重ね、TGAおよびGA処理条件の適正化とより短時間でのTGA架橋処理法確立を図りたい。 上記内容について、カニクイザルを用いたin-vivo慢性実験を開始する。実験動物の取り扱いにあたっては、同研究センターおよび筑波大学実験動物取り扱い規約を遵守する。胸骨正中切開で心膜を採取し、ウサギを用いた実験と同様、処理時間等を分けて心膜架橋処理を行う。右心耳を部分遮断し、心房を切開した後固定処理したサル自己心膜を縫着する。12週または24週でサルを再び麻酔し右開胸、自家移植した心膜部分を摘出して以下の評価を行う。①TGAおよびGA処理カニクイザル心膜組織の石灰化評価、②TGAおよびGA処理カニクイザル心膜の免疫組織学的評価
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画遂行のための主要な設備、備品のほとんどは筑波大学臨床医学系研究室、筑波大学研究基盤総合センター、筑波大学動物資源センター、医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター、あるいは高エネルギー加速器研究機構に既に整備されており、新たな備品のための経費を申請する必要はない。本研究計画経費の大部分は消耗品費に充てられ、特にTGA等の薬品、免疫染色用キットを含む分析用消耗品が比較的高額である。カニクイザルを用いる研究計画に関しては、必要最小限の予算で研究を実施するために、国内で最も霊長類実験に適した施設のひとつである医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター疾患制御研究室の充実した研究施設環境を共有する。
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